三十路のΩ

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 巴は与えたれた座薬と伊織を交互に見る。
 伊織は苦しそうだし、座薬を入れるとなると、伊織の衣類を脱がせて下腹部を露わにし、伊織の肛門に入れるという事だ。
 そんな、勝手に服を脱がせて勝手に入れて良いものなのだろうか。
 いや、良く無いだろう。
 しかし、伊織は苦しんでいるし、これは医療行為であって、でも、そんな……
 今、伊織を助けられるのは座薬を持った俺だけ。

 伊織、ごめん。

 巴は、意を決して伊織の体を支え、腰紐に手を掛けた。

 腰紐を外し、ズボンの紐を解き、下げる。

 伊織はブリーフを愛用しているのか。

 白いブリーフが、健康的に色づいた伊織の肌とは対照的で、なんだか愛らしく見えた。
 ブリーフも下げると、伊織が身じろぐ。
 不快感を感じただろうかと一瞬、動きを止めたが、伊織は体制を変えた。
 前かがみに突っ伏し、尻を巴に突き出すような体制を取ったのだ。
 無意識だろうが座薬を入れやすいようにと気を使かったのか、健気だ。
 巴はなるべく見ないようにし、伊織の服の裾で隠すようにしながら、指で肛門を探す。

「アッ‥ン…」

 巴の指が伊織の肛門に触れ、伊織は軽く声を漏らした。 
 巴は体が熱くなる。
 思わず、指に力を入れてしまった。
 中指の第一関節まで中に入れる。
 
「ひっ‥うっ…」

 更に声を漏らす伊織。
 それは彼から聞いた事も無いような甘い吐息まじりで、巴は駄目だと思いつつ、思考が揺らいでしまう。
 まるで夢現のような現実が曖昧になるような感覚に襲われる。
 無意識に更に指を進め、第二関節まで押入れた。
 ぬちゅっと、伊織のアナルは濡れ、巴の指を迎え入れている様だった。

 これがアナル?

 温かくて、柔らかくて、気持ちいい。
 ここに僕自身を入れてみたい。
 そうしたらどうなるのだろうか。
 期待で胸がドキドキと高鳴る。

「アアッ…やっ‥いや…」
 
 伊織から拒絶の声が上がり、ハッとして指を引き抜く。
 
 僕は何をしているんだ。

 気づけば、中指を根本まで押し込み、伊織の中を堪能していた。
 濡れた指先を親指と擦ると、ヌチャと音をたて糸を引く。
 エロイ。
 この液体は伊織から分泌された愛液だと考えると、信じられないくらいに興奮する自分がいた。

 落ち着け僕、今はそれどころじゃない。
 
 伊織の中に座薬を入れたいだけなんだ。

 沈まれ僕の僕。

 気づけば巴の巴は爆発したがってとんでとない事になっていた。

 巴は深呼吸をしてから、座薬を開け、伊織の肛門を再び探り当てて中に押し込む。
 伊織のアナルはよく濡れていたので、座薬もすぐに入っていった。

「んんっ‥やっ…こわい…」

 伊織は眉間にシワを寄せ、いつもより幼い口調で吐息の様に恐怖を漏らす。
 
「大丈夫。怖くない」

 さっきから伊織に怖い思いをさせまくっている張本人が何を言っているんだと言う話であるが、巴は伊織を抱きしめて頭を撫でた。

「だんちょう?」

 うっすらと目を開け、巴を見る伊織。

「ああ、団長はやめないか?」

 もう、戸籍上は夫婦になったと言うのに団長呼びは嫌である。

「ともえさん?」

 まだ少し舌足らずで可愛い伊織。
 本人は夢現かも知れない。

「そうだ」
「怖い……」
「何が怖いんだ?」
「俺、怖いんです。巴さんに嫌われる」
「何で僕が伊織を嫌うんだ?」
「だって巴さん、Ω嫌いじゃないですか!」

 うわーーん!!!
 と、声を上げて泣き出す伊織に驚く巴だ。
 確かにΩは嫌いだ。
 だけど、伊織は好きだ。
 Ωとか、αとか、βとか、関係なく伊織が好きだ。
 例え、伊織がαやβだったとしても好きただった。

 僕は伊織を愛している。

 僕は伊織を愛していたんだ。
 ずっと。
 今更こんな事に気づいて巴自信が驚く。
 
「僕は伊織を愛している。Ωだからとか、そうじゃなくて、愛しているんだ」

 一世一代の告白だった。

「嘘ばっかりです!!」

 伊織は余計に泣き出してしまった。

 そんな、本心なのに。
 嘘つき呼ばわりされて巴まで泣きたくなってきた。
 嘘ばっかりだなんて、伊織に嘘をついた事なんて無いのに!
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