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57話 ※春岳と伊吹の兜あわせ

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 追い詰められ、怯える表情を見せる伊吹。

「殿、怖いです。あんなの出来ない」

 肩を掴むと、ブルブル震えてしまう。

 困ったな。主に有理のせいで伊吹が性行為にトラウマを持ってしまった。

「大丈夫ですよ。伊吹が怖いなら菊座を欲がったりしません。また魔羅を擦り合わせましょうね」

 今は、まだそれだけで我慢してあげる。

「でも、先ずは私の恋人に優しい接吻をしましょうか」

 そう言う春岳は、伊吹の唇に触れるだけの優しい接吻する。
 
 目も閉じずにいた伊吹だが、何をされたのか解らないと言う表情である。

「コイビト?」

 伊吹はカタコトだ。

「そう。恋人ですよ。伊吹は俺の恋人です解りましたか?」
「いえ、私は殿の乳兄弟で、側付きのお世話係のです」
「うん、そうですね。その肩書に書き加えて下さい。私の恋人さんです」
「恋人?」

 伊吹はまた首を傾げてしまう。
 キョトンとしているその顔は可愛いな。

「もしかして、恋人の意味が解りませんかね。私が想いを寄せる相手と言う意味ですね。出来れば恋人同士になりたいのですが、伊吹の気持ちを強要する事は出来ませんので……」
「えっと、よく解らないのですが。俺も殿を好きだから。恋人同士って事になりますか?」
「そうだね。じゃあ恋人同士だね」

 絶対わかってないよな伊吹。

「そうなんですか。恋人同士です」
「うん、じゃあ兜あわせしようね」
  
 なんか、無垢な子供を騙しちゃったみたいだ。
 まぁ、良い。
 騙されてくれ。

「はい、殿と兜あわせします」

 やっと、ホッとした表情を見せる伊吹。
 本当は、ホッと出来る状況でも無いのだが……

 伊吹、ちょろすぎる。

「俺の亀頭と、伊吹の亀頭がチュウチュウしているな。俺たちもチュウチュウしよう」
「ンン、ふぁ、殿……」

 自分と接吻し、亀頭を擦り合わせて気持ちよさそうな顔をする伊吹に満足する春岳。

 いつもの通り、兜あわせで春岳と伊吹は同時に気をやり、ポヤポヤした表情になった伊吹は疲れが出たのか、直ぐに寝てしまった。

 伊吹は本当に気をやりると直ぐに寝てしまうな。

 そんな伊吹を微笑ましく見てしまう春岳だ。

 なんだか狡をした気はする。
 伊吹は良く解っていないにしろ、恋人同士だと受け入れてくれた訳だし、もう俺は伊吹と恋人同士だ。
 伊吹が認めてくれたのだから間違いなくそうだろう。

 俺たち恋人同士だもんな。

 眠ってしまった伊吹の額に口付けすると、布団を直して一緒に寝ることにした。

 朝起きて夢だとに思われると困るからな。

 少し強引にしてしまったが、俺は伊吹を手に入れたのだ。

 それなのに、何故か胸はモヤモヤし、不安感が押し寄せる。
 これで良かったのだろうか?

 春岳の頭では天使と悪魔がバトルをはじめていた。

 多分、悪魔が軍配を上げるだろう。
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