【完結】俺の可愛い牛

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 怖い夢を見た。

 哉汰が俺を押さえつけていて、知らない人が俺のお尻におちんちん突っ込んできた。
 怖かった。
 哉汰は「大丈夫怖くないよ。すぐ気持ちよくなる。牛五郎は牛なんだから」と、言っていた。
 哉汰の撫でてくれる手は凄く気持ちいいのに、お尻の異物感が気持ち悪くて堪らなかった。

 目を覚ましたから、夢だったんだと気づいた。

 酷く息苦しくて、気持ち悪い。
 寝汗でべっとりしていた。

「牛五郎? 目が覚めた? 熱下がったな。ご飯食べられそうか?」

 視界に入ってきた哉汰に、何だかホッとする牛五郎。

「熱?」
「熱が出ちゃったな。焦ったよ」

 ハハッと笑う哉汰。

「主人に心配をかけるなんて悪い牛だ」

 と、言いつつも、優しく頭を撫でてくれた。
 
「ごめんなさい……」

 哉汰は怒ってない。それは解る。
 でも元々駄目な牛な上に熱まで出してしまった。
 哉汰に迷惑をかけた。
 牛五郎はシュンとなってしまう。

「お粥だよ。食べられる?」
「うん……」

 卵がゆをフーフーし、口元に運んでくれる哉汰。
 
「美味しい……」
「良かった」

 哉汰が甲斐甲斐しく世話をしてくれるのが嬉しい。

「俺の事、嫌いじゃない? 他所にやらない?」

 夢の内容が気になって、聞いてしまう牛五郎。
 人間でもない、乳牛としても駄目な俺。
 もう要らないんじゃないかと不安になる。

「他所にやる訳ないだろ? 牛五郎は俺の牛で、俺の執事だ」

 急に何を言い出すんだと、哉汰は驚いてしまう。
 寧ろ何処かへ行きたいと言っても行かせないんだが。

「面倒じゃない?」
「面倒じゃないよ。牛五郎は頑張ってて偉いね」

 何故か不安そうな牛五郎。熱が出て気弱になっているのだろうか。
 哉汰は牛五郎を褒めてみる。

「嘘ばっかり。俺なんて面倒くさいゴミ牛なんだ」

 うわーんと、泣き出し、布団を被ってしまう牛五郎。
 お粥はきっちり最後まで食べてくれたので、もう一度寝ても良いのだけど。
 そんなに泣かないで欲しい。
 
「牛五郎はゴミ牛じゃないよ~。ヨシヨシ、お薬飲んでくれないかな~」

 自分を卑下するのは止めてほしい。
 それと免疫力を上げるお薬と、お乳の出を良くするサプリメントを用意してある。
 飲んでほしいのだけど。
 
「俺なんて、哉汰にとってはただの牛でしかなくて、調教したら飽きて他所にやるんだ。俺なんて要らないんだ」

 牛五郎は布団を被ったまま、顔も出してくれない。
 すごく泣きいてしまっている。
 可哀想に。何か不安になっている様だ。
 具合が悪くて情緒が不安定なのだろう。
 しかし、いくら本人とは言え、俺以外が牛五郎を卑下する事は面白くないな。
 あと、俺が牛五郎を捨てると思っているのも嫌だ。
 何故そんな誤解をしているのだろうか。

「牛五郎の為にしているんだよ? 牛五郎が可愛いからだ。ちゃんと可愛くなってお乳もたくさん出して元気になれば寿命も伸びるし、俺と一緒に居られる。調教されるのは嫌で苦痛かも知れないけど、俺は牛五郎が憎くてしてるんじゃないんだぞ」

 そう、布団越しに話しかける。
 コンモリしている布団のこの辺りが頭かなぁと思う所をポンポン撫でてやる。

「知ってるよ! 哉汰は俺が牛だから可愛がってくれるけど、他のお乳たくさん出る牛の方が可愛いんだろ! 俺なんてお乳もろくに出なければ、人間にもなれない中途半端な牛なんてどうでも良いんだ!」

 布団の中で怒鳴り散らしている牛五郎。
 こんなに卑屈な事を考えていたなんて。哉汰はちょっとショックである。
 俺はこんなに牛五郎を想っているのに伝わって無かったなんて!

「牛五郎が一番可愛いよ。どうでも良くない」
「皆にそう言っている癖に!」
「確かにそうなんだけど……」

 ウグツと、なる哉汰。
 確かに『君が一番だよ。可愛いね』なんて良く言う言葉だ。
 だけど、本当に牛五郎が一番可愛くて、一番大事なのに。
 困ったな。全く伝わらない。
 そもそもどうして他所にやるなんて思われているんだろうか。
 そこから謎である。

「牛五郎、ごめんね。上手に調教出来なくて。俺はただ牛五郎に健康で、ずっと俺の執事してて欲しいだけなんだよ。いや、違うか……」

 エッチな牛五郎ももっと見たいし、独占したい。
 セックスしたい。
 牛五郎を泣かせたい。牛五郎を笑わせたい。
 俺だけが見れる場所にずっと監禁しておきたい。
 
「牛五郎、あのね…… 俺……」

 牛五郎の事が愛しくて、酷い事にしたい。
 
 なんて、言えるわけないだろ!!!
 余計怖がられるわ!!

 グッと、押し黙る哉汰。

「やっぱり、違うんだ。俺なんて嫌いなんだーー」

 うわーーんと、余計に泣いてしまう牛五郎。

「違うよ! 牛五郎、大好きだよ!! 泣かないでー。ヨシヨシ。大好だよ。可愛い顔を見せて」 

 変な所で言い淀んでしまい、余計不安にさせたらしい。

「俺が可愛いわけないだろう!! 適当な事ばっかり言ってあしらうな!!」

 凄い怒っている。
 本当に可愛いんだけどなぁ。

 でも、取り敢えず、牛五郎は俺が大好きなんだな。
 解りづらいけど懐いてくれているんだ。
 その事が知れて嬉しい。

 ついニヤニヤしてしまう哉汰だった。

 牛五郎は俺に飽きられて捨てられるのが嫌なのか。
 そんな未来は絶対に来ないけどな。
 俺がお前を手放す訳ねぇだろが。
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