68 / 79
67話
しおりを挟む
「うあああ! うあああ!」
三人がかりで大男をお風呂に入れる。
と言っても、紅葉の家のお風呂はお湯を温めて身体を拭く程度のもの。
なかなか洗いずらい。
そして大男は嫌がって暴れている。
「どうもこれは肌の色らしいな」
肌が黒いので汚れだと思ったのだが、洗っても落ちなかった。
これは地の色の様である。
髪も梳かすがサラサラになる事はなく、うねっていた。
「ふむ、少し散髪しよう」
あまりに髪がボサボサで前髪が目にかかっている。
やはりこのままでは不衛生であると考え、春岳は短刀で器用に髪を切ってやる。
「ぎゃあああ、コワイ、コワイ」
いきなり短刀を出され、髪を切られたらそりゃあ怖いだろう。
春岳は大男が暴れない様にしっかり押さえながら髪を切ってやった。
紅葉が「大丈夫だ。落ち着け」と、宥め、何とか落ち着かせる。
「よし、良いぞ。おお、瞳の色が青だ」
髪を切り終えて確かめて見ると、随分と綺麗な瞳の色をしていた。
「本当だ。綺麗ですね」
伊吹もマジマジと見てしまう。
大男は恥ずかしいのか顔を隠してしまった。
「どうも異国の人間の様だな」
「異国ですか?」
「海の向こうから来たのだろう」
「海の向こう?」
海の向こうにも国が有るのは知っていたが、こんなに見た目が変わるのだなぁと、伊吹はじーっと見つめてしまう。
「キモチワルイ? モミジもオレ、キライ?」
異国の彼は怯えている様子だ。
「え? 気持悪くない。凄く綺麗で見とれちゃった」
紅葉も全然気づいていなかったが、そうか異国の人間だったのか。
「名前は何と言うんだ?」
「何度か聞いたんだけど、聞き取れなくて……」
仕方ないならオイとかオマエとか、呼んでいた紅葉だ。
「オレ、ルディ」
「るでい?」
「ルディ」
「るでー?」
「ルディ」
「瑠璃?」
確かによく解らない。
誰も上手く聞き取れてない気がする。
「瑠璃で良いんじゃない? 瞳の色も瑠璃色だし。瑠璃で良い?」
紅葉が確かめる。
確かに瞳の色も瑠璃色で丁度良いと春岳も伊吹も思った。
コクコクと彼も頷いたので、彼は瑠璃と言う事になった。
「えっと、瑠璃はどうして此処に来たんだ?」
春岳は瑠璃の体調を確かめつつ、確認する。
「フネ、アラシ、オチタ」
「船が嵐に巻き込まれて海に落ちちゃったんだな」
「ココ、コワイ、ミンナ、オレ、イジメル。オレ、ニゲタ。モミジ、ヒロッタ」
「そうか、逃げて来たんだな」
どうやら酷い目にあったらしい。
身体中傷だらけだ。
身体を洗うのを嫌がったのは、傷が痛かったのだろう。
「取り敢えず、化膿止めと、消毒を塗っておく」
「イタイ、オレ、キライ?」
「治したいから塗ってる。我慢してくれ」
イタイ、イタイと涙目になる瑠璃は可哀想だが、悪化したら大変だ。
「大丈夫。俺は瑠璃の事好きだよ」
「オレもモミジ、スキ」
安心させようと瑠璃の頭をヨシヨシなでる紅葉。
瑠璃はギュッと紅葉の手を掴んでいた。
「よし、これで大丈夫だろう。傷口を綺麗保って、これを毎日塗って下さい」
春岳は紅葉に傷薬を渡す。
「有難うございます。助かりました」
紅葉は春岳に頭を下げ、瑠璃のに良く頑張ったねと、頭を撫でてあげている。
瑠璃も嬉しそうだ。
心なしか大きく振っている尻尾が見える気がした。
「そろそろ帰りましょう。流石に怒られます」
主に伊吹が千代にだ。
「ああ、そうだな」
春岳も頷く。
「またゆっくり遊びにきてくれよな!」
「スキ!」
玄関を出ると手を振る紅葉と、幻だが尻尾を振る瑠璃が見送ってくれた。
すっかり真っ暗になってしまっていたが、今日は満月。
月明かりが道を照らしてくれる。
「星が綺麗ですね。天の川も見えますよ」
「ああ、まぁ、一番綺麗なのは伊吹だけどな」
「春岳様ですよ」
そんな事を言い合いながら帰路につくのだった。
三人がかりで大男をお風呂に入れる。
と言っても、紅葉の家のお風呂はお湯を温めて身体を拭く程度のもの。
なかなか洗いずらい。
そして大男は嫌がって暴れている。
「どうもこれは肌の色らしいな」
肌が黒いので汚れだと思ったのだが、洗っても落ちなかった。
これは地の色の様である。
髪も梳かすがサラサラになる事はなく、うねっていた。
「ふむ、少し散髪しよう」
あまりに髪がボサボサで前髪が目にかかっている。
やはりこのままでは不衛生であると考え、春岳は短刀で器用に髪を切ってやる。
「ぎゃあああ、コワイ、コワイ」
いきなり短刀を出され、髪を切られたらそりゃあ怖いだろう。
春岳は大男が暴れない様にしっかり押さえながら髪を切ってやった。
紅葉が「大丈夫だ。落ち着け」と、宥め、何とか落ち着かせる。
「よし、良いぞ。おお、瞳の色が青だ」
髪を切り終えて確かめて見ると、随分と綺麗な瞳の色をしていた。
「本当だ。綺麗ですね」
伊吹もマジマジと見てしまう。
大男は恥ずかしいのか顔を隠してしまった。
「どうも異国の人間の様だな」
「異国ですか?」
「海の向こうから来たのだろう」
「海の向こう?」
海の向こうにも国が有るのは知っていたが、こんなに見た目が変わるのだなぁと、伊吹はじーっと見つめてしまう。
「キモチワルイ? モミジもオレ、キライ?」
異国の彼は怯えている様子だ。
「え? 気持悪くない。凄く綺麗で見とれちゃった」
紅葉も全然気づいていなかったが、そうか異国の人間だったのか。
「名前は何と言うんだ?」
「何度か聞いたんだけど、聞き取れなくて……」
仕方ないならオイとかオマエとか、呼んでいた紅葉だ。
「オレ、ルディ」
「るでい?」
「ルディ」
「るでー?」
「ルディ」
「瑠璃?」
確かによく解らない。
誰も上手く聞き取れてない気がする。
「瑠璃で良いんじゃない? 瞳の色も瑠璃色だし。瑠璃で良い?」
紅葉が確かめる。
確かに瞳の色も瑠璃色で丁度良いと春岳も伊吹も思った。
コクコクと彼も頷いたので、彼は瑠璃と言う事になった。
「えっと、瑠璃はどうして此処に来たんだ?」
春岳は瑠璃の体調を確かめつつ、確認する。
「フネ、アラシ、オチタ」
「船が嵐に巻き込まれて海に落ちちゃったんだな」
「ココ、コワイ、ミンナ、オレ、イジメル。オレ、ニゲタ。モミジ、ヒロッタ」
「そうか、逃げて来たんだな」
どうやら酷い目にあったらしい。
身体中傷だらけだ。
身体を洗うのを嫌がったのは、傷が痛かったのだろう。
「取り敢えず、化膿止めと、消毒を塗っておく」
「イタイ、オレ、キライ?」
「治したいから塗ってる。我慢してくれ」
イタイ、イタイと涙目になる瑠璃は可哀想だが、悪化したら大変だ。
「大丈夫。俺は瑠璃の事好きだよ」
「オレもモミジ、スキ」
安心させようと瑠璃の頭をヨシヨシなでる紅葉。
瑠璃はギュッと紅葉の手を掴んでいた。
「よし、これで大丈夫だろう。傷口を綺麗保って、これを毎日塗って下さい」
春岳は紅葉に傷薬を渡す。
「有難うございます。助かりました」
紅葉は春岳に頭を下げ、瑠璃のに良く頑張ったねと、頭を撫でてあげている。
瑠璃も嬉しそうだ。
心なしか大きく振っている尻尾が見える気がした。
「そろそろ帰りましょう。流石に怒られます」
主に伊吹が千代にだ。
「ああ、そうだな」
春岳も頷く。
「またゆっくり遊びにきてくれよな!」
「スキ!」
玄関を出ると手を振る紅葉と、幻だが尻尾を振る瑠璃が見送ってくれた。
すっかり真っ暗になってしまっていたが、今日は満月。
月明かりが道を照らしてくれる。
「星が綺麗ですね。天の川も見えますよ」
「ああ、まぁ、一番綺麗なのは伊吹だけどな」
「春岳様ですよ」
そんな事を言い合いながら帰路につくのだった。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。
ようよう白くなりゆく
たかせまこと
BL
大学時代からつきあっていた相手に、実は二股かけられていた。
失恋して心機一転を図ったおれ――生方 郁――が、出会った人たちと絆を結んでいく話。
別サイトにも掲載しています。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。


ヤバい薬、飲んじゃいました。
はちのす
BL
変な薬を飲んだら、皆が俺に惚れてしまった?!迫る無数の手を回避しながら元に戻るまで奮闘する話********イケメン(複数)×平凡※性描写は予告なく入ります。
作者の頭がおかしい短編です。IQを2にしてお読み下さい。
※色々すっ飛ばしてイチャイチャさせたかったが為の産物です。


【完結】ホットココアと笑顔と……異世界転移?
鱒
BL
裏社会で生きている本条翠の安らげる場所は路地裏の喫茶店、そこのホットココアと店主の笑顔だった。
だが店主には裏の顔が有り、実は異世界の元魔王だった。
魔王を追いかけて来た勇者に巻き込まれる形で異世界へと飛ばされてしまった翠は魔王と一緒に暮らすことになる。
みたいな話し。
孤独な魔王×孤独な人間
サブCPに人間の王×吸血鬼の従者
11/18.完結しました。
今後、番外編等考えてみようと思います。
こんな話が読みたい等有りましたら参考までに教えて頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる