三十路のΩ

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 泣きじゃくる伊織は、とめどない不安を巴に吐露していた。

「俺はずっと巴さんの事が憧れで好きで、ずっと側にいたかったんだぁ!」
「居れば良いじゃないか」
「だってΩだったんだ! 巴さんはΩが嫌いだ!」
「Ωは嫌いだが、伊織がΩなら大歓迎だ」
「巴さんの嫌がる事もしちゃうかも知れない」
「僕が伊織を嫌う事なんて無いよ」
「嘘だーー 俺にそんな魅力ないーー」

 ヨシヨシと抱きしめて慰める巴だが、伊織は「嘘だ嘘だ!」と信じてくれず、泣き止んでくれない。
 顔は真赤だし、普通に熱が出ている。
 座薬の影響で発情しているのかも知れない。
 確かにミントの様な爽やかな香りが漂ってくる。
 Ωの発情時の匂いってもっと甘ったるい毒々しい香りじゃないのか。
 と、言うか、僕はさっきから伊織の泣き顔にずっと興奮しっぱなしだ。
 だって可愛すぎる。
 ハッキリ言おう、勃起している。
 恥ずかしくてカッコ悪いがこれが一番わかり易いか。

「ほら伊織、僕の僕。硬くなっているよ」

 とっても不埒事を言っているとは思うが、伊織の手を取って自分の物に触れさせる。

「伊織のアナルに触れた時から、もう僕はおかしい。君に僕を今すぐ入れたい気持ちでいる。なんなら脱いでやろうか?」
「ふぇっ、本当に?」

 巴の硬くなったモノに驚く伊織。

「僕が此処を硬くするなんて珍しいんだからな!」

 もう恥ずかしくてヤケクソである。
 変態だって良いじゃないか!
 好きな人には変態になるもんだろ!

「疲れマラじゃないですか?」
「疲れマラじゃない!!」

 何を言っているんだ。
 そして何を言わせるんだ。

「そうなんだ。嬉しい」

 フフっと微笑む伊織。
 やっと安心してくれたらしい。

「そうなんだ。とってもヤりたい! ヤらせてくれ!!」

 もう我慢出来ないと、巴は伊織を抱きしめた。
 伊織からの反応は無かった。
 
「伊織? 伊織??」

 すごい、スヤスヤ寝てる……

 仕方ない。
 寝かせよう。
 
 巴は布団を直して伊織を寝かせた。
 熱は上手に自己治癒したらしく、治まっている。
 もしかしたら発情も自己治癒出来るのかもしれない。
 だって、ミントの爽やかな香りがしなくなっていた。

 出来れば僕もこの勃起したモノを自己治癒で治められたら良かったが、そんな能力は無いし、便利な薬草も持ち合わせていない。
 伊織に言えば有るのかも知れないが、伊織は寝ている。
  伊織が寝ているからこうなっている訳である。
 普通に抜かなければならない。

 伊織をおかずにする事だけ許して欲しい。

 巴はトボトボとトイレに向かうのだった。

 この僕をこんなに惨めにするのは伊織だけだ。
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