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「旅行、何処行きますか?」
「僕はタマと一緒なら何処でも良い」
「俺も!」
「何処でも良いが一番困るんですよ」

 空き時間にカフェに入った俺たち。
 アイスコーヒーを飲みながら、旅行の予定を立てる事にした。
 旅行に行く事を決め、三人とも行ける日を空けたは良いが、よく考えたらちゃんと行く場所とか決めていなかった。
 二人で何か話し合ったのかもしれないと俺から聞いてみたが、二人とも全く考えていなかった。
 行き当たりばったりで良いと二人は言うが、流石にどこらへんへ何を目的に行くか決めないと。
 移動手段だって、自家用車なのか、電車なのか新幹線なのかとか、流石に行き当たりばったりでは決められない。

「じゃあ、山か海か都会か田舎がぐらい決めて下さい」
 
 ため息混じりに選択肢を出す。
 せめてこれぐらいは決めて貰わないと、俺も候補を挙げられない。

「うーん、山はキツイし、海は日焼けが怖いなぁ」

 なかなか我が侭な月さんだ。
 そういうお姫様みたいな所が可愛くて良きでもある。

「面倒くせぇな月はもう家から出てくんなよ」

 呆れた様子の雪那さんであるが、日差しの強い日なんかはさり気なく日傘を月さんにさしてあげている。
 雨の日は雨傘をさしてあげるので、いつも相合い傘していてエモいんだ。

「じゃあ雪那は何処に行きたいのさ」
「俺は海だろうと山だろうと何処でも行くぜ!」
「やっぱり俺に丸投げじゃないですかぁ」

 二人の言い合いは可愛いけど。
 困ったな。
 雪那さんは本当に何処でも良さそうだが、月さんは何処でも良いと言いつつ『私の正解を選んでね』タイプだ。
 さすが雪那さんのお姫様である。
 俺は雪那さんに視線を向ける。
 月さんの正解なんて、雪那さんにしか解らない。

「まぁ、海なら月の家が持ってるプライベートビーチが有るし、神奈川辺りになら山も有るな」
「では、神奈川方面で良いですか?」

 雪那さんが俺の視線に気づいてくれて提案してくれた。
 ホッとなる。
 さすが雪那さん、月さんの王子様!

「家の別荘は嫌だなぁ。旅行って感じしない。たまには全然知らない所に行きたいよ」 
「お前なぁ」

 嫌だね! と、首を振る月さん、雪那さんは月さんを睨んでしまう。

「僕は温泉に入りたい! 緑色の温泉が良い! 落ち着いた人気のない秘湯みたい温泉宿がいいの!」
「おいおい、要求が多すぎるなぁ」

 急に要望がたくさん出てきて啞然としている雪那さん。
 全然何処でも良く無い。

「緑色の温泉と言うと……」

 直ぐにスマホで検索してみる。
 緑色の温泉で、秘湯みたいな所と……
 まぁ、秘湯って人知れず所に有るから秘湯なんだろうけど……

「タマを困らせるなよ~。真に受けるなよタマ、月は甘やかすと付け上がるから」
「その言い草は気に入らないな。雪那だってよく我が侭言って僕を困らせるだろ」
「俺がいつ月を困らせたよ」
「僕の知らない世界に無理やり連れて行って僕の受けR18禁同人誌の列に並ばせたり~?」

 二人の言い合いに思わずゲフンゲフンと、蒸せてしまう俺。
 やっぱり月さんは怒っているんじゃないかなぁ。

「候補を上げてみました。選んで下さい」

 雪月花のグループラインに候補を送る。
 気まずい話題を変えられてよかった。

「何処もいい感じだね」
「ここなら部屋に温泉ついているし、のんびり出来るんじゃないか?」
「本当だぁ」

 月さんの食いつきも良いようだ。
 やっと正解がだせそうである。
 お、ここか。ここはちょうどいい!

「ここなら僕が口利き出来ます。本館と別に離れがいつくか有りましてね。離れを用意する様にと伝えますよ」

 二人が良いと言った所は、先代からの得意先であった。
 うちの菓子を気に入って、よく取ってくれる旅館だ。

「離れか、人気がなく落ち着けそうじゃないか」
「車は俺が出しますよ」

 雪那さんはもう今から楽しみな様子でウキウキしている。
 場所なら解るので俺が車を出そう。

「車は僕が出すよ」
「えっ、月さんがですか?」
「タマは助手席で補助してね」
「それは構いませんが……」

 月さんて、免許持っていたのか。
 いつも運転手が送り迎えしているけど……
 失礼たが、ペーパードライバーじゃないだろうな。
 ちょっと心配になり、雪那さんに視線を向ける。

「月はA級ライセンス持ってんだよ」

 ハハッと苦笑する雪那さん。
 A級ライセンスって、カーレースの!?

「もう、疑ってる? 免許見せようか?」

 失礼しちゃうなぁと、月さんさプンスコしている。
 本当にごめんなさいである。

「えっと、当日は安全運転でお願いしますね?」

 もしかしてトンデモナイ走り屋で、普段はハンドルを握らせられないのかもしれない。
 これはそれで怖いなぁ。

「大丈夫だ。月は運転上手いから安心しろよ」 
 
 ビクビクしている俺に感づいたらしく、雪那さんが肩を叩いてフォローしてくれた。

「普段運転しないのは、僕の付き人の仕事を取るのが可哀想だと思ってさせてあげてるたけだよ。僕だって仕事出来るしね。本当だからね!」
「お前、そう余計な事を言うなって。言い訳してるみたいになるから」

 せっかく雪那さんがフォローしてくれたと言うのに、月さんが台無しにした。

「普段、俺たちが遊びに行く時は月が運転するんだ。心配すんな。いつも安全運転だ」
「当たり前だよ。僕の運転が上手すぎて雪那は助手席でいつも寝てるよ」
「そしていつも車に置いてかれるわけだ」
「起こすの面倒いし、そのうち起きるかなぁって」

 アハハっと笑うと月さんと、ちょとムスッとする雪那さん。

 雪月だ! 尊い!

「ごちそうさまです!」

 思わず手を合わせてお礼を言っていた。
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