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19話
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「それで、私は何をしたら良いんですか?」
小姓に尋ねる春岳。
小姓は一瞬、何の話だろうと思った様子であるが、直ぐに客人を饗す話であると気づく。
「先ずは湯浴みを」
小姓は伊吹が言っていた事を思い出しながら答えた。
「では湯殿へ…… 補佐は要りませんので貴方はただ側で私の様子を見ているだけで良いです」
「は、はい……」
無意識で有ろうが、春岳はぶっきら棒に言うため、小姓はビクビクしてしまう。
綺麗な顔も相まって無表情だと高圧的に見え、怖いのだ。
それでも、ちゃんと春岳を湯殿に連れていく小姓。
だが服も自分で脱ぐと言って手伝わせては貰えなかった。
これでは仕事してない様であるが、殿がそれで良いと言うのだから仕方ない。
小姓はそう自分に言い聞かせ、ただ見つめるだけにしておいた。
殿の機嫌を損ねたくはない。
それしにしても、まるで絹糸の様な綺麗な長い髪に、色白の肌、筋肉も中々良く付いている。
本当に色っぽい人だなぁ。
本人がここまで艶やかな美人だと、色小姓にも欲情出来ないのは仕方ないかもしれないなぁ。
なんて考えてしまう小姓である。
一応、濡れて良いように小姓も肌着になり、湯殿に入る春岳を戸口に立って見守る。
いくら戸口と言えどそんなに広い場所でもなく、春岳が体を洗えば水飛沫が多少は飛んでく来た。
気付けば小姓の服も所何処濡れ、薄い布は透けてしまっている。
なかなか色っぽい事になったいるのだが、春岳は全く見る事もなく、自分で体を清める。
湯浴みを済ませると、小姓には目もくれず颯爽と湯殿から出ていくのだった。
小姓は何だか空気の様に扱われ、自信が無くなってくる。
皆、可愛い可愛いといってくれたし、前の殿には可愛がって頂いたのに。
もしかして、社交辞令だったのか。
湯殿から上がった春岳は、着替えも自分で済ませてしまい、小姓は髪にも触らせてくれない。
小姓は困りつつも、自分も用意していた服に着替えた。
「それで、次は何をするんですか?」
きちっと身なりを整えた春岳は、小姓に指示を仰ぐ。
「では、遅くなりましたがお昼にしましょう。今井様がお作りになられたのは朝餉だったんですけどね」
冷えてしまったソレを、小姓はもう一度火にかけて温めておいた。
一応、先に食べて毒味も済ませて有る。
本当は殿が食べる直前にするものであるが、殿は毒の味が解るらしい。
そして毒味は嫌がる。
それでも一応は殿にお出しする前にいた。
だが、あまりない毒味の意味は無だろう。
「後で伊吹には謝っておきます……」
申し訳無さそうな顔をする春岳。
朝食を伊吹が作っているなんて知らなかったのだ。
知ってたら絶対に食べていたのに。
「その前に伊吹の食事も作らなければ、栄養満点のお粥を私が作ります」
春岳はそう言うと、台所の方へ足を進める。
「また冷えてしまうので、お願いしますからお昼を食べて下さい。今井様のお粥は私が作りますよ」
食事をするどころか食事を作ろうとしだす殿に、小姓は頭を抱えたくなる。
バレたら怒られるのは自分だ。
「悪いですけど、私、貴方を信用していません。伊吹の食事に毒を盛られては困りますからね」
春岳は冷たく言うと、止める小姓の声を聞かずにスタスタと台所へ向かってしまう。
小姓は春岳の言葉に顔を青ざめのさせた。
「そんな…… 私、今井様には良くして頂いています。毒を盛るなんて…… 殿がいらっしゃる前から私は今井様のお側に居たんですよ?」
今井様はとても良い方で、私達の様な下々にまで気を利かせ下さる。
今井様は家臣全員から慕われている。仏様の様な方だ。
こんな方に毒を盛るなんて。有り得ない事である。
疑われるだけでも恐れ多い。不名誉な事だった。
「それが何ですか?」
春岳の視線は冷たかった。
「あぁ、気を悪くしないで下さいね。私は貴方だけではなく誰も信じません。そう育てられました。性分なんですよ」
春岳はそう続け、フッと乾いた笑い浮かべるのだった。
そして、台所に入っていってしまう。
小姓は仕方なく付いていくしかなかった。
春岳の欲しがる素材や食材がある所を指差しで説明する小姓。
小姓が手伝おうとすると嫌がるので、少し距離を置いて見守るしか無かった。
これは本当に気難し過ぎる方だ。
今井様が倒れられるのも仕方ない事である。
ああ、私も倒れそうですよ。
小姓は小さく溜息を吐くのだった。
小姓に尋ねる春岳。
小姓は一瞬、何の話だろうと思った様子であるが、直ぐに客人を饗す話であると気づく。
「先ずは湯浴みを」
小姓は伊吹が言っていた事を思い出しながら答えた。
「では湯殿へ…… 補佐は要りませんので貴方はただ側で私の様子を見ているだけで良いです」
「は、はい……」
無意識で有ろうが、春岳はぶっきら棒に言うため、小姓はビクビクしてしまう。
綺麗な顔も相まって無表情だと高圧的に見え、怖いのだ。
それでも、ちゃんと春岳を湯殿に連れていく小姓。
だが服も自分で脱ぐと言って手伝わせては貰えなかった。
これでは仕事してない様であるが、殿がそれで良いと言うのだから仕方ない。
小姓はそう自分に言い聞かせ、ただ見つめるだけにしておいた。
殿の機嫌を損ねたくはない。
それしにしても、まるで絹糸の様な綺麗な長い髪に、色白の肌、筋肉も中々良く付いている。
本当に色っぽい人だなぁ。
本人がここまで艶やかな美人だと、色小姓にも欲情出来ないのは仕方ないかもしれないなぁ。
なんて考えてしまう小姓である。
一応、濡れて良いように小姓も肌着になり、湯殿に入る春岳を戸口に立って見守る。
いくら戸口と言えどそんなに広い場所でもなく、春岳が体を洗えば水飛沫が多少は飛んでく来た。
気付けば小姓の服も所何処濡れ、薄い布は透けてしまっている。
なかなか色っぽい事になったいるのだが、春岳は全く見る事もなく、自分で体を清める。
湯浴みを済ませると、小姓には目もくれず颯爽と湯殿から出ていくのだった。
小姓は何だか空気の様に扱われ、自信が無くなってくる。
皆、可愛い可愛いといってくれたし、前の殿には可愛がって頂いたのに。
もしかして、社交辞令だったのか。
湯殿から上がった春岳は、着替えも自分で済ませてしまい、小姓は髪にも触らせてくれない。
小姓は困りつつも、自分も用意していた服に着替えた。
「それで、次は何をするんですか?」
きちっと身なりを整えた春岳は、小姓に指示を仰ぐ。
「では、遅くなりましたがお昼にしましょう。今井様がお作りになられたのは朝餉だったんですけどね」
冷えてしまったソレを、小姓はもう一度火にかけて温めておいた。
一応、先に食べて毒味も済ませて有る。
本当は殿が食べる直前にするものであるが、殿は毒の味が解るらしい。
そして毒味は嫌がる。
それでも一応は殿にお出しする前にいた。
だが、あまりない毒味の意味は無だろう。
「後で伊吹には謝っておきます……」
申し訳無さそうな顔をする春岳。
朝食を伊吹が作っているなんて知らなかったのだ。
知ってたら絶対に食べていたのに。
「その前に伊吹の食事も作らなければ、栄養満点のお粥を私が作ります」
春岳はそう言うと、台所の方へ足を進める。
「また冷えてしまうので、お願いしますからお昼を食べて下さい。今井様のお粥は私が作りますよ」
食事をするどころか食事を作ろうとしだす殿に、小姓は頭を抱えたくなる。
バレたら怒られるのは自分だ。
「悪いですけど、私、貴方を信用していません。伊吹の食事に毒を盛られては困りますからね」
春岳は冷たく言うと、止める小姓の声を聞かずにスタスタと台所へ向かってしまう。
小姓は春岳の言葉に顔を青ざめのさせた。
「そんな…… 私、今井様には良くして頂いています。毒を盛るなんて…… 殿がいらっしゃる前から私は今井様のお側に居たんですよ?」
今井様はとても良い方で、私達の様な下々にまで気を利かせ下さる。
今井様は家臣全員から慕われている。仏様の様な方だ。
こんな方に毒を盛るなんて。有り得ない事である。
疑われるだけでも恐れ多い。不名誉な事だった。
「それが何ですか?」
春岳の視線は冷たかった。
「あぁ、気を悪くしないで下さいね。私は貴方だけではなく誰も信じません。そう育てられました。性分なんですよ」
春岳はそう続け、フッと乾いた笑い浮かべるのだった。
そして、台所に入っていってしまう。
小姓は仕方なく付いていくしかなかった。
春岳の欲しがる素材や食材がある所を指差しで説明する小姓。
小姓が手伝おうとすると嫌がるので、少し距離を置いて見守るしか無かった。
これは本当に気難し過ぎる方だ。
今井様が倒れられるのも仕方ない事である。
ああ、私も倒れそうですよ。
小姓は小さく溜息を吐くのだった。
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