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葵はさっそく鳩で千影に手紙を送った。
『無事に家には帰れたか? この鳩の名前は何なんだ? 今度、お茶でも飲もう』
プライベートな手紙等、書いたことが無かったので、何を書いたら良いのか解らない葵。
ただ、あまり迷いすぎると手紙を送るタイミングを失って一生手紙を送れない気がした。
鉄は熱いうちに打てと言うし、勢いで書いた手紙である。
鳩は送り出してから、返事はどうするのだろうかと一瞬思ったが、昔の様に危険な道中でもなく、頻繁に行商が行き来している。
普通に郵便で送ってくれるだろうか。
返信用の切手を同封するのだったとか、後々思った。
しかし、千影からの返信も同じ鳩が持って来た。
隣国の魔力や技術は、本当に別格である。
想像も出来ない。
この鳩も、普通の鳩に見えるが、千影の魔力で作り出した鳩らしいので、行き来出来るのだろう。
あまりにすごすぎて、よく解らないが、手紙のやり取りが気軽に出来て有り難いかぎりである。
『俺は無事だ。鳩は君の好きな名前をつけてくれ。俺が君の為に作り出した鳩だ。君を主人だと認識している。喜んでお茶をしよう。いつが良い? 君に合わせる』
千影からの返信は葵が聞いたままの事を返事してくれただけなのだが、とても特別な手紙に思え、何度も読み返した。
字も達筆で綺麗だ。
しかし、鳩には何て名前をつけようか。
葵は1日中考えた。
『鳩の名前は千影から千を取ってセンにしてみた。僕はいつでも良い。最近は平和なので、あまり仕事も忙しくないんだ』
『千か良い名前だ。鳩も喜んでいる事だろう。では、次の更待月の日にしよう。そちらへ行くよ』
隣国は暦を月で表す習慣がある。
葵は急いで更待月がいつか調べた。
『更待月の日に待っている』
葵は嬉しくて、服装をどうしようかとか、あれこれ考えるのであった。
「今日お兄様と話したんだが、すごく明るかった」
巴は夕食の時に伊織に話す。
「良いことですね」
ワインを乾杯して、フフっと笑う伊織。
「いい雰囲気の喫茶店を知らないかとか、この服装はどうだろうかとか、胸元を露出したΩらしい服装でルンルンしていたんだ」
「可愛いじゃないですか」
深刻そうな面持ちの巴。
伊織は自分とは違ってΩらしい服装が似合う葵がルンルンと可愛い服を着ているのは、それは可愛いだろうと思った。
巴が何故深刻そうな表情なのかが解らない。
「まるで初恋をした少女のようなんだ」
「初恋をしてるんじゃないですか?」
「そうかも知れない」
「良いじゃないですか」
「相手が気になるだろう。大体、兄は恋とかしたこと無かったんだ。だから今まで血を流さずに済んでいた節がある」
「どういう事ですか?」
急に話が物騒である。
「兄は王に惚れられているんだぞ。兄は結婚しても相手のαに心を開く事は無かったから王も思いとどまっていたが、兄がガチ恋したら王はガチギレで相手の男を処刑するぞ」
巴は頭を抱えている様子だ。
本気で心配している様子で食事もまともに進んでいなかった。
「それは王様がヤバイヤツ過ぎますよ。お兄様が可哀想です」
伊織はドン引きである。
「兄の不評も王が流してるって僕は思ってるんだ」
「巴さんはどうしたいんですか?」
「勿論、兄を応援したいさ。でも、王の暴走を止められるのは兄だけなんだよ」
巴は今にも血の雨が降りそうだとヒヤヒヤしている。
「とにかく、今は夕食を食べましょう。心配しても仕方が無い事があります。お兄様に助けを求められたら考えましょうよ」
「うん……」
巴はかなり複雑そうにしながら、食事をするのだった。
『無事に家には帰れたか? この鳩の名前は何なんだ? 今度、お茶でも飲もう』
プライベートな手紙等、書いたことが無かったので、何を書いたら良いのか解らない葵。
ただ、あまり迷いすぎると手紙を送るタイミングを失って一生手紙を送れない気がした。
鉄は熱いうちに打てと言うし、勢いで書いた手紙である。
鳩は送り出してから、返事はどうするのだろうかと一瞬思ったが、昔の様に危険な道中でもなく、頻繁に行商が行き来している。
普通に郵便で送ってくれるだろうか。
返信用の切手を同封するのだったとか、後々思った。
しかし、千影からの返信も同じ鳩が持って来た。
隣国の魔力や技術は、本当に別格である。
想像も出来ない。
この鳩も、普通の鳩に見えるが、千影の魔力で作り出した鳩らしいので、行き来出来るのだろう。
あまりにすごすぎて、よく解らないが、手紙のやり取りが気軽に出来て有り難いかぎりである。
『俺は無事だ。鳩は君の好きな名前をつけてくれ。俺が君の為に作り出した鳩だ。君を主人だと認識している。喜んでお茶をしよう。いつが良い? 君に合わせる』
千影からの返信は葵が聞いたままの事を返事してくれただけなのだが、とても特別な手紙に思え、何度も読み返した。
字も達筆で綺麗だ。
しかし、鳩には何て名前をつけようか。
葵は1日中考えた。
『鳩の名前は千影から千を取ってセンにしてみた。僕はいつでも良い。最近は平和なので、あまり仕事も忙しくないんだ』
『千か良い名前だ。鳩も喜んでいる事だろう。では、次の更待月の日にしよう。そちらへ行くよ』
隣国は暦を月で表す習慣がある。
葵は急いで更待月がいつか調べた。
『更待月の日に待っている』
葵は嬉しくて、服装をどうしようかとか、あれこれ考えるのであった。
「今日お兄様と話したんだが、すごく明るかった」
巴は夕食の時に伊織に話す。
「良いことですね」
ワインを乾杯して、フフっと笑う伊織。
「いい雰囲気の喫茶店を知らないかとか、この服装はどうだろうかとか、胸元を露出したΩらしい服装でルンルンしていたんだ」
「可愛いじゃないですか」
深刻そうな面持ちの巴。
伊織は自分とは違ってΩらしい服装が似合う葵がルンルンと可愛い服を着ているのは、それは可愛いだろうと思った。
巴が何故深刻そうな表情なのかが解らない。
「まるで初恋をした少女のようなんだ」
「初恋をしてるんじゃないですか?」
「そうかも知れない」
「良いじゃないですか」
「相手が気になるだろう。大体、兄は恋とかしたこと無かったんだ。だから今まで血を流さずに済んでいた節がある」
「どういう事ですか?」
急に話が物騒である。
「兄は王に惚れられているんだぞ。兄は結婚しても相手のαに心を開く事は無かったから王も思いとどまっていたが、兄がガチ恋したら王はガチギレで相手の男を処刑するぞ」
巴は頭を抱えている様子だ。
本気で心配している様子で食事もまともに進んでいなかった。
「それは王様がヤバイヤツ過ぎますよ。お兄様が可哀想です」
伊織はドン引きである。
「兄の不評も王が流してるって僕は思ってるんだ」
「巴さんはどうしたいんですか?」
「勿論、兄を応援したいさ。でも、王の暴走を止められるのは兄だけなんだよ」
巴は今にも血の雨が降りそうだとヒヤヒヤしている。
「とにかく、今は夕食を食べましょう。心配しても仕方が無い事があります。お兄様に助けを求められたら考えましょうよ」
「うん……」
巴はかなり複雑そうにしながら、食事をするのだった。
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