君の歌声が一番好き『完結』

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 光の騎士と闇の騎士の活動によって、平和が保たれていた年月が長く、人々は外の魑魅魍魎に恐れる事は無くなっていた。

 それが原因かもしれない。

 白の騎士団は次第にアイドル活動へと熱を入れはじめ、騎士としての仕事はおざなりになった。
 朝、山頂で歌うのは売れない下っ端騎士ばかりになってしまい、サボる事もしばしばだ。
 団長であるアメジスも、王からの命令でアイドル活動も手を抜けなくなり、自分の仕事で手一杯であった。
 光の騎士団はもはや騎士団としての統制は取れていない。
 アメジスは頭を抱えていた。

 闇の騎士団はその間も騎士団としての仕事を全うしていたが、アイドルとして華々しく活躍する光の騎士団と、闇に歌う騎士団では更に溝が深まるばかりだ。
 闇の騎士団もだんだんと勝手に抜ける団員が出てきた。
 急に見廻りに来なくなったり、山頂の番をサボったりする者が出てきたのだ。
 オニキスは一人ひとり回って声をかけた。
 オニキスは人柄も良く、団員からも人気なので、心を入れ替えて戻って来る者も居たが、国外に消えてしまう者も多かった。
 元々闇の騎士は闇の力が強いので、何人か手を組んで比較的安全なルートを取れば国外に逃げ込む事も可能だ。
 そもそも国外と国内を行き来して行商を確立しているのも闇の騎士団である。 
 逃げようと思えばいつでも逃げれたのだが、それを食い止めていたのは他でもないオニキスの人徳である。
 しかし、ここに来てタガが外れてしまった。
 オニキスもまた頭を抱えていた。

 そんな時、とうとう国王に呼び出された。

「はい、王様」

 王の間に通されたオニキスは跪く。

「最近の闇の騎士団はどうなっておるのだ。3分の1が国外に逃げたそうではないか、それもこれもオニキス、お前の監督不行き届きである」
「申し訳ありません」

 王に叱責され、頭を下げるしかないオニキス。

「そもそも光の騎士団が居れば、闇の騎士団など必要無いのだ。それを伝統だからと残しておいただけに過ぎない。闇の騎士団は即刻解散し、行商用の行き来する団体としてのみの活動だけ残そう。闇の騎士団の歌声は騒音と変わらん。歌うのは禁じる」
「お待ちください王様、どうか考え直して下さい。闇の騎士団は必要です」
「王に口答えするのか。お前は大罪人だ」
「……申し訳ありません王様」
 
 もはや横暴としか言いようが無いのだが、オニキスは頭を下げるしか無かった。



 闇の騎士団が解散する事は直ぐに御触れが出た。
 町の者は喜んでお祭り騒ぎだし、光の騎士団も鼻た高々と言う様子だ。
 行商としてのみの活動になるので、団員はかなり少なくなった。
 国に居場所が無くなった様なものなので、大方は辞めて国外へと逃げてしまった。
 もちろんオニキスは辞めずに、行商の作業につく事になった。




「闇の騎士団が解散になった!?」

 アメジスは話を聞いて声が裏返る。

「解散して清々しましたよね。本当に耳障りな歌声で虫酸が走りってましたから。国外逃亡した者が多いと聞きましたが、あんな化け物連中、他の国でも追われる事でしょう」

 ハハッと笑う隊士を睨むアメジス。

「馬鹿な事を言うな。今まで光と闇の調和で均衡を保っていたんだ。それを方無くすとなれば、バリアだって今までの様に強固なものは張れなくなる。魑魅魍魎を受け止めきれやしない。やつらが入って来たとして、我々のヒールとバフだけでは……」

 アメジスは青ざめていた。
 我が国は終わりだ。
 行商用のメンバーだけ残したと言う話だが、もしもの時に足りる人数では無いだろう。

「何を弱気なってるんですか団長。警備団も近衛兵も腕利き揃いですよ。我々のバフで魑魅魍魎なんて簡単に退治できます。来るなら来いですよ。魑魅魍魎を退治できれば国土も増やせますし、資源も手に入ります」
「馬鹿なことばかり言うんじゃない」

 目を輝かせる隊士は夢物語ばかりを言っている。
 それが出来るならば遥か昔の先祖がしているのである。
 出来なかったから、光の騎士団と闇の騎士団を作って対策したのだろう。
 それなのに……

 馬鹿ばっかりだ。

 アメジスは、オニキスが心配である。
 
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