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65話
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結局、いつも通り千摺りと兜あわせで抜き、その後はもう一度温泉を楽しみ、身体が芯から温まった所で、服を着た。
本当は木に手をつかせた時、素股を要求しようと思ったのだが、やはりもう少し慎重に行った方が良いだろう。
伊吹は可愛いし、接吻を強請ってくるし、魔羅も反応している。
だから嫌がってはいないと思う。
俺に情がわいている。
そうは思うのだが……
やはり何だかんだ言っても、自分は城の主。
そして、伊吹は俺の家来だ。
どんなに嫌で我慢ならない事でも頷き、実行するのが家来である。
俺が好きだと言えば、伊吹は断れないし、頷くしか無いのだ。
だから本心で言っているのか解らない。
本当は嫌々なのかもしれない。
そんな事を考えて春岳は不安になった。
もう少し、伊吹の様子を伺いつつ、慎重に進めよう。
自分には伊吹が必要だ。
大事で可愛くて、手放せない存在なのだ。
身体が目当てな訳では決してない。
だが伊吹相手では、どうしても理性を保てず、本能に負けてしまうのだ。
どうにかしなければな。
本当に理性が本能に負ける事なんて皆無であった春岳は、いまだに混乱してしまう。
初恋は実らないとか、里の姐さんが言ってたっけ。
実らないと困る。何が何でも実らせたい。
ああ、こういう強引な考え方がいけないんだよな。
解ってるんだ。
解ってるんだけどな……
「殿、不機嫌ですか?」
ずっと静かに歩いていてる春岳に、伊吹はどうしたのだろうと不安になり、声をかけた。
「あ、すみません。考え事をしてました。どの道を行こうかなぁって……」
まぁ、行く道は決めて有るんだけど。
せっかく温泉につかって身体を綺麗にしたのに獣道や、険しい道は行きたくない。
普通に沢沿いに歩いて帰ろう。
途中に崖は有るが、登るのに難易度は高く無い。
ただ、その道をは遠回りな上に途中、山賊がねぐらにしていると噂の道に出てしまう。
面倒で今まで通った事は無い道だが、まぁ、出たら出たらで一掃してしまえば良いのだけど。
「あ…… 雨……」
「え? 雨?」
晴れている様に見えるが。
伊吹は何か気になる様だ。
「そんな匂いがします。山の天気は変わりやすいので…… 何処か雨を凌げる場所は有りますか?」
「そうですね。この先に狭いですが洞窟が有ります」
「あと5分程で降り出すかと」
「それは急がないと」
春岳は伊吹を抱き上げると、素早く跳ねる様に走り抜ける。
伊吹はビックリしてしまった。
自分のペースに合わせて歩いてくれていたのだろう。
面倒くさく無かっただろうか。
トロくてイライラさせたかも知れない。
それでさっき不機嫌そうだったのか……
伊吹は思わず溜息が漏れてしまうのだった。
春岳が急いで足を走らせたお陰で、雨が降り出す前に洞窟に入る事が出来た。
ただ洞窟と言っても少し窪んでるだけの穴でしかなく、二人で入るのがやっとである。
「本当に急に薄暗くなりましたね」
今にも雨が降り出しそうだ。
伊吹は空気の流れに敏感なのだろうか。
長く降るような雨が近づけば春岳にも解るので、おそらくは通り雨であろう。
秋にはよく有る雨だ。
「間に合って良かったです。足が遅くて申し訳ありません」
伊吹は苦笑してしまう。
さっきも溜息をついてた。
なんだか元気が無くなってしまった様だ。
遠出で疲れただろうか。
それとも俺と居ることに疲れた?
「私は伊吹と二人で歩くの楽しかったですよ。伊吹は疲れちゃいました?」
「ちょっと……」
伊吹は洞窟の壁に背中を預けた。
「眠くなっちゃったかもしれません」
そうウトウトしている。
温泉が気持ちよかったのか、さっき抜いたからか。
どうやらお眠だったらしい。
「気づかなくてごめんな。寝るなら俺の肩で寝て」
そんなゴツゴツした岩よりは良いはずだ。
春岳は伊吹を抱き寄せる。
「殿にもたれかかって寝るなんてそんな不躾な事は……」
「恋人の肩にもたれ掛かる事の何が不躾なんですか。ほら、寝なさい」
ヨシヨシと頭を撫でる。
そのうちにザーと雨が降り出した。
雨音を聞いているうちに伊吹はスースーと寝息をたてはじめる。
可愛い寝顔だ。
こんな無防備な伊吹の寝顔を見れるのも自分だけな筈だと思うと、胸が熱くなる。
本当に幸せだなと思えた。
幸せなんて感じた事無かったのに。
いや……
昔し有った気がする。
何だったっけ。
こんな事が有った様な気がする。
何で思い出せないんだろう……
春岳は何だか解らないが、酷く歯がゆい気持ちになる。
何だが喉に刺さった小骨が取れない様な。そんな感じがするのだ。
本当は木に手をつかせた時、素股を要求しようと思ったのだが、やはりもう少し慎重に行った方が良いだろう。
伊吹は可愛いし、接吻を強請ってくるし、魔羅も反応している。
だから嫌がってはいないと思う。
俺に情がわいている。
そうは思うのだが……
やはり何だかんだ言っても、自分は城の主。
そして、伊吹は俺の家来だ。
どんなに嫌で我慢ならない事でも頷き、実行するのが家来である。
俺が好きだと言えば、伊吹は断れないし、頷くしか無いのだ。
だから本心で言っているのか解らない。
本当は嫌々なのかもしれない。
そんな事を考えて春岳は不安になった。
もう少し、伊吹の様子を伺いつつ、慎重に進めよう。
自分には伊吹が必要だ。
大事で可愛くて、手放せない存在なのだ。
身体が目当てな訳では決してない。
だが伊吹相手では、どうしても理性を保てず、本能に負けてしまうのだ。
どうにかしなければな。
本当に理性が本能に負ける事なんて皆無であった春岳は、いまだに混乱してしまう。
初恋は実らないとか、里の姐さんが言ってたっけ。
実らないと困る。何が何でも実らせたい。
ああ、こういう強引な考え方がいけないんだよな。
解ってるんだ。
解ってるんだけどな……
「殿、不機嫌ですか?」
ずっと静かに歩いていてる春岳に、伊吹はどうしたのだろうと不安になり、声をかけた。
「あ、すみません。考え事をしてました。どの道を行こうかなぁって……」
まぁ、行く道は決めて有るんだけど。
せっかく温泉につかって身体を綺麗にしたのに獣道や、険しい道は行きたくない。
普通に沢沿いに歩いて帰ろう。
途中に崖は有るが、登るのに難易度は高く無い。
ただ、その道をは遠回りな上に途中、山賊がねぐらにしていると噂の道に出てしまう。
面倒で今まで通った事は無い道だが、まぁ、出たら出たらで一掃してしまえば良いのだけど。
「あ…… 雨……」
「え? 雨?」
晴れている様に見えるが。
伊吹は何か気になる様だ。
「そんな匂いがします。山の天気は変わりやすいので…… 何処か雨を凌げる場所は有りますか?」
「そうですね。この先に狭いですが洞窟が有ります」
「あと5分程で降り出すかと」
「それは急がないと」
春岳は伊吹を抱き上げると、素早く跳ねる様に走り抜ける。
伊吹はビックリしてしまった。
自分のペースに合わせて歩いてくれていたのだろう。
面倒くさく無かっただろうか。
トロくてイライラさせたかも知れない。
それでさっき不機嫌そうだったのか……
伊吹は思わず溜息が漏れてしまうのだった。
春岳が急いで足を走らせたお陰で、雨が降り出す前に洞窟に入る事が出来た。
ただ洞窟と言っても少し窪んでるだけの穴でしかなく、二人で入るのがやっとである。
「本当に急に薄暗くなりましたね」
今にも雨が降り出しそうだ。
伊吹は空気の流れに敏感なのだろうか。
長く降るような雨が近づけば春岳にも解るので、おそらくは通り雨であろう。
秋にはよく有る雨だ。
「間に合って良かったです。足が遅くて申し訳ありません」
伊吹は苦笑してしまう。
さっきも溜息をついてた。
なんだか元気が無くなってしまった様だ。
遠出で疲れただろうか。
それとも俺と居ることに疲れた?
「私は伊吹と二人で歩くの楽しかったですよ。伊吹は疲れちゃいました?」
「ちょっと……」
伊吹は洞窟の壁に背中を預けた。
「眠くなっちゃったかもしれません」
そうウトウトしている。
温泉が気持ちよかったのか、さっき抜いたからか。
どうやらお眠だったらしい。
「気づかなくてごめんな。寝るなら俺の肩で寝て」
そんなゴツゴツした岩よりは良いはずだ。
春岳は伊吹を抱き寄せる。
「殿にもたれかかって寝るなんてそんな不躾な事は……」
「恋人の肩にもたれ掛かる事の何が不躾なんですか。ほら、寝なさい」
ヨシヨシと頭を撫でる。
そのうちにザーと雨が降り出した。
雨音を聞いているうちに伊吹はスースーと寝息をたてはじめる。
可愛い寝顔だ。
こんな無防備な伊吹の寝顔を見れるのも自分だけな筈だと思うと、胸が熱くなる。
本当に幸せだなと思えた。
幸せなんて感じた事無かったのに。
いや……
昔し有った気がする。
何だったっけ。
こんな事が有った様な気がする。
何で思い出せないんだろう……
春岳は何だか解らないが、酷く歯がゆい気持ちになる。
何だが喉に刺さった小骨が取れない様な。そんな感じがするのだ。
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