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 夕食を終えると、菅原は作っておいた余りをタッパに入れてくれていた。
 それを受け取って月さんに渡す。
 ちゃんと雪那さんの分も用意していたらしい。

「有難う。でも、雪那は帰ってくるのか解らないなぁ……」

 紙袋を受け取って困った表情を見せる月さん。
 帰ってきても、もう食べてくる気もする。

「痛みが早いものは入れて無いので、明日の朝でも食べられます。冷蔵庫にでも入れておいて下さい」
 
 ちゃんと菅原は痛むものを避けていた。
 
「菅原さん、有難う」

 月さんは台所で片付けをしている菅原に顔を出してお礼を言ってくれる。
 菅原はチラリと月さんを見て頭を下げた。
 アイツもカナリの人見知りである。
 俺以外には仏頂面な事が多い。
 そして無口だ。
 
「すみせん。無愛想な奴で」
  
 月さんが気分を害してないか心配だ。
 俺は頭を下げる。
 俺には子犬みたいに寄ってくるのになぁ。
 
「ううん、有難う。雪那が帰ってこなくても僕がちゃんと食べるからね!」
「……雨が強くなってきましたね」

 雨音が大きい。
 雪那さんは大丈夫なのだうか。
 心配だ。
 それに月さんも戻るだけでもびしょ濡れになりそうだ。

「今日は家に泊まりませんか?」

 幸い、客間も用意できる。
 
「有難う、でも直ぐそこだから大丈夫だよ。雪那が帰ってきて家に誰も居なかったら寂しがりそうだしね」

 苦笑してみせる月さん。
 確かに、仕事を終えて戻ってきた雪那さんが家に誰も居なかったらションボリしそうである。
 こっちに月さんか泊まっていると連絡しても良いが、雪那さんは自宅に帰るだろうし。
 でも、もし雪那さんがまだ帰って来ない様なら月さんが一人ぼっちになってしまう。
 月さんは別に寂しがったりしないだろうし、家に一人でも平気だろうけど、月さんが一人ぼっちだと思うと、俺が何か寂しい。

「雪那さんが帰ってくるまで月さんと一緒に居ます」  

 俺は言うが早いか、台所の菅原に「お隣の家に行きます」と伝える。
 菅原は「もう夜中ですよ」と渋い顔をした。
 もう夜中と言ったって、まだ七時過ぎなんだが……
 菅原はため息を吐く。


「月さんもお風呂入っていきますか?」
「えっ、一緒に!?」

 菅原が迷惑にならない様にとお風呂に入って歯磨きをしてから行きなさいと言うので、確かにと頷いた俺は、月さんに声をかけた。
 話の流れを端折りすぎた気もする。
 月さんはビックリしているし、菅原も片付けようとしていた茶碗を落としそうになっていた。

「別々にです!」

 思わず声を荒らげてしまったが、良く考えたら家の風呂はそれなりに大きい。
 二人で入っても大丈夫そうである。
 それに男同士だ。
 温泉でも一緒に入ったし、別に恥ずかしがる事でも無いのかもしれない。
 声を荒らげる事でも無かった。

「いや、僕は家で入るよ」
「そうですか。じゃあ俺はお風呂に入って歯磨きしたら行きますね!」
「うん。気をつけて来るんだよ」
「お隣に行くだけじゃないですか」

 心配そうな表情をする月さんに苦笑してしまう俺だ。
 
 菅原から貰った雪那さん用の夕食を持て玄関から先に出る月さんを見送ってから、俺はお風呂に向かうのだった。
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