【完結】ねぇ、狐さん

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 自分は、狐だ。
 女大好き! 男大っ嫌い!

「また、貴方ですか白百合」

 側で男の溜め息が聞こえた。

「何だよ! 悪い事してないぞ!」

 女性の太股から声を張り上げる『白百合』と呼ばれた狐目の美少年は、不機嫌そうに声をかけた男睨んだ。
 
「貴方が膝に頭を乗せているのは、私の主の妻ですよ」
「え? この人も!?」

 驚く白百合。
 前に構って貰った人も、この男の主の嫁だと言って怒られた。

 コイツの主のお嫁さん、何人居るの!?

「膝枕が必要なら、私がしてあげますよ。
おいでなさい」

 隣に座り、ポンポンと自分の膝を叩く。

 この男は陰陽師とか言う払い屋だ。
 俺の敵である。
 ちょっと、顔が綺麗で術が使えるからって何なんだよ。

「何で、ゴツいのに膝枕して貰わなきゃなんないのさ!?」

 白百合は、フン鼻を鳴らして顔を背ける。
 膝枕はふかふかの御姉さんにしてもらうのが良いんだろう。
 コイツは馬鹿なのか。

「あら、私はいいのよ。白ちゃんは、何て言うのかしら? もう、飼ってる感じだし?」

 ウフフと、綺麗に笑う御姉さん。

「うん。僕も御姉さんに飼ってもらえるなら嬉しいかも」

 白百合も、笑う。

「貴方ねぇ…… 大体、なんでここに入り浸るんです!」

 陰陽師は溜息を吐く。

「だって何かここ美人さん多いんだもん。皆、優しいし」

 俺の見つけた楽園である。

「だからって困ります。貴方だって、人形に化けられるんですから結構地位の高い狐なんじゃないんですか?」

 地位の高い狐が女にかまけてダラダラしているのは恥ずかしくないのか?
 そう言う視線である。
 
「じゃあ、払ってみれば?」

 イラッとする白百合はチッと舌打ちした。

「そうですか。じゃあ、そうさせて貰います」

 ペタッ

「きゃん!」

言うが早いか額に札を貼られ、狐の姿に戻される白百合。
 何か、体がビリビリする。
 痛い。

「白ちゃん!」

 ビックリし、悲鳴の様な声を上げる御姉さん。

「本城!! 可哀想じゃないの。止めてあげて!」

 そう声を荒らげ、男を叱る。

「甘やかしてばかりでは、これの為になりません」

 本城と呼ばれた陰陽師は、しれっと言うと、白百合をつまみ上げる。

 門の外にポイした。

「今度、変な真似をしてごらんなさい。屋敷に入れない様にしますからね」

 本城は白百合を叱りつけ、冷たく門を閉めた。

 変な真似って言ったって。
 
 御姉さんに、膝枕して貰っただけなのに……
 俺は、そんなに悪い事をしたのかな?

 白百合は、シュンとして山に帰る。
 門の外に離された時、術は解いてくれた様で、もう躰は痛くは無かった。
 でも、何だか胸が痛い。

 男は、嫌い。

 でも、本城は

 別に、嫌いじゃないのに……
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