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61.婚約破棄?
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「ユリアさん、大丈夫ですか?」
おずおずとユリアに話しかけたのはアイリスだった。
アイリスとしてはユリアを虐げていた性格の悪い母上と姉が捕まった上、ユリアが正当な侯爵家の跡取り娘だと判断されて良かったと思うのだが、ユリアはそれでも義母と姉に愛着が有ったのだろう。
酷くショックを受けてしまっている様子だ。
義母とは言え、母親に毒を盛られそうになっていたと言う話である。
それはショックを受けるに決まっている。
自分がやっていた乙女ゲームの、ストーリー展開にヒロインを毒殺しようとする義母なんて設定は無かった気がしたが。
これもさらりと書かれて流してしまったのかも知れない。
そもそも他のルートもそれなりにやり込んだと思うが、アイリスが気に入っていたのは王子とのルートで、他のルートの詳細は思い出せない点も多々あったりする。
それにユリアは此処は悪役令嬢がヒロインの世界だとは言うが、王子ルートのバッドエンドは王子と悪役令嬢が普通に結婚する事なるし、ユリアがただ単に有りもしないハディルートに入ってしまった乙女ゲームの世界だとも考えられる。
いや、そもそも悪役令嬢物だとか乙女ゲームの世界と考える事こそがナンセンスなのかも知れない。
「私は大丈夫です。父とも連絡が取れる様になるし、心配をおかけして申し訳有りません」
無理にニコリと笑って見せるユリアが健気で、アイリスは思わずユリアを抱きしめてしまった。
「ユリアさんには私もついていますわ!」
ついそんな事を大声で言ってしまう。
「有難うございます。嬉しいです」
ユリアが少し、笑ってくれた。
「ユリア!」
名前を呼ばれて顔を上げるユリア。
馬車から降りてくるハディ。
「終わる刻限だから迎えに来たんだ。お父様はもう立たれてしまったみたいだね。大丈夫かい?」
ユリアの顔色があまり良くない事に気づき、ハディも心配してしまう。
「お迎え有難うござきます公子」
「公子?」
今更、公子呼びだなんて……
ハディは違和感を覚える。
「私も、自分の家に帰ります。お母様もお姉様も捕まりましたし、もう私に危険は無いでしょ?」
「そうだね。それは安心だけど…… 女性だけで暮らすのも危険だよ? 私の家に来たくないの? 何でかなぁ? ウルフがうざったかったとか?」
何故、自分の家に帰りたいのかハディには解らず困惑する。
自分の家の方が安心するのかも知れないが、ユリアが家で飼ってるペット達とも仲良くしていたのに……
何が嫌だったのだろうか。
「だって、公子は私を守る為に婚約して下さいました。私にもう危険は有りませんし、婚約関係を続ける意味が有りません」
「え? あ、えっと、そうなるのか……」
ハディは頭が混乱してしまう。
確かにそうは言ったけど。
そうなんだけど……
「ちよっと待って下さい、どう言うことですの!?」
アイリスが間に割って入る。
本当にどう言う事!? と、なって前のめりになってしまったのだ。
ハディはユリアが好きだからプロポーズして、ユリアもハディが好きだからプロポーズを受け取ったのだと思っていたし、ちゃんと正式な届け出もされているのだ。
こんな状態で婚約破棄等したらユリアは傷物扱いになってしまう。
「ハディ公子はユリアを別に何とも思っていなくて婚約破棄を前提としてプロポーズしたとそう言う事ですか? そしてそんな中途半端な関係で家に連れ込んだと!?」
「アイリス様、落ち着いて下さい。裏門と言えど神聖な城の前でする話ではないです」
激怒してしまうアイリスを宥めるユリア。
人に聞かれると大変な事になってしまう。
「公子を責めないで下さい。あの時私を助けたくて咄嗟にとった行動なのです。私は助かりましたし、嬉しかったんです」
「それでも婚約破棄前提の婚約だなんて…… 王も既に祝福を贈ってしまわれていますわ。今、婚約破棄なんてしたらユリアさんに飛んでもない欠点があると思われてもう貰い手が居なくなってしまいます。本当になんて軽率な事をされたの?」
アイリスはハディを睨みつけてしまう。
確かにあの時はそうするしか無かったのかも知れない。
そうは思うが、ユリアを傷物にされたと同じ事をしでかしたハディを許せそうにない。
側に居るレオンはオロオロしてしまっている。
「ごめん……」
ハディの口から出た言葉は謝罪であった。
おずおずとユリアに話しかけたのはアイリスだった。
アイリスとしてはユリアを虐げていた性格の悪い母上と姉が捕まった上、ユリアが正当な侯爵家の跡取り娘だと判断されて良かったと思うのだが、ユリアはそれでも義母と姉に愛着が有ったのだろう。
酷くショックを受けてしまっている様子だ。
義母とは言え、母親に毒を盛られそうになっていたと言う話である。
それはショックを受けるに決まっている。
自分がやっていた乙女ゲームの、ストーリー展開にヒロインを毒殺しようとする義母なんて設定は無かった気がしたが。
これもさらりと書かれて流してしまったのかも知れない。
そもそも他のルートもそれなりにやり込んだと思うが、アイリスが気に入っていたのは王子とのルートで、他のルートの詳細は思い出せない点も多々あったりする。
それにユリアは此処は悪役令嬢がヒロインの世界だとは言うが、王子ルートのバッドエンドは王子と悪役令嬢が普通に結婚する事なるし、ユリアがただ単に有りもしないハディルートに入ってしまった乙女ゲームの世界だとも考えられる。
いや、そもそも悪役令嬢物だとか乙女ゲームの世界と考える事こそがナンセンスなのかも知れない。
「私は大丈夫です。父とも連絡が取れる様になるし、心配をおかけして申し訳有りません」
無理にニコリと笑って見せるユリアが健気で、アイリスは思わずユリアを抱きしめてしまった。
「ユリアさんには私もついていますわ!」
ついそんな事を大声で言ってしまう。
「有難うございます。嬉しいです」
ユリアが少し、笑ってくれた。
「ユリア!」
名前を呼ばれて顔を上げるユリア。
馬車から降りてくるハディ。
「終わる刻限だから迎えに来たんだ。お父様はもう立たれてしまったみたいだね。大丈夫かい?」
ユリアの顔色があまり良くない事に気づき、ハディも心配してしまう。
「お迎え有難うござきます公子」
「公子?」
今更、公子呼びだなんて……
ハディは違和感を覚える。
「私も、自分の家に帰ります。お母様もお姉様も捕まりましたし、もう私に危険は無いでしょ?」
「そうだね。それは安心だけど…… 女性だけで暮らすのも危険だよ? 私の家に来たくないの? 何でかなぁ? ウルフがうざったかったとか?」
何故、自分の家に帰りたいのかハディには解らず困惑する。
自分の家の方が安心するのかも知れないが、ユリアが家で飼ってるペット達とも仲良くしていたのに……
何が嫌だったのだろうか。
「だって、公子は私を守る為に婚約して下さいました。私にもう危険は有りませんし、婚約関係を続ける意味が有りません」
「え? あ、えっと、そうなるのか……」
ハディは頭が混乱してしまう。
確かにそうは言ったけど。
そうなんだけど……
「ちよっと待って下さい、どう言うことですの!?」
アイリスが間に割って入る。
本当にどう言う事!? と、なって前のめりになってしまったのだ。
ハディはユリアが好きだからプロポーズして、ユリアもハディが好きだからプロポーズを受け取ったのだと思っていたし、ちゃんと正式な届け出もされているのだ。
こんな状態で婚約破棄等したらユリアは傷物扱いになってしまう。
「ハディ公子はユリアを別に何とも思っていなくて婚約破棄を前提としてプロポーズしたとそう言う事ですか? そしてそんな中途半端な関係で家に連れ込んだと!?」
「アイリス様、落ち着いて下さい。裏門と言えど神聖な城の前でする話ではないです」
激怒してしまうアイリスを宥めるユリア。
人に聞かれると大変な事になってしまう。
「公子を責めないで下さい。あの時私を助けたくて咄嗟にとった行動なのです。私は助かりましたし、嬉しかったんです」
「それでも婚約破棄前提の婚約だなんて…… 王も既に祝福を贈ってしまわれていますわ。今、婚約破棄なんてしたらユリアさんに飛んでもない欠点があると思われてもう貰い手が居なくなってしまいます。本当になんて軽率な事をされたの?」
アイリスはハディを睨みつけてしまう。
確かにあの時はそうするしか無かったのかも知れない。
そうは思うが、ユリアを傷物にされたと同じ事をしでかしたハディを許せそうにない。
側に居るレオンはオロオロしてしまっている。
「ごめん……」
ハディの口から出た言葉は謝罪であった。
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