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長い柵を抜け、門をやっとくぐったと思っても馬車はまだ動いている。
ここは巴の実家なのであるが、かなり大きくて伊織は圧巻されていた。
建物も多く、迷子になりそうだ。
やはり住む世界が違うのだと思ってしまう。
やっと止まったので着いたようだ。
「ここは僕の使っていた離れなんだ。呼ばれるまで休もう」
そう言って、建物に入る巴に付いて行く。
どうやら巴の部屋らしい。
自分のログハウスより大きそうな一軒家のお部屋だ。
伊織はもはや何も考えたくなくなってきた。
「ずいぶんと可愛らしいお部屋ですね」
巴に通された部屋には、熊のぬいぐるみが大から小までたくさん置いてある。
「小さい時の抱き枕だよ。どうも僕は熊のぬいぐるみが好きだったらしくてね。今でもたまに戻ってくると新しい熊のぬいぐるみがシレっと増えている」
ハハッと苦笑する巴だ。
ここは巴が幼少の頃に使っていた寝室である。
巴も可愛いし、巴のお兄様も可愛いと思う伊織だ。
巴の両親は既に他界している。
旅先で魔物に襲われたのだ。
当時は本当に魔物や隣国の悪漢に襲われて亡くなる人が多かった。
それが12歳の時だと伊織は聞いる。
その頃にはもう巴は幼稚舎で寮に入っており、聞かさらたのは寮を出た16歳の時だった。
葵が巴を不安にさせまいと、知らせないようにしていたのだ。
葵は巴を今でもものすごく可愛がっている。
「ともちゃーん」
いきなり部屋に入って来て、巴に抱きついたのは、葵である。
「久しぶり。家に全然帰ってきてくれないんだから。お兄ちゃんは寂しかったよ!」
もー、と怒る葵。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。巴さんのΩです」
そう、伊織は慌てて頭を下げる。
さすが巴にそっくりの兄、本当に美人で一瞬見惚れた。
自分と似た服を着ているが、葵はすごく似合っている。
「お兄様が忙しそうだったので、挨拶は控えました」
巴は苦笑している。
婚姻は二人の問題なので、あまり家族に報告したり、挨拶をするいう仕来りは無い。
逆に家族に相談する等は、自立出来てないとタブー視させる事もあるぐらいなのだ。
「孤児院で巴が気に入った子だよね? すごい別人みたいに育ったな」
葵は伊織を見て驚く。
当時は葵も心配になる程に痩せていた。
自分の食べ物まで他人に分けてしまっていたからである。
放っておいたらいつ亡くなってしまうか解らない様な有り様だった。
だから巴も気にかけていたのだ。
その子が今や筋肉ダルマになっているとは。
巴から『あの子と運命的に再会したんだ』『とても美人で可愛いんだ』『愛しのΩだ』等と手紙に書かれていたので、勝手に深窓の令嬢みたいな子だと思っていた葵。
だが、しかし、たしかに美人で可愛くも見える。
そこはかとなく色っぽさを感じた。
たしかに、巴の好みはこっちだろうと、感じる葵だ。
「急に里親が見つかって引き取られてしまったし、もう会え無いって巴はしばくずっと泣いてたよ」
葵はそう、苦笑した。
巴は恥ずかしそうにしている。
「その熊のぬいぐるみだって、イオって名前付けてたもんな」
「お兄様、黙って下さい!」
全部バラしてしまう葵に、巴は自分の顔をおさえる。
巴の顔は茹でたダコだ。
「そうなんですか」
なんだか伊織も恥ずかしい。
確かに、巴は伊織の事を『イオ』と、呼んでいた。
伊織は巴を『トー』と、呼んでいた気がする。
あの頃は学も無く、あまり会話が得意では無かったのだ。『ともえ』と、いう三文字があの頃はとても難しかった。
伊織自身も名乗りの時に『いおり』が言えず『イオ』と言った気がする。
コンコンと、部屋の扉がノックされ、メイドが顔を覗かせた。
「葵様、お時間です」
時間を知らせに来てくれたらしい。
「会場でまた会おう」
葵はそう言ってメイドと一緒に出ていく。
「僕たちも行こう」
手を差し出して、エスコートしてくれる巴。
やはり噂は嘘だったらしい。
どこが氷の天使だ。普通に、明るくて優しい人だ。
ここは巴の実家なのであるが、かなり大きくて伊織は圧巻されていた。
建物も多く、迷子になりそうだ。
やはり住む世界が違うのだと思ってしまう。
やっと止まったので着いたようだ。
「ここは僕の使っていた離れなんだ。呼ばれるまで休もう」
そう言って、建物に入る巴に付いて行く。
どうやら巴の部屋らしい。
自分のログハウスより大きそうな一軒家のお部屋だ。
伊織はもはや何も考えたくなくなってきた。
「ずいぶんと可愛らしいお部屋ですね」
巴に通された部屋には、熊のぬいぐるみが大から小までたくさん置いてある。
「小さい時の抱き枕だよ。どうも僕は熊のぬいぐるみが好きだったらしくてね。今でもたまに戻ってくると新しい熊のぬいぐるみがシレっと増えている」
ハハッと苦笑する巴だ。
ここは巴が幼少の頃に使っていた寝室である。
巴も可愛いし、巴のお兄様も可愛いと思う伊織だ。
巴の両親は既に他界している。
旅先で魔物に襲われたのだ。
当時は本当に魔物や隣国の悪漢に襲われて亡くなる人が多かった。
それが12歳の時だと伊織は聞いる。
その頃にはもう巴は幼稚舎で寮に入っており、聞かさらたのは寮を出た16歳の時だった。
葵が巴を不安にさせまいと、知らせないようにしていたのだ。
葵は巴を今でもものすごく可愛がっている。
「ともちゃーん」
いきなり部屋に入って来て、巴に抱きついたのは、葵である。
「久しぶり。家に全然帰ってきてくれないんだから。お兄ちゃんは寂しかったよ!」
もー、と怒る葵。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。巴さんのΩです」
そう、伊織は慌てて頭を下げる。
さすが巴にそっくりの兄、本当に美人で一瞬見惚れた。
自分と似た服を着ているが、葵はすごく似合っている。
「お兄様が忙しそうだったので、挨拶は控えました」
巴は苦笑している。
婚姻は二人の問題なので、あまり家族に報告したり、挨拶をするいう仕来りは無い。
逆に家族に相談する等は、自立出来てないとタブー視させる事もあるぐらいなのだ。
「孤児院で巴が気に入った子だよね? すごい別人みたいに育ったな」
葵は伊織を見て驚く。
当時は葵も心配になる程に痩せていた。
自分の食べ物まで他人に分けてしまっていたからである。
放っておいたらいつ亡くなってしまうか解らない様な有り様だった。
だから巴も気にかけていたのだ。
その子が今や筋肉ダルマになっているとは。
巴から『あの子と運命的に再会したんだ』『とても美人で可愛いんだ』『愛しのΩだ』等と手紙に書かれていたので、勝手に深窓の令嬢みたいな子だと思っていた葵。
だが、しかし、たしかに美人で可愛くも見える。
そこはかとなく色っぽさを感じた。
たしかに、巴の好みはこっちだろうと、感じる葵だ。
「急に里親が見つかって引き取られてしまったし、もう会え無いって巴はしばくずっと泣いてたよ」
葵はそう、苦笑した。
巴は恥ずかしそうにしている。
「その熊のぬいぐるみだって、イオって名前付けてたもんな」
「お兄様、黙って下さい!」
全部バラしてしまう葵に、巴は自分の顔をおさえる。
巴の顔は茹でたダコだ。
「そうなんですか」
なんだか伊織も恥ずかしい。
確かに、巴は伊織の事を『イオ』と、呼んでいた。
伊織は巴を『トー』と、呼んでいた気がする。
あの頃は学も無く、あまり会話が得意では無かったのだ。『ともえ』と、いう三文字があの頃はとても難しかった。
伊織自身も名乗りの時に『いおり』が言えず『イオ』と言った気がする。
コンコンと、部屋の扉がノックされ、メイドが顔を覗かせた。
「葵様、お時間です」
時間を知らせに来てくれたらしい。
「会場でまた会おう」
葵はそう言ってメイドと一緒に出ていく。
「僕たちも行こう」
手を差し出して、エスコートしてくれる巴。
やはり噂は嘘だったらしい。
どこが氷の天使だ。普通に、明るくて優しい人だ。
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