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村外れの自宅まで戻って来たアリアは、律儀に倉庫に入ると、鍵を締めてくれとお願いする。
サファイアの家臣は戸惑いつつも、懇願され、鍵をかけた。
アリアはホッと安心する。
倉庫に仕舞われた古い毛布に包まって母と姉の帰宅を待つのであった。
少し寒いが、我慢出来ない程寒い訳でもなく、アリアはとても楽しかった思い出に浸る。
サブが王子様だったなんて驚きだ。
素顔は本当にイケメンで、きっとモテモテなんだろうなぁ。
何で私に求婚なんてしたんだろう。
不思議だ。
やっぱり夢だったんだわ。
アリアはそんな風に考えて、瞳を閉じる。
そのまま眠ってしまうのだった。
「アリア、起きなさい。アリア!」
大声で名前を呼ばれ、ハッと目を開けるアリア。
なんだかとっても素敵な夢を見ていたみたい。
「あ、お母様、お姉さま、お帰りなさい」
「ちゃんと反省しましたの?」
扉を開け、此方を見ているのは帰って来たばかりの母と姉である。
外はもう明るくなっていた。
城に泊まって来たのだろうか。
それとも他の所に?
「はい、反省しました」
「嘘をおっしゃい。涎まで垂らして、汚らしい子」
慌てて立ち上がり頭を下げるアリアだが、母は不機嫌である。
指摘されて口を拭うアリアだ。
「本当、蜘蛛の巣だらけですわね」
フフっと姉は笑っている。
「私達は疲れたから寝るわ。掃除と洗濯をしておいてくださいね」
「はい、お疲れ様でした」
アリアは自分の体についた蜘蛛の巣を払う。
母と姉は欠伸をし、屋内へと入っていた。
やっぱり、夢だったのかしら。
アリアは不思議な気持ちになりなが、朝の仕事に取り掛かるのであった。
昼過ぎに、母と姉は起きて来た。
朝食を食べると言うので、アリアは準備をする。
「昨夜の収穫祭は楽しかったですか?」
アリアは手を動かしつつ、テーブルに座って待つ母と姉に話しかけた。
世間話である。
「最悪です。王様が連れてきた女に王子は一目惚れして結婚するだなんて言うですのよ。そんな風に妃を選ぶなんて、我が国は終わったも同然ですわ」
「本当、しかもその子がアリアに……」
愚痴を零すように言う母に、つられる姉。
しかし、途中で言葉を止めた。
「私? 私がどうかしたんですか?」
アリアと言った気がしたのだが。
「何で有りませんわ。そんな事より、早く料理しなさい!」
「はい、もう少しです」
母に怒られ、急ぐアリア。
やはり、虫の居所が悪そうだ。
王子様の結婚相手が決まってしまってピリピリしているのね。
でも良かった。
あれ? 何が良かったのだろう?
アリアは自分の思考に首を傾げる。
母か姉が王子と結婚してくれたら二人の暮らしが楽になって良いと思っていたのだが、その王子がもしもサブだったらと思うと……
サブと母か姉が結婚するのは嫌だなぁ。
何で?
何でそう思うのか解らないが、嫌なものは嫌である。
でも、夢だったのよね。
だって、私、夢のサブに告白はされたけど、結婚する約束はしてないし。
アリアはさっさと料理を済ませてテーブルに並べる。
これが終わったら二人が着たドレスを手直して買い取って貰いに行かなきゃ。
城ではサファイアが家臣たちに質問攻めされていた。
「王子、昨夜の令嬢は何処の何方なのですか!?」
「婚約したと言うのは本当ですか?」
「式はいつ頃を予定しているのですか?」
寄って集って矢継ぎ早に聞かれ、サファイアは困ってしまう。
父上め!
どうやら、気を利かせたのか何なのか解らないが、自分達が席を外している間に国王がそう皆の前で宣言してしまったと言うのだ。
「彼女は村外れの侯爵家の娘さんだ。婚約はまだしていない。勿論、式を上げるなんて話しも無い」
ありのままを話すサファイア。
「それは…… でも、王子は令嬢に好意を寄せているのですよね?」
「婚約を考えているのですよね?」
家臣達は、少し戸惑った様子だが、更に続けて聞いてくる。
「ああ、私は気がある。だが向こうがどう出るか…… 考えさせてくれと言われたんだ。あれは遠回しにフラレたのかも知れんなぁ」
このまま普通の友達で居ましょうと、言意味合いだったかも知れない。
そう考えると溜息が漏れるサファイアだ。
「なんだい我が息子よーー! 暗いじゃないか」
バンと勢いよくドアを開けて入ってくるのは父上だ。
「父上。何故、嘘を付いたのですか?」
若干責めるような口調で言ってしまうサファイア。
自分とアリアは婚約なんてしていないのに。
「それはお前、アリア嬢を他の変態貴族に取られない為だよ」
「どういう事ですか?」
「だからね。あの母と姉の側に居たらいつ売られてしまうかも知れないだろ? それを阻止する為だ。王子の婚約者を金で買おうなんて奴は居ないだろうからね」
「なるほど……」
父に説明されてると納得してしまうサファイア。
確かにこうしておけば安心である。
「もう宣言してしまったからね。頑張ってアリア嬢を口説き落とすんだよ」
私を嘘つきな国王にしないでおくれと、サファイアの肩を叩く父である。
「そんな簡単に言わないで下さい。アリアは何故か貴族に嫌悪感を持っているみたいで……」
「母と姉があれではね。機上に振る舞っていても心の奥では傷ついているのだろうね。あそこは侯爵もなかなかの性悪だったなぁ。それで村外れに置いたんだけど。アリアは夫人に似たね」
「何をやらかしたんですか?」
「国の金を着服してた」
「最悪ですね……」
家名が汚れるとアリアは気にしていたが、家名は既に汚れまくっている様だ。
アリアは何も知らないのだろうな。
「夫人が旦那の不正に気づいて告発してくれて解ったんだ」
「夫人は何で侯爵と結婚したんでしょう」
「それこそ政略結婚だったみたいだね」
「我が国では珍しいですね」
「だから余計にね。あそこの侯爵家はイメージが悪いんだよ」
ハァーと溜息を吐く父。
そう考えると、アリアとの婚約はもしかしたらただの村娘より反感を買うかも知れない。
「我々は王子を応援しますよ!」
「侯爵がどんな人だったかは関係有りません。王子が好きになった人が悪人な訳有りませんからね」
「本当に良かったです。王子は女性に興味が無いのかと思っていました」
「本当に良かったですね」
「よーし、王子の恋愛応隊を結成しよう!」
「おーー!」
何故か家臣達は盛り上がって拳を突き上げている。
「有り難う。でも、普通に家臣てしての仕事をしてくれ」
サファイアは家臣達に仕事に戻ってくれと伝えた積りだ。
「王子、早速デートに誘いましょう」
「女性は宝石が好きですよ」
「中庭でティーパーティーなど如何でしょう」
「女性は甘い物が好きですよ」
そう、意見を言う家臣達は何処か楽しげである。
「そうだな。お茶に誘ってみる」
そう後押しされると、サファイアも悪い気はしなかった。
サファイアの家臣は戸惑いつつも、懇願され、鍵をかけた。
アリアはホッと安心する。
倉庫に仕舞われた古い毛布に包まって母と姉の帰宅を待つのであった。
少し寒いが、我慢出来ない程寒い訳でもなく、アリアはとても楽しかった思い出に浸る。
サブが王子様だったなんて驚きだ。
素顔は本当にイケメンで、きっとモテモテなんだろうなぁ。
何で私に求婚なんてしたんだろう。
不思議だ。
やっぱり夢だったんだわ。
アリアはそんな風に考えて、瞳を閉じる。
そのまま眠ってしまうのだった。
「アリア、起きなさい。アリア!」
大声で名前を呼ばれ、ハッと目を開けるアリア。
なんだかとっても素敵な夢を見ていたみたい。
「あ、お母様、お姉さま、お帰りなさい」
「ちゃんと反省しましたの?」
扉を開け、此方を見ているのは帰って来たばかりの母と姉である。
外はもう明るくなっていた。
城に泊まって来たのだろうか。
それとも他の所に?
「はい、反省しました」
「嘘をおっしゃい。涎まで垂らして、汚らしい子」
慌てて立ち上がり頭を下げるアリアだが、母は不機嫌である。
指摘されて口を拭うアリアだ。
「本当、蜘蛛の巣だらけですわね」
フフっと姉は笑っている。
「私達は疲れたから寝るわ。掃除と洗濯をしておいてくださいね」
「はい、お疲れ様でした」
アリアは自分の体についた蜘蛛の巣を払う。
母と姉は欠伸をし、屋内へと入っていた。
やっぱり、夢だったのかしら。
アリアは不思議な気持ちになりなが、朝の仕事に取り掛かるのであった。
昼過ぎに、母と姉は起きて来た。
朝食を食べると言うので、アリアは準備をする。
「昨夜の収穫祭は楽しかったですか?」
アリアは手を動かしつつ、テーブルに座って待つ母と姉に話しかけた。
世間話である。
「最悪です。王様が連れてきた女に王子は一目惚れして結婚するだなんて言うですのよ。そんな風に妃を選ぶなんて、我が国は終わったも同然ですわ」
「本当、しかもその子がアリアに……」
愚痴を零すように言う母に、つられる姉。
しかし、途中で言葉を止めた。
「私? 私がどうかしたんですか?」
アリアと言った気がしたのだが。
「何で有りませんわ。そんな事より、早く料理しなさい!」
「はい、もう少しです」
母に怒られ、急ぐアリア。
やはり、虫の居所が悪そうだ。
王子様の結婚相手が決まってしまってピリピリしているのね。
でも良かった。
あれ? 何が良かったのだろう?
アリアは自分の思考に首を傾げる。
母か姉が王子と結婚してくれたら二人の暮らしが楽になって良いと思っていたのだが、その王子がもしもサブだったらと思うと……
サブと母か姉が結婚するのは嫌だなぁ。
何で?
何でそう思うのか解らないが、嫌なものは嫌である。
でも、夢だったのよね。
だって、私、夢のサブに告白はされたけど、結婚する約束はしてないし。
アリアはさっさと料理を済ませてテーブルに並べる。
これが終わったら二人が着たドレスを手直して買い取って貰いに行かなきゃ。
城ではサファイアが家臣たちに質問攻めされていた。
「王子、昨夜の令嬢は何処の何方なのですか!?」
「婚約したと言うのは本当ですか?」
「式はいつ頃を予定しているのですか?」
寄って集って矢継ぎ早に聞かれ、サファイアは困ってしまう。
父上め!
どうやら、気を利かせたのか何なのか解らないが、自分達が席を外している間に国王がそう皆の前で宣言してしまったと言うのだ。
「彼女は村外れの侯爵家の娘さんだ。婚約はまだしていない。勿論、式を上げるなんて話しも無い」
ありのままを話すサファイア。
「それは…… でも、王子は令嬢に好意を寄せているのですよね?」
「婚約を考えているのですよね?」
家臣達は、少し戸惑った様子だが、更に続けて聞いてくる。
「ああ、私は気がある。だが向こうがどう出るか…… 考えさせてくれと言われたんだ。あれは遠回しにフラレたのかも知れんなぁ」
このまま普通の友達で居ましょうと、言意味合いだったかも知れない。
そう考えると溜息が漏れるサファイアだ。
「なんだい我が息子よーー! 暗いじゃないか」
バンと勢いよくドアを開けて入ってくるのは父上だ。
「父上。何故、嘘を付いたのですか?」
若干責めるような口調で言ってしまうサファイア。
自分とアリアは婚約なんてしていないのに。
「それはお前、アリア嬢を他の変態貴族に取られない為だよ」
「どういう事ですか?」
「だからね。あの母と姉の側に居たらいつ売られてしまうかも知れないだろ? それを阻止する為だ。王子の婚約者を金で買おうなんて奴は居ないだろうからね」
「なるほど……」
父に説明されてると納得してしまうサファイア。
確かにこうしておけば安心である。
「もう宣言してしまったからね。頑張ってアリア嬢を口説き落とすんだよ」
私を嘘つきな国王にしないでおくれと、サファイアの肩を叩く父である。
「そんな簡単に言わないで下さい。アリアは何故か貴族に嫌悪感を持っているみたいで……」
「母と姉があれではね。機上に振る舞っていても心の奥では傷ついているのだろうね。あそこは侯爵もなかなかの性悪だったなぁ。それで村外れに置いたんだけど。アリアは夫人に似たね」
「何をやらかしたんですか?」
「国の金を着服してた」
「最悪ですね……」
家名が汚れるとアリアは気にしていたが、家名は既に汚れまくっている様だ。
アリアは何も知らないのだろうな。
「夫人が旦那の不正に気づいて告発してくれて解ったんだ」
「夫人は何で侯爵と結婚したんでしょう」
「それこそ政略結婚だったみたいだね」
「我が国では珍しいですね」
「だから余計にね。あそこの侯爵家はイメージが悪いんだよ」
ハァーと溜息を吐く父。
そう考えると、アリアとの婚約はもしかしたらただの村娘より反感を買うかも知れない。
「我々は王子を応援しますよ!」
「侯爵がどんな人だったかは関係有りません。王子が好きになった人が悪人な訳有りませんからね」
「本当に良かったです。王子は女性に興味が無いのかと思っていました」
「本当に良かったですね」
「よーし、王子の恋愛応隊を結成しよう!」
「おーー!」
何故か家臣達は盛り上がって拳を突き上げている。
「有り難う。でも、普通に家臣てしての仕事をしてくれ」
サファイアは家臣達に仕事に戻ってくれと伝えた積りだ。
「王子、早速デートに誘いましょう」
「女性は宝石が好きですよ」
「中庭でティーパーティーなど如何でしょう」
「女性は甘い物が好きですよ」
そう、意見を言う家臣達は何処か楽しげである。
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