【完結】悪役令嬢に転生してしまったと思ったけど、ヒロインも転生してた

2.悪役令嬢物に悪役ヒロインとして転生してしまったOLさん

　ここは『悪役令嬢に転生してしまった』的な物語の中だ。
　そして私はヒロイン。
　そう、所謂『悪役ヒロイン』に転生してしまった訳だ。
　なんてややこしい事に。
　私は頭を押さえる。

　私は普通のOLだった。
　いつもと同じ朝、普通に起きて、普通に支度して、普通に家を出たと思ったのだが……

　気づいたらとある学園の入学式だった。

　今は、主席で入学した公爵令嬢が、答辞を読んでいる。
　この国の王子レオン様の婚約者、アイリス様だ。


　私は悪役令嬢物にハマっていた。
　
　私はヒロインのユリア、平民であったが、実は父が侯爵で、自分は隠し子であった。
　そして、母を無くした私を可哀想に思い、引き取ってくれたのだ。
　だが、新しい母と姉は意地悪で、私をメイドの様に扱い、虐めている。
　父は単身赴任の様な仕事が多く、家にあまり帰って来ないので、私が虐められている事等知らないのだろう。
　私は憧れであったこの学園に入るが、悪役令嬢と、その取り巻きである姉に虐められてしまうのである。
　だが、そんな所を王子であるレオン様に助けられ、愛を育み、最終的にはレオン様が皆の前でアイリス様との婚約破棄を宣言し、私と結婚するのだ。
　そして悪役令嬢であるアイリス様はデブで不細工な貧乏伯爵に無理やり嫁がされる。

　それがこの話が本筋。

　たが、これは悪役令嬢が主人公の転生物なので、私がここで転生する前に、転生した悪役令嬢がバットエンドを回避する為に奮闘し、ストーリーを変えた話の筈だ。
　悪役令嬢も元はOLだった。
　気づいたらこの世界で、自分は悪役令嬢。バットエンドを回避するべく奮闘し、最悪、一人でも生きられる様に畑を耕したり、手先が器用な人らしく、人気洋服店を運営したり多才なスキルで、王子どころかヒロインの攻略対象も魅了して、人気者になっている筈である。
　私はヒロインであると思い込んでいる馬鹿で間抜けな悪役ヒロインなので、王子に馬鹿みたいにアタックしたり、攻略対象にモーションをかけてみたり、悪役令嬢を目の敵にしてみたりし、結局、私がデブで不細工な貧乏伯爵に嫁がされる事になるのだ。

　まってくれ。
　それは嫌だ。


　元々、悪役令嬢物が好きで読んでいた。
　同じく異世界に転生し、奮闘して今のポジションを勝ち取ったのに、いざヒロインが現れビクビクしているであろうアイリス様は可愛いし、私は悪役令嬢を応援する。
　いや、転生してるので『悪役令嬢』はおかしいか。
　彼女は悪役令嬢ではないただの気品あふれる多才で聡明な人気者のヒロイン公爵令嬢なのだ。
　でも、私だってデブで不細工な貧乏伯爵に嫁がされるは嫌である。
　それで性格が良いならまだ良いけど、そんな訳は無いし。
　あ、でも別に私は王子とか攻略対象に興味は無いし、近づかなければ良いだけだ。
　影ながらアイリス様を応援するポジションにつこう。

　うん。

　私は、そう決めると、王子達との出合いを全力回避する為にストーリーを必死に思い出すのだった。