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「誕生日?」
仕事中、何でもない話の様に切り出した巴に、思わず聞き返す伊織。
「誰の誕生日ですか?」
「お兄様」
「いつです?」
「明後日」
「明後日!?」
そういう事はもっと早く言って欲しい。
「パートナー同伴で出て欲しいと言われて……」
「何の準備もしてませんよ!」
「お兄様が今、急にメッセージを飛ばして来たんだ」
窓から入ってきた伝書鳩は何かと思ったら、お兄様からのメッセージだったらしい。
「お兄様の誕生日が近いなら何も言われ無くても準備するものでしょう!」
「すまん。忘れていた」
「お兄様の誕生日を忘れないでください!!」
なんて事だ。
こんな急に、公爵の誕生パーティーなんて何を着て行けば良いんだ。
誕生日プレゼントはどうしたら良いんだ。
そもそも何を話したら良いんだ。
伊織の頭は混乱状態である。
「安心しろ、服なら準備してある」
「何で準備して有るんですか!」
「普通に僕のパートナーとして社交の場に出ることが増えると思ったんだ」
「さすがです」
思わずパチパチ拍手してしまう伊織。
「それと兄への誕生日プレゼントだが、兄は僕の手作りクッキーが好きなんだ。それで良いだろう」
「それで良いんですか!?」
「毎年そうしているからな」
「兄弟仲が本当に良いですね」
公爵が弟の手作りクッキーを誕生日プレゼントに貰っていると思うと、可愛いなぁと思う伊織だ。
巴の兄、葵は巴に似たプラチナブロンドの髪に、サファイアの瞳を持った美人である。
見た目的な違いで言えば、巴の髪はショートだが、葵の髪はロングであるぐらいだ。
性別で言えば、巴はαであるが、葵はΩなので、かなり違うと言える。
噂ではかなり冷徹であり、氷の天使と渾名されているとい伊織は聞いていた。
勝手に怖いイメージを持っていたのだが、違うのかも知れない。
確かに巴も良く知らない人からは冷たそうに見えたり、怖がられたりしている。
美人とはそれだけで冷たそうに見られがちだ。
伊織は少しだけ緊張が和らいだ。
巴の用意た服は、首元の開いたセクシーな衣装である。
袖口や胸元ににはフリルがついていて可愛らしい。
装飾も細かく、美しかった。
下はタイトな黒いパンツである。
腰のベルトにはダイヤがあしらわれ、豪華な作りだ。
いや、この服、普通に恥ずかしい。
「これを着なければいけないんですか?」
たとえ巴が用意してくれた服だとしても、嫌悪感が出てしまう伊織だ。
「これはΩの歴とした正装だぞ」
首元を見せるのは、誰のΩなのか首輪をちゃんと見せる意図がある。
巴は燕尾服でカッコいい装いだ。
巴がカッコいいから、更にその隣に並ぶのが恥ずかしい伊織である。
このΩの正装だって、普通のΩには似合うだろうが、自分のような筋肉ダルマが着る服では無い。
「制服では駄目なんですか?」
騎士団の制服だって、歴とした正装である。
「今日はお前をお兄様や色んな人に紹介するお披露目の日でも有るんだ。ちゃんと僕の立派なΩの妻として紹介したいだろ?」
「立派な騎士では駄目なんですか?」
「君は今、騎士の僕では無く、α夫である僕のΩ妻だろ?」
「それは、そうですけど……」
でも、恥ずかしい。
そして、こんな姿を見せられる人も普通に嫌だと思う。
お兄様も気分を害しそうで、心配なのだ。
「ゴチャゴチャ言わないで行くぞ。遅刻する!」
巴は伊織の手を掴むと、引っ張って馬車に乗せてしまうのだった。
仕事中、何でもない話の様に切り出した巴に、思わず聞き返す伊織。
「誰の誕生日ですか?」
「お兄様」
「いつです?」
「明後日」
「明後日!?」
そういう事はもっと早く言って欲しい。
「パートナー同伴で出て欲しいと言われて……」
「何の準備もしてませんよ!」
「お兄様が今、急にメッセージを飛ばして来たんだ」
窓から入ってきた伝書鳩は何かと思ったら、お兄様からのメッセージだったらしい。
「お兄様の誕生日が近いなら何も言われ無くても準備するものでしょう!」
「すまん。忘れていた」
「お兄様の誕生日を忘れないでください!!」
なんて事だ。
こんな急に、公爵の誕生パーティーなんて何を着て行けば良いんだ。
誕生日プレゼントはどうしたら良いんだ。
そもそも何を話したら良いんだ。
伊織の頭は混乱状態である。
「安心しろ、服なら準備してある」
「何で準備して有るんですか!」
「普通に僕のパートナーとして社交の場に出ることが増えると思ったんだ」
「さすがです」
思わずパチパチ拍手してしまう伊織。
「それと兄への誕生日プレゼントだが、兄は僕の手作りクッキーが好きなんだ。それで良いだろう」
「それで良いんですか!?」
「毎年そうしているからな」
「兄弟仲が本当に良いですね」
公爵が弟の手作りクッキーを誕生日プレゼントに貰っていると思うと、可愛いなぁと思う伊織だ。
巴の兄、葵は巴に似たプラチナブロンドの髪に、サファイアの瞳を持った美人である。
見た目的な違いで言えば、巴の髪はショートだが、葵の髪はロングであるぐらいだ。
性別で言えば、巴はαであるが、葵はΩなので、かなり違うと言える。
噂ではかなり冷徹であり、氷の天使と渾名されているとい伊織は聞いていた。
勝手に怖いイメージを持っていたのだが、違うのかも知れない。
確かに巴も良く知らない人からは冷たそうに見えたり、怖がられたりしている。
美人とはそれだけで冷たそうに見られがちだ。
伊織は少しだけ緊張が和らいだ。
巴の用意た服は、首元の開いたセクシーな衣装である。
袖口や胸元ににはフリルがついていて可愛らしい。
装飾も細かく、美しかった。
下はタイトな黒いパンツである。
腰のベルトにはダイヤがあしらわれ、豪華な作りだ。
いや、この服、普通に恥ずかしい。
「これを着なければいけないんですか?」
たとえ巴が用意してくれた服だとしても、嫌悪感が出てしまう伊織だ。
「これはΩの歴とした正装だぞ」
首元を見せるのは、誰のΩなのか首輪をちゃんと見せる意図がある。
巴は燕尾服でカッコいい装いだ。
巴がカッコいいから、更にその隣に並ぶのが恥ずかしい伊織である。
このΩの正装だって、普通のΩには似合うだろうが、自分のような筋肉ダルマが着る服では無い。
「制服では駄目なんですか?」
騎士団の制服だって、歴とした正装である。
「今日はお前をお兄様や色んな人に紹介するお披露目の日でも有るんだ。ちゃんと僕の立派なΩの妻として紹介したいだろ?」
「立派な騎士では駄目なんですか?」
「君は今、騎士の僕では無く、α夫である僕のΩ妻だろ?」
「それは、そうですけど……」
でも、恥ずかしい。
そして、こんな姿を見せられる人も普通に嫌だと思う。
お兄様も気分を害しそうで、心配なのだ。
「ゴチャゴチャ言わないで行くぞ。遅刻する!」
巴は伊織の手を掴むと、引っ張って馬車に乗せてしまうのだった。
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