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 王都を守るバリア、その直ぐ側に小屋が建っている。
 直ぐ側は魔物の住む森だ。
 バリアが有るとは言え、人気は無く、不気味な場所であった。
 アルフォンスは街の噂で聞いた。
 ここに住む魔女は何でも知っていて、どんな願い事も叶えてくれると。
 
「こんにちは」

 アルフォンスはコンコンと、扉をノックする。

「おや、いらっしゃい。よく来たね」

 中から嗄れた声が聞こえ、ドアが開いた。
 
「お邪魔します」

 アルフォンスは中の様子を伺いつつ、足を踏み入れる。
 中は薄暗く、よく見えなかった。

「アルフォンスだね」

 直ぐ側から声が聞こえるが、アルフォンスは相手を確認する事が出来ない。

「私の事が解るのですか?」

 声はするので、返答するアルフォンス。
 何だろう。
 側に居るはずなのに人気を感じられず、アルフォンスは不気味であった。

「解るさ。私は全ての事は知り尽くしている。お前はアルフォンス。王であるロナルドに仕える家臣だね」
「そうです。私は王に子作りをして欲しくて此処に来ました」
「知っているよ」
「私のお願いを聞いて頂けますか?」
「駄目だ。聞き入れなられない」
「え!?」

 断られ、呆気に取られるアルフォンス。
 ここの魔女は何でも願いを叶えてくれると聞いたのに。
 何で!?

「言っただろ。全ては見えてる。俺はお前を攫いに来たんだ」
「うわぁ!」

 急に男の声がし、次の瞬間には強く手を捕まれていた。
 アルフォンスは抵抗する暇も無かった。
 痛い! そう思った時には、既に見知らぬ場所だった。


「ここは……」

 何処かの宮殿の様だった。
 でも自分の知る城では無い。

「ようこそアルフォンス。俺はこの日をどれだけ楽しみにしていたか」
「貴方は誰だ?」

 アルフォンスの目の前に立つのは、見知らぬ男であった。
 長い黒髪に、赤い瞳。
 頭に角が付いている。
 人間じゃないのは確かだった。

「魔王デール」
「デール」

 魔王、目の前に魔王がいる。
 アルフォンスは咄嗟に護身用の短剣を抜くと、相手の胸目掛けて突き刺そうとした。

「やはり反射神経が悪いな」

 デールはアルフォンスの腕を掴むと短剣を奪ってしまう。

「離せ! 私をどうする気だ!!」
「俺の妃にする」
「私はβだ!」
「いや、Ωだよ」

 デールはアルフォンスを抱えると、大きなベッドに押し倒した。
 背中に衝撃を受け、顔を歪めるアルフォンス。

「お前はΩとして産まれた。ロナルドの運命のΩだった。そしてお前とロナルドから産まれた赤子が俺を倒す運命だった。だから変えたんだ。お前をβにした」

 デールは目を見開き、興奮した様に話す。
 ニタリと笑う口元には鋭い牙も見えた。
 
「なっ…… 私が王の運命のΩ。そんな馬鹿な」

 衝撃的な話に頭が回らないアルフォンス。
 ただただ、目の前の魔王が怖い。
 体中の血の気が引くようであった。

「お前をβにしたにも関わらず、お前とロナルドは出会って恋に落ちた。見ていて面白かったよ。そんなお前を俺のモノにしてみたいと思った。王の運命のΩに魔王である俺の子を孕ませてやる」
「私はβで…… アアッ……」
  
 デールがアルフォンスの腹部に手を当てると、血の気が引いていた体は急に熱くなる。
 アルフォンスは身悶えした。

「元の体に戻してやった。Ωにな。どうだ? 初めての発情は」
「発情、これがΩの…… アアッ、熱い。私の体…… ヤッ、ヤダァ!」

 ブワァっと体の中から何かが湧き出る様な感覚と、得体の知れない熱に、アルフォンスは混乱した。

「愛撫してやろう」

 デールの体から無数の触手が現れ、アルフォンスに群がる。
 服の間にスルスルと入り込み、腹回りや首周りを撫でた。

「ヤメッ、気持ち悪い。やだ! やめろ!」

 暴れて嫌がるアルフォンスだが、触手は手や足に絡みつき、身動きを封じてしまう。
 嫌だ! 怖い!

「気持ち良いだろう? こんな事は人間であるロナルドには出来ないぞ。さて、脱がしてやろう」
「ヤメッ!!」
 
 ビリビリと、服を破られ、アルフォンスは素肌はデールに晒される。

「いやだぁ!! 王、助けてぇ、ロナルド様アアァァ!!」

 無数の触手に愛撫され、恐怖で泣き叫ぶアルフォンス。
 気付けば必死にロナルドに助けを求めてしまっていた。

「奴を呼んでも来ぬぞ。さぁ、デール様と呼べ。気持良くしてやろう」
「ヤダァ、ヤメてぇ…んアッ…」
「ほら立派なΩだ。アナルをこんなに濡らして、俺を欲しがっているな」
「アアッ……ヤメて、挿れないで」

 デールの触手がアルフォンスのアナルを撫で回す。
 アルフォンスは、もう何が何だか変わらない。
 体中を蛆虫が張っている様な気持ち悪さを感じるのに、それが気持ちよくて堪らない。

 何で? 私の体はどうなってしまったの?
 
「挿れて俺のモノにして孕ませてやるからな。壊れる程愛してやろう」
「アアッ…イヤだ……ロナルド様……」

 気付けば目の前には大きなデールのペニスが近づけられている。
 細い触手が何本かアルフォンスのアナルに入り込み、穴を広げて受け入れる体制を整えさせられていた。

 もう駄目だ。

 私は魔王に犯されて孕ませられるんだ。

 王、ごめんなさい。

 アルフォンスは目を閉じて訪れるはずの衝撃に耐えるしかなかった。


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