【完結】忍びである城主は乳兄弟にゾッコン

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14話

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 翌朝も、春岳は早く起きていた。
 自ら患者の剥離されている離れに向かい、様子を確かめる。
 直ぐに効果が出る特効薬では無いので、一週間は様子を見なければいけないが、それでも少しは楽になった気がすると言う者も居て、春岳は少し気が楽になる。

「殿ー、殿ー、何方ですか? 殿ーー」

 伊吹が探している声が聞こえ、春岳は伊吹の所へ向かった。

「あ、殿。患者の所へ?」

 何故か春岳は、今日も村人の変装をしている。
 患者達に気を使わせない為の変装だろうか。

「ああ、気になりましたので。直ぐに効果の出る薬では有りませんが、少し気分が落ち着いたと言う者も居ました」

 そう、伊吹にも報告する春岳。

「そうですか」

 伊吹も良かったと胸をなで下ろした。
 仲間が苦しんでいる様子に、伊吹も内心は心を痛めていたのだ。

「敵方にも対応しましたので、騒ぎも落ち着くでしょう」
「対応したのですか?」

 いつの間にと、伊吹は驚く。
 本当に我が主は手が早い様だ。

「ああ、向こうの城の井戸に同じ濃度に薄めた同じ毒薬を投げ入れておきました」
「それは、目には目をと言う事でしょうか。戦になりますね。直ぐに準備を」

 凄い大胆な仕返しをしたものである。
 緊張する伊吹。

「あ、いえ、投げ込むのは一回きりで継続はしませんので、症状が出る事は無いでしよう。こんな事が出来るのは忍びの里の者だけだと気付く人は気付きます。警告したまでですよ。これで気付かず、まだ井戸に毒を投げ続ける様なら更に手を出さなければなりませんがね。村の井戸を確認して来ます」

 伊吹に説明し、さっさと行ってしまう春岳。
 本当にマイペースだ。

「え!? 殿、朝食ですよーー、それからそう言う事は私がーー!!」

 朝食の準備が出来た為に呼びに来た伊吹であったが、話も聞かずに走り出してしまう春岳。
 慌てて引き止めてようとしたが、春岳はもう行ってしまった。
 後を追いかけても追いつけないと知っているが、直ぐに馬に跨がる伊吹。
 春岳の後を追いかけるのであった。


 
 村に着いた春岳は井戸水を飲んでみる。
 今日は、特に異常のない美味しい水に戻っている。
 里の忍びが気を利かせて中和剤を入れてくれた様だ。
 だが一週間は毎日飲みに来て確かめなければな。
 取り敢えず水質は改善されたので、注意の張り紙は外しておく。
 
 さてと、折角村まで来たのだ。
 変装もして来た。
 お医者殿のお手伝いが無いか確かめて、何か有ったら手伝おうかな。
 春岳は、そんな事を考えつつ、医者の家に向かうのだった。


「おお、薬剤師殿。朝早いのう。昨日は助かった。患者達も心なしか、いつもより元気じゃった」

 出迎えてくれた医者は朗らかに笑っていた。
 原因不明の流行り病に心を痛めておいでだったのだろう。
 肩の荷が降りた様である。

「それは良かったです。一週間ほど毎日飲ませてください。今日は何かお手伝いする事は有りますか?」
「今日は何も無いが…… 朝飯は食べたかな?」
「いえ、そう言えばまだです」

 春岳は思い出すと、お腹の虫が鳴ってしまった。
 医者は春岳を家に招き入れると、朝食を振る舞ってくれるのだった。


「そう言えば、薬草畑を作りたいと思っているのですが、よく使う薬草等有りましたら教えて下さい」
 
 春岳は医者と朝食を取りつつ意見を伺う。
 忍びの里でも薬草は育てていたし、よく使う薬草は解る。
 だが、もしかしたら、この土地特有の何かが有るかも知れないと思い確認したのだ。

「よく使う物は薬品棚に上がっているので、後で見ておくれ。薬剤師殿が薬を調合してくれるなら町から取り寄せずに済んで楽になるのう」

 ホホッと嬉しそうに笑う医者。

「ええ、頑張りますね」

 春岳は食事共にしつつ、この土地にはどんな風土病が有るかや、村の事など、色々尋ねる。
 医師は親切な人で色々と春岳に教えてくれるのだった。


 
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