【完結】俺の可愛い牛

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 夜、牛五郎はこっそりと屋敷を抜け出す。
 夜学に行く為だ。
 牛らしい大きな耳と、小さめな角はフードで隠していた。
 牛五郎ぐらい人間よりになると、普通に人間として暮らしている牛も居る。
 別に隠さなくても良いのであるが、やはり偏見が強い。
 限りなく人間よりの牛でも生きづらい世の中である。
 割合によってもだが、牛は高価であり、お金持ちのペットだ。
 その為、産まれて来た子供が少しでも牛の要素が出たなら自分の子供だとしても国に愛玩牛税を払わなければならない。
 人間として生きる牛は殆ど金持ちのボンボンである。
 そして闘牛は別だが乳牛の血筋で有ればだいたいおだやかな性格だ。
 乳牛と見るや金蔓にされたり、レイプされかねない。
 闘牛は体格が大きく、巨大で、乳牛もそれなりに体は大きくなるが、見た目で判断出来てしまう。
 牛五郎のは闘牛の血も混ざっている為、それなりに体格も良いのだが、やはり乳牛にである。
 闘牛は色黒であるが、牛五郎は色白だった。
 やはり乳牛に見られるだろう。
 襲われたら返り討ちにしてやるぐらいの気持ちではいるが、自分の身を護る為にも、牛である部分は隠したかった。


 人間らしい服を着て、人間と一緒に勉強する。

 この時間が牛五郎は大好きである。

「おや、五郎。こんばんは」
「こんばんは」

 牛五郎の隣に座るのは、牛仲間である牛人(うしひと)だ。
 牛人と牛五郎とは幼なじみである。
 まさかこの夜学で再会するとは思っても見なかったが。
 牛人もまた頭が良く、牛五郎とは施設で一緒に勉強をした仲である。

「貴方はまだ人間に憧れているのですか? 可哀想に。早く牛の歓に目覚めなさい」

 そう牛人は言う。
 学科でも主席だった牛人は、きっと人間としても優秀だろう。
 寧ろ人間より優秀かもしれない。
 それなのに何故か人間の主人に手綱を握らせ。主人に忠誠を誓っているのだ。
 牛人は牛五郎とは違い、主人の為にと此処へ勉強しに来ている。
 人間の事を理解し、もっと良く知りたいのだ。主人の為に。
 牛五郎から見ても変わり者だった。
 牛である事も隠さず。
 大きな耳には主人に死ぬまで仕えると約束した印のピアスが付けられている。
 それを見れば、彼がどんなに魅力的な牛だとしても、他の人は許可なく触れる事は出来ない。
 死ぬまで一人の人に仕えると誓った牛に、主の許可も無く手を出すのは違法である。
 牛の血が強い者は皆が憧れるピアスだ。 
 永遠を誓う印は体にも刻まれる。
 彼の肩には、彼が仕える家の家紋を焼印されている筈だ。
 体に焼印を押される等、牛五郎は考えただけで身の毛がよだつ。
 こんな優秀で人間にも勝るとも劣らない様な人が、なぜ牛としてその身を捧げる事が幸せだと思うのだろう。
 牛五郎には理解出来なかった。
 理解したくも無かった。

「俺はお前の様にはならない」

 そう、かつての親友を睨む。
 少なからず憧れていて彼。
 そんな牛人が人間のせいで翼をもがれ、それが幸せだと思わされている事に腹が立つ。
 自分が執事をやめて人間になれたら、きっとコイツの目覚める。
 俺はその為に人間にならなければ。
 そう強く思う牛五郎だった。
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