【完結】忍びである城主は乳兄弟にゾッコン

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46話

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 一方、春岳はと言うと、自分の預かり知らぬ所で伊吹と千代と有理の三人で初めてから乱交しようなどとブッ飛んだ話をしてるとは露にも思わず、一人で薬草つみに出かけていた。

 秋にもセンブリや柿、ドクダミ等、色々な薬草が摘める。
 紅葉も楽しめ、春岳はルンルン気分で散策を楽しんでいた。 

 一応、田方城の持ち山で有っても、広い山なので、手つかずで人が踏み入った事の無い場所は多い。
 伊吹には立ち入ってはいけないと注意はされているが、好奇心旺盛である春岳が言う事を聞く訳がなく、未開の土地散策するのが日課になってしまった。


 そろそろ初雪の頃である。

 冬は何処の城でも忙しいので、客人は来ないし、田方城も雪囲いや冬の準備で忙しい。
 春岳の面倒を見るより適当に散歩でもしてもらった方が気が楽なのか、最近は「薬草積みに行ってきます」と、伝えれば、伊吹は着いて来ると言う訳でもなく「お気をつけて」と、見送ってくれるだけになった。
 言っても聞かない春岳にもう諦めていると言う方が正しいだろう。
 特に、この前の戦の時に活躍した事や、つい最近、山で熊に出くわしたが、素手で倒して持ち帰ったりしたので、伊吹も、もうコイツは化け物だなって思ってたりするのかもなぁ。
 なんて思う春岳だ。

 採れたての熊肉は美味しいから喜ぶと思ったのだが、熊肉は美味しく食べてくれたけど、結構引かれていた。

 熊肉なんて珍味なんたぞ!
 めったに食べられるものじゃないんだぞ!

 そう伊吹に聞いたら「私はやはり猪が良いですね」なんて苦笑されてしまった。

 猪ならいくらでも取ってやるけどな。


「あ、凄い!」

 春岳は立派な猿の腰掛けを見つけ、目を輝かせるのだった。





 春岳は薬草やら、キノコやら、たまたま見つけた猪を手土産に城に戻る。

 ちゃんと門限は守っているぞ。

「おかえりなさいませ殿。これまた大量ですね」

 フフっと笑う伊吹。

「はい、いっぱい取れました。この猪は伊吹へのお土産です。あとで鍋にして食べましょう」
「あ、有難うございます……」

 迂闊に猪が良いなんて言ってしまった事を、伊吹は後悔していた。
 嬉しいが、猪も好きだが、最近は散歩に出かける度に猪を捕まえて来ては手料理して下さる。
 薬味等をつけてくれて、本当に美味しいのだが、これでは何方が主で何方が家来なのか解ったものでは無い。
 殿が楽しそうにしているので、良いのだけど……

「湯浴みなさいますか?」
「そうですね。これを台所に置いてきます」
「はい、私はお着替えの準備をしておきます」

 伊吹はそう言うと、春岳の着替え取りに向かう。
 以前までは荷物も私が私がと言っていたが、最近では分担を受け入れてくれる伊吹。
 こっちの方が春岳としても気が楽なので有難たい。
 だけどちょっと構ってくれる回数が減って寂しかったりする。
 自分でも我儘だよなとは思うものの、自分を構わない分、千代や有理を構ってしまうのも嫌なのだ。


 台所に行くと、千代と有理が夕餉の支度をしていた。
 最近は朝も昼も夜も千代と有理で作っている様子だ。

「殿、おかえりなさいませ。これはまた立派な猪とキノコですね」
 
 千代が此方に気付いて寄ってくる。
 有理は頭を下げるだけで留めた。
 千代は慣れた様子だが、有理にはまだ怖がられているのだろう。
 此方としても、千代は伊吹のお気に入りでは有るが節度を持っているのでまだ可愛げがあると思えるが、有理は来たばかりだと言うのに伊吹に甘えまくりだし、伊吹もまた猫可愛がりしているので憎たらしく見える。

「後で鍋にしようと思います。ここに置いておいてください」
「はい、私も流石にこのままの猪をさばく事は出来ませんので殿にお任せします」
「ええ、頼みます。あ、そうだ自然薯を取ってきましたので、好き様に使って下さい」
「え!? 私達にですか? 有難うございます」

 まさか春岳が自分たちの為に自然薯を取ってきてくれるとは。
 ビックリする千代。
 頭を下げて受け取る。

 春岳はフフっと微笑んでからお風呂に向かうのだった。
 この時は割と機嫌が良かった春岳である。
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