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71話
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今日は、年越しであった。
雪も深まり、積雪は城の屋根より高くなった。
もう城に缶詰状態でいるしか無い状態である。
陽の光もあまり入らず、日中でも薄暗い日が続いた。
千代はそれでも気丈に振る舞っている。
いつまでも落ち込んでいちゃ駄目だと、自分を奮い立たせている様で、健気であった。
そんな千代を伊吹はいつも以上に甘やかしていた。
城に残った者たちで年末の大掃除をして、年越し蕎麦を食べる。
今年も色々有ったね。なんて話して、酒も入れば皆陽気になった。
千代も普段は呑まない酒を呑んで、酔が回った様子だ。
そんな千代を伊吹が心配し、「もう止めなさい」と、徳利を取り上げる。
「今日は無礼講ですよね」
「千代はいつも無礼講でしょう」
フフっと楽しそうに言う千代に、フフっと笑う春岳。
千代は伊吹に言っているのに、茶々を入れる春岳にムッとした様子だ。
「ああ、無礼講だ。なんだ? 何か俺に頼みが有るのか?」
ん? と、笑いながら話を聞く伊吹。
千代の願いなら何でも叶えてやりたい。
「……いつかの続きをして欲しいのです」
そう言って千代は照れた顔を見せた。
「いつかの?」
直ぐ判断出来ずに聞き返す伊吹。
いつかと言って、千代との付き合いは先代の殿より続いているので、どの話なのか検討が付かなかった。
「なっ、駄目です! 何言ってるんですか!!」
しかし、春岳は直ぐ何の話か理解し、間に割って入った。
伊吹はキョトンとして春岳を見る。
「伊吹は俺の! お前は城主の男を寝取る気ですか! 全くとんでも無いな!」
春岳は激怒していた。
千代を怒鳴る。
「だって! あの時、殿と有理のせいで台無しにされたんですよ! ずっと私は根に持ってますからね!」
千代もムッとして、食って掛かった。
やはり酔いが回っている様だ。
「おい、この無礼者を摘み出せ!」
「無礼講だって伊吹様が言いました!」
「無礼講にも程が有るんだよ馬鹿者がぁ!!」
今にも取っ組み合いの喧嘩をしだしそうである。
伊吹もハッとして、慌てて止めに入る。
「落ち着こう、皆が見てるから」
そう言って見るが、皆酒の席で陽気になり、裸踊り等していて、誰も此方を気にした様子は無かった。
「じゃあハッキリさせましょう。伊吹。抱くなら俺と千代どっちが良い。どっちが興奮する?」
「え?」
急に何の話なのだと驚く伊吹。
話し付いていけない。
「抱くなら私に決まってます。私の方が抱き心地良いですよ。だって殿、筋肉ゴツゴツしてるし」
千代は春岳に言い返し、伊吹の腕を掴む。
「はぁ? 俺の胸筋見てみろよ、なかなかの巨乳だぞ。伊吹には負けるけどな」
「私はお尻が自慢です。桃尻です!」
言い合う二人は見せ付けようと、今にも脱ぎだしそうな勢いだ。
「脱がない! 脱がない! 脱がない!
!」
必死に脱ぐのを阻止する伊吹。
千代が酔っているのには気づいていたが、思いの外春岳も酔っている。
このまま此処に居たらとんでも無い事に成りかねないと思い、伊吹は二人を連れ出すと、取り敢えず自分の部屋に連れ込んだ。
布団を敷いて二人を座らせる。
そのうち寝てくれるだろう。
そう安易に思ったのが間違いだった。
雪も深まり、積雪は城の屋根より高くなった。
もう城に缶詰状態でいるしか無い状態である。
陽の光もあまり入らず、日中でも薄暗い日が続いた。
千代はそれでも気丈に振る舞っている。
いつまでも落ち込んでいちゃ駄目だと、自分を奮い立たせている様で、健気であった。
そんな千代を伊吹はいつも以上に甘やかしていた。
城に残った者たちで年末の大掃除をして、年越し蕎麦を食べる。
今年も色々有ったね。なんて話して、酒も入れば皆陽気になった。
千代も普段は呑まない酒を呑んで、酔が回った様子だ。
そんな千代を伊吹が心配し、「もう止めなさい」と、徳利を取り上げる。
「今日は無礼講ですよね」
「千代はいつも無礼講でしょう」
フフっと楽しそうに言う千代に、フフっと笑う春岳。
千代は伊吹に言っているのに、茶々を入れる春岳にムッとした様子だ。
「ああ、無礼講だ。なんだ? 何か俺に頼みが有るのか?」
ん? と、笑いながら話を聞く伊吹。
千代の願いなら何でも叶えてやりたい。
「……いつかの続きをして欲しいのです」
そう言って千代は照れた顔を見せた。
「いつかの?」
直ぐ判断出来ずに聞き返す伊吹。
いつかと言って、千代との付き合いは先代の殿より続いているので、どの話なのか検討が付かなかった。
「なっ、駄目です! 何言ってるんですか!!」
しかし、春岳は直ぐ何の話か理解し、間に割って入った。
伊吹はキョトンとして春岳を見る。
「伊吹は俺の! お前は城主の男を寝取る気ですか! 全くとんでも無いな!」
春岳は激怒していた。
千代を怒鳴る。
「だって! あの時、殿と有理のせいで台無しにされたんですよ! ずっと私は根に持ってますからね!」
千代もムッとして、食って掛かった。
やはり酔いが回っている様だ。
「おい、この無礼者を摘み出せ!」
「無礼講だって伊吹様が言いました!」
「無礼講にも程が有るんだよ馬鹿者がぁ!!」
今にも取っ組み合いの喧嘩をしだしそうである。
伊吹もハッとして、慌てて止めに入る。
「落ち着こう、皆が見てるから」
そう言って見るが、皆酒の席で陽気になり、裸踊り等していて、誰も此方を気にした様子は無かった。
「じゃあハッキリさせましょう。伊吹。抱くなら俺と千代どっちが良い。どっちが興奮する?」
「え?」
急に何の話なのだと驚く伊吹。
話し付いていけない。
「抱くなら私に決まってます。私の方が抱き心地良いですよ。だって殿、筋肉ゴツゴツしてるし」
千代は春岳に言い返し、伊吹の腕を掴む。
「はぁ? 俺の胸筋見てみろよ、なかなかの巨乳だぞ。伊吹には負けるけどな」
「私はお尻が自慢です。桃尻です!」
言い合う二人は見せ付けようと、今にも脱ぎだしそうな勢いだ。
「脱がない! 脱がない! 脱がない!
!」
必死に脱ぐのを阻止する伊吹。
千代が酔っているのには気づいていたが、思いの外春岳も酔っている。
このまま此処に居たらとんでも無い事に成りかねないと思い、伊吹は二人を連れ出すと、取り敢えず自分の部屋に連れ込んだ。
布団を敷いて二人を座らせる。
そのうち寝てくれるだろう。
そう安易に思ったのが間違いだった。
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