【完結】ホットココアと笑顔と……異世界転移？

82話

「あれじゃないですか？　敬愛も愛ですし、元々私は陛下を敬愛しているので効かなかったのでは？」
「惚れ薬ってもっとメロメロになる感じじゃないのか？」

　惚れ薬って、『あぁん、好き好き、キノコの赤ちゃん孕みたいのぉ～』みたいにする為じゃないの？

「考えられる事は、もうジュノは俺にメロメロって事だけだと思う！」

　なんて、冗談を言ってみたら虚しくなるな。
　フッと苦笑してジュノの顔見て驚いた。

　茹でダコみたいに真っ赤になってる。

「え？　本当に！？　ジュノは俺にメロメロなのか？」
「そ、そんな訳ないじゃないですか」
「声、裏返ってんぞ」

　そんな真っ赤な顔して何を言っているんだ。

「ふーん、ジュノは俺にメロメロなんだぁ。敬愛してるとか言って、本当は俺の事大好きで大好きでどうしようもねぇんだぁ」
「ちがっ、違います！　そんなんじゃ有りません！　もう、お風呂に入って下さい！」

　からかう様に言うハワードにお湯をぶっかけ、手荒く泡を落とすとお湯に運ぶジュノ。　　

　湯に入る瞬間、ハワードがジュノの手を引いた。
　ジュノはバランスを崩してハワードと一緒にお湯に入ってしまった。

「もう、お戯れも程々に……」
「ジュノ、もう一度聞くぞ。俺を愛せないのか？」

　怒るジュノの手を掴んだまま、もう一度真剣に問うハワード。

「っ……　私は……」

　さっきは上手く言えたのに、今はもう上手く言葉が出てこない。

「でもまぁ、これはもう何と言おうと俺が好きって解釈になるよな？　イエスと言えばお前は俺が好きし、ノーと言っても惚れ薬で惚れている筈なのだからそれは嘘って事になるだろ？」
「そんなの横暴です！」
「そうかな？　俺に期待を持たせたジュノが悪い」

　顔を真っ赤にして見せたジュノが悪い。
　そうだろう？

「で？　どうなんだ？　ハッキリ言ってくれジュノ。俺を愛せないのか？」
「…………す」
「え？」

　あまりに小声で聞き取れなかった。

「愛しています！　もうずっと前から貴方にメロメロです！！」

　ジュノはそう声を荒らげると恨めしそうにハワードを睨み、目元に涙を浮かべる。
　
「本当に酷い人ですね。私と貴方では障壁しか無いじゃないですか。貴方を愛したって辛いだけ」

　どうせ私の事なんて直ぐに飽きる癖に。

「辛いだなんてどうしてそう思うんだ？　両思いだろ？　じゃあ妻になってくれ」

　ハワードはジュノが何を気にしているのか解らない。
　両思いならそう言ってくれたら良かった。
　俺が辛かった。

「私は陛下を愛していますが、妻になる気はありません。私は貴方の執事です」
「解った。じゃあ執事で恋人だな」
「……はい」

　ジュノは妥協した様に頷く。
　妥協したのは此方だぞ。

「ジュノ、恋人なら一緒にお風呂に入ろう」
「もう入ってるじゃないですか」

　ジュノは仕方なく濡れてしまった服を脱いでハワードと一緒にお風呂に入る事にするのだった。

　いつか飽きられて捨てられても、今を良い思い出に出来たら良いのだけど……