【完結】悪役令嬢に転生してしまったと思ったけど、ヒロインも転生してた

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47.貧乏公子の家

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「ご主人様…… そちらのお嬢様は何方様ですか?」

 馬車に送られ、ハディの家に連れてこられたユリア。
 そんなユリア見て、迎えに出たハディの付き人の様な人はが目を丸くしている。

「捨て犬や、捨て猫を無闇に拾ってくるなと言ったらまさか人間の女性を拾ってこられるなんて…… ゆ、誘拐ですよ!」

 慌てた様子でユリアに近づく付き人さん。

「私を何だと思っているのウルフ。彼女は誘拐したんだじゃないよ。私の妻にする予定の人」
「え!? 本当にですか!? お嬢様。主人が言っている事は本当なんですか!?」

 ウルフと呼ばれた付き人は更に驚く。
 ユリアはコクコク頷いた。
 さり気なく、呼び捨てしてくれる事が嬉しい。

「なんて事ですか!? 素晴らしいです。こんな事が。旦那様はご存知なのですか!?」
「ううん、相談してない。急に決まったゃったから……」
「と、言う事はお嬢様から主人にプロポーズを!?」

 ユリアはブンブン首を横に振る。

「どういう事か解りませんが、婚約なさって下さったのですよね。髪に花が…… えっと、無理やりとか、脅されてとかではなく。お嬢様は主人を愛して下さっておると?」
「ウルフ、玄関先でやめて…… ユリアが引いてるよ」
「おお、俺とした事が興奮しました。どうぞお嬢様。狭い家ですが」
「ウルフ、ここ一応私の所有している物件だからね」

 はぁ、と溜め息をついて困った表情を見せるハディ。

「ごめんねユリア、ウルフが煩くして」

 ハディはユリアに謝りつつ、手を引く。
 ハディの家は、少し路地裏に入った所にある寂れた家であった。  
 蔦とか凄く絡まっている。
 外から見ると空き家の様であった。
 雨漏りとかしそうだなんて、ちょっと思ってしまっていた。
 だが、中に入ると普通に綺麗でちゃんとしている。
 雨漏りも無さそうだ。

「ちょうど私の部屋の隣が空いているから、ユリアはそこを使って」

 ハディは2階の部屋へユリアを案内してくれた。
 ベッドと本棚が置かれてある質素な部屋である。
 普段は客室として使っているのだろう。

「あまり良い部屋じゃないし、本当にウルフの言う通り狭いんだけど、申し訳無いね」
「いえ、十分な広さです」
 
 普段、物置で寝ているのだ。
 それから見たら十分良い部屋である。
 逆にアイリス様の部屋ほど立派になってしまうと、一人では落ち着かないだろう。

 そうだ。  

 メイド達……

「家に居るメイド達が酷い事をされてないかしら……」

 仲の良いメイド達を置いて自分だけ逃げてしまった。
 酷い目に合わされているかも知れないと思うと気が気でなくなってしまう。

「あの、やっぱり私、家の様子を……」

「ユリア、君が戻るのは危険だ。だから此処に居て。私の下僕に様子を見に行かせるから」
「下僕?」

 ウルフさん一人しか居ないように見えたがまだ、従者が居たのだろうか。

「お腹はすかない?」
「え? ええ、食欲はあまり……」
「そうだよね。ウルフにお粥だけ作らせるよ」

 ハディはそう言うと、ユリアを置いて一旦部屋を出ていった。

 残されたユリアは取り敢えずベッドに座って窓の外を眺めた。
 なんだか色々あって疲れてしまった。
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