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29話
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鳥族の長の家では紅茶パーティの準備が着々と進んでいた。
長自ら手料理を作り、紅茶を淹れていた。
そこに鳥が連れて来た烏とフラミンゴが合流する。
烏とフラミンゴは長に会えた事に感動し、跪いた。
鳥族の長は母性の強さで知られる優しい魔物である。
笑顔とハグで出迎えるのであった。
三時間殆ど開けて、フラミンゴの姿になった漆黒と裏柳は鳥族の長の家に着いた。
鳥が出迎えてくれ、中庭に通してくれる。
長と烏とフラミンゴも二人を出迎えた。
烏はそのまま漆黒の肩に止まる。彼の定位置だ。
「ようこそ我が家へおいでくださいました。王様、妃様。歓迎いたします」
そう跪くき、頭を深く下げる長。
「今、俺は王ではなく、鳥族の一羽だ。長。此方こそお招き頂き有り難く思っている」
漆黒も跪き、長に頭を下げる。
「王様、その様な……」
突然の事に、あわあわと慌ててしまう長。
「王じゃないただのフラミンゴの夫婦だ」
漆黒はムッとした様子である。
もしかして、この前自分が言った事を気にして、ただの夫婦の時間を作りたかったのかも知れない。
そう思うと裏柳はフフッと笑ってしまう。
「今日だけは、どうか私達をただのフラミンゴの夫婦として扱ってください」
そう、裏柳からもお願いする。
長は困った様子だが「はい」と、頷くのだった。
「先日は妻が失礼しました」
「失礼したのは貴方だろ」
丁寧に謝罪する漆黒を裏柳は肘で軽く怒突く。
「あ、いえ、此方こそ申し訳ありませんでした」
長はどう言う態度で接したら良いのか解らない様子で更に困っている。
「長を困らすなぁーー」
と、烏が漆黒を怒突く。
「痛い痛い」
烏に攻撃されて痛がる漆黒だが、何処か楽しげだ。
可愛がってるペットとお話が出来て嬉しいのだろう。
「えっと、これ、私の羽で作ったハンカチなんですけど、良かった使って下さい」
先程作ったハンカチを戸惑いつつ差し出す裏柳。
だが、多分、そこの立派なテーブルクロスや、ランチマット等も長が作った物であろう。
ベテランさんに渡す物ではなかったと恥ずかしくなってしまったのだ。
「妃様が?」
「ただのフラミンゴです」
「ただのフラミンゴさんが……」
「はい!」
頑なな裏柳に少し対応に困った様子であるが、長はハンカチを受取ってくれた。
「凄く嬉しいです。額縁に入れて飾ります」
ハンカチは喜んで貰えた様である。
微笑みを見せてくれる長に裏柳も笑みを返した。
でも……
「ハンカチなので使って下さい」
そう苦笑する裏柳である。
ハンカチは使われてなんぼだ。
挨拶を済ませ、全員テーブルにつくと長が作った手料理等を食べつつ会話に花を咲かせた。
普段、烏と会話出来ない漆黒はここぞとばかり烏と話し込んでいるし、裏柳と長とフラミンゴは女子会の様な会話になる。
「長さんのお菓子美味しいです。これは何を使っているんですか?」
「その辺に生えてるキノコと蜂蜜を…… あと、今朝うっかり生んだ私の無精卵です」
そう恥ずかしげな言う長。
「お、長様の無精卵なんですかこれ!?」
フラミンゴは元々赤いので解りにくいが余計に赤くなってしまっている。
「折角なので料理してしまいました。美味しかったですか?」
「はい……」
テヘッと可愛く笑って見せる長に、縮こまってしまうフラミンゴは何だか可愛かった。
「フラミンゴは産まないのですか?」
「私はまだ……」
「可愛いですね」
フフッと、微笑む長。
「鳥族は交尾をしなくても卵を産むんですか?」
裏柳は黙って聞いていたが、不思議に思って質問する。
無精卵と言う事は、そういう意味であろうとは思うが、動物と会話出来るとは言え、個々の生体についてはよく解らない。
「ええ、発情期に好きな方などを考えると産んでしまうのです。鳥族の発情期は期間は短いのですが、頻繁に来るので困ってしまうのですよ」
長はハァーと溜め息を吐く。
「長はΩなのですね」
「ええ、鳥族はΩの率が高い傾向に有りますね。Ω同士でくっついたりもします」
「Ω同士でも交尾出来るんですか?」
「そうですね。肉食系魔物の方々とは逆でして、草食系魔物は沢山子孫を残す為にそう言う作りになっているのだと思います」
「なるほどー」
長の説明に、ほうほうと頷く裏柳。
フラミンゴは赤面して俯いてしまった。
フラミンゴはまだ年頃では無いのであろうか。等と下世話な事を考えてしまう。
自分にはあんなにセクシーなネグリジェを作ってよこした癖にである。
長の無精卵で作られた卵料理は美味しかった。
時間を忘れて話しが盛り上がってしまい、気づけば日が傾きはじめる頃合いである。
「もうこんな時間か」
「本当だ。羊が激怒してるかもな」
時間に気づく裏柳と、苦笑する漆黒。
「長々と失礼してしまいました」
「いえ、此方こそ楽しかったです。また良かったら遊びに来てくださいね」
帰りの挨拶を交わす裏柳と長。
「他の者に見られると誤解を招きそうだからな。城には呼べないが、たまに妻を遊びに来させる」
裏柳と長はもう親友だとも言えそうな距離感であった。
素顔を晒すのはあまり良く無いが、もう身内みたいなものなので構わないだろう。
「鳥にでも乗せてもらって遊びに来ればいい。ずっと城の中に居るのも退屈だろう。鳥族の長ならば俺も安心だしな」
なんせ長はΩだと聞いたし、好きな人が居る様な事を言っていた。
漆黒も女子会をちゃんと聞いていたのである。
鳥族ではΩ同士でも交尾する様であるが、長が裏柳に変な事をするとも思えなかった。
漆黒は長を信頼出来る人物だと認めているのだ。
「本当か!」
漆黒の許しが出て裏柳も嬉しそうである。
「また遊びに来ます!」
「ええ、待っています。フラミンゴ達もどうぞ」
誘われたフラミンゴは小さい声で「はい」と頷いていた。
フラミンゴも嬉しそうである。
「有難うございます。では、また来ます!」
裏柳はそう返事して、飛び立つ。
まだ薬の効果は切れる時間ではない。
飛んで城まで帰れそうである。
「また来て下さいねーー」
「また来てねーー」
見送る長と鳥が手を振っていた。
裏柳も手を振りかえす。
それから夕日に染まる風景を楽しみつつ城を目指すのであった。
長自ら手料理を作り、紅茶を淹れていた。
そこに鳥が連れて来た烏とフラミンゴが合流する。
烏とフラミンゴは長に会えた事に感動し、跪いた。
鳥族の長は母性の強さで知られる優しい魔物である。
笑顔とハグで出迎えるのであった。
三時間殆ど開けて、フラミンゴの姿になった漆黒と裏柳は鳥族の長の家に着いた。
鳥が出迎えてくれ、中庭に通してくれる。
長と烏とフラミンゴも二人を出迎えた。
烏はそのまま漆黒の肩に止まる。彼の定位置だ。
「ようこそ我が家へおいでくださいました。王様、妃様。歓迎いたします」
そう跪くき、頭を深く下げる長。
「今、俺は王ではなく、鳥族の一羽だ。長。此方こそお招き頂き有り難く思っている」
漆黒も跪き、長に頭を下げる。
「王様、その様な……」
突然の事に、あわあわと慌ててしまう長。
「王じゃないただのフラミンゴの夫婦だ」
漆黒はムッとした様子である。
もしかして、この前自分が言った事を気にして、ただの夫婦の時間を作りたかったのかも知れない。
そう思うと裏柳はフフッと笑ってしまう。
「今日だけは、どうか私達をただのフラミンゴの夫婦として扱ってください」
そう、裏柳からもお願いする。
長は困った様子だが「はい」と、頷くのだった。
「先日は妻が失礼しました」
「失礼したのは貴方だろ」
丁寧に謝罪する漆黒を裏柳は肘で軽く怒突く。
「あ、いえ、此方こそ申し訳ありませんでした」
長はどう言う態度で接したら良いのか解らない様子で更に困っている。
「長を困らすなぁーー」
と、烏が漆黒を怒突く。
「痛い痛い」
烏に攻撃されて痛がる漆黒だが、何処か楽しげだ。
可愛がってるペットとお話が出来て嬉しいのだろう。
「えっと、これ、私の羽で作ったハンカチなんですけど、良かった使って下さい」
先程作ったハンカチを戸惑いつつ差し出す裏柳。
だが、多分、そこの立派なテーブルクロスや、ランチマット等も長が作った物であろう。
ベテランさんに渡す物ではなかったと恥ずかしくなってしまったのだ。
「妃様が?」
「ただのフラミンゴです」
「ただのフラミンゴさんが……」
「はい!」
頑なな裏柳に少し対応に困った様子であるが、長はハンカチを受取ってくれた。
「凄く嬉しいです。額縁に入れて飾ります」
ハンカチは喜んで貰えた様である。
微笑みを見せてくれる長に裏柳も笑みを返した。
でも……
「ハンカチなので使って下さい」
そう苦笑する裏柳である。
ハンカチは使われてなんぼだ。
挨拶を済ませ、全員テーブルにつくと長が作った手料理等を食べつつ会話に花を咲かせた。
普段、烏と会話出来ない漆黒はここぞとばかり烏と話し込んでいるし、裏柳と長とフラミンゴは女子会の様な会話になる。
「長さんのお菓子美味しいです。これは何を使っているんですか?」
「その辺に生えてるキノコと蜂蜜を…… あと、今朝うっかり生んだ私の無精卵です」
そう恥ずかしげな言う長。
「お、長様の無精卵なんですかこれ!?」
フラミンゴは元々赤いので解りにくいが余計に赤くなってしまっている。
「折角なので料理してしまいました。美味しかったですか?」
「はい……」
テヘッと可愛く笑って見せる長に、縮こまってしまうフラミンゴは何だか可愛かった。
「フラミンゴは産まないのですか?」
「私はまだ……」
「可愛いですね」
フフッと、微笑む長。
「鳥族は交尾をしなくても卵を産むんですか?」
裏柳は黙って聞いていたが、不思議に思って質問する。
無精卵と言う事は、そういう意味であろうとは思うが、動物と会話出来るとは言え、個々の生体についてはよく解らない。
「ええ、発情期に好きな方などを考えると産んでしまうのです。鳥族の発情期は期間は短いのですが、頻繁に来るので困ってしまうのですよ」
長はハァーと溜め息を吐く。
「長はΩなのですね」
「ええ、鳥族はΩの率が高い傾向に有りますね。Ω同士でくっついたりもします」
「Ω同士でも交尾出来るんですか?」
「そうですね。肉食系魔物の方々とは逆でして、草食系魔物は沢山子孫を残す為にそう言う作りになっているのだと思います」
「なるほどー」
長の説明に、ほうほうと頷く裏柳。
フラミンゴは赤面して俯いてしまった。
フラミンゴはまだ年頃では無いのであろうか。等と下世話な事を考えてしまう。
自分にはあんなにセクシーなネグリジェを作ってよこした癖にである。
長の無精卵で作られた卵料理は美味しかった。
時間を忘れて話しが盛り上がってしまい、気づけば日が傾きはじめる頃合いである。
「もうこんな時間か」
「本当だ。羊が激怒してるかもな」
時間に気づく裏柳と、苦笑する漆黒。
「長々と失礼してしまいました」
「いえ、此方こそ楽しかったです。また良かったら遊びに来てくださいね」
帰りの挨拶を交わす裏柳と長。
「他の者に見られると誤解を招きそうだからな。城には呼べないが、たまに妻を遊びに来させる」
裏柳と長はもう親友だとも言えそうな距離感であった。
素顔を晒すのはあまり良く無いが、もう身内みたいなものなので構わないだろう。
「鳥にでも乗せてもらって遊びに来ればいい。ずっと城の中に居るのも退屈だろう。鳥族の長ならば俺も安心だしな」
なんせ長はΩだと聞いたし、好きな人が居る様な事を言っていた。
漆黒も女子会をちゃんと聞いていたのである。
鳥族ではΩ同士でも交尾する様であるが、長が裏柳に変な事をするとも思えなかった。
漆黒は長を信頼出来る人物だと認めているのだ。
「本当か!」
漆黒の許しが出て裏柳も嬉しそうである。
「また遊びに来ます!」
「ええ、待っています。フラミンゴ達もどうぞ」
誘われたフラミンゴは小さい声で「はい」と頷いていた。
フラミンゴも嬉しそうである。
「有難うございます。では、また来ます!」
裏柳はそう返事して、飛び立つ。
まだ薬の効果は切れる時間ではない。
飛んで城まで帰れそうである。
「また来て下さいねーー」
「また来てねーー」
見送る長と鳥が手を振っていた。
裏柳も手を振りかえす。
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