上 下
72 / 97

72話

しおりを挟む
 中級コースはあまり人気は無くて、すれ違う人も居なかった。
 人気な簡単コースでのんびり行く人と、上級コースでアスレチックを楽しむ冒険者の両極端らしく、あまり中級コースは選ばれない様子だ。

「翠さん、ほら、これはお花の魔物ですよ」
「ただのお花に見えますね」
「ただのお花に擬態して身を隠していますね。特に何の危害も加えない大人しい魔物ですよ。たまにお花の蜜を吸っています」

 お花畑で魔物を見つけて翠に教えるジュノ。

「その子は家の地下庭にも居ますけどね。この子が作る香水がいい匂いなんですよ。一匹一匹作る匂いが違いましてね。部屋の消臭剤とか作るのに良いですよね」

 笑美が付け加える。

「そうなんですね。ただの花だと思ってました。もっと大きなプヨンプヨン動いてるのは魔物なんだなぁとは思いましたけど」

 翠は笑美の庭を思い出す。
 確かにお花畑には色んなお花の魔物みたいなのが居た。
 可愛くて、ずっと見てしまうのだ。

「あれは、この子の大きくなった魔物ですね。大きくなっても特別危害は加えませんが、中には悪気無く毒を作ってしまう子も居るので注意です。家には毒花は居ないので大丈夫ですが、自然界の子には1割ほど出るみたいなので」

 笑美は更き付けけ加える形で翠に教える。

「今、大きのは居ませんね?」
「此処は大きくなると出荷されてしまうんでしょう。スイーツとして楽しまれるんです。蜂の魔物に食べさせたりしてるんでしょうね」

 魔物達も弱肉強食なんだなぁと、翠は思いながら花達を見る。
 しばし、お花畑を眺めつつ、歩いた。
 すると今度は森になった。

「ここからちょっと道が解りにくい様なで手を離さないで下さいね。陛下は私と手を繋ぎましょう」

 ジュノは注意してハワードの手を握る。

「なんかダブるデートみたいだな」

 ハハッと笑うハワード。

「だぶるでーととはなんですか?」

 ジュノはソッチの話には疎かった。

「説明するのは恥ずかしいから勘弁してくれ」

 何気なく軽口を叩いただけであるし、ここで説明して『私と陛下は恋人では無いですよ』なんて言われたら目も当てられない事になる。
 笑美もトバッチリなんですけど、っと言う顔でハワードを睨む。

「二組の恋人同士でお出かけする事かと思いますけど、男友達でも使うみたいですね」

 何故か翠が説明してしまった。

「男友達ですか、私は陛下の執事であり、友人では無いのですが、まぁ、今日は無礼講と言う事ですかね?」
「そうですね。無礼講です」

 フフっと笑う翠に、ジュノもフフと笑っていて可愛いが、恋人どころか友達でも無いと言われたハワードは凄く落ち込んでいる。
 笑美にも受動的にトバッチリが来てしまった。
 確かに恋人では無いし、男友達で間違い無いのだが……
 なんだか落ち込んでしまう。
 急に落ち込むハワードと笑美に、何も気づかずウフフアハハと楽しげにしている翠とジュノであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕 騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて… 王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい

【完結】ワンコ系オメガの花嫁修行

古井重箱
BL
【あらすじ】アズリール(16)は、オメガ専用の花嫁学校に通うことになった。花嫁学校の教えは、「オメガはアルファに心を開くなかれ」「閨事では主導権を握るべし」といったもの。要するに、ツンデレがオメガの理想とされている。そんな折、アズリールは王太子レヴィウス(19)に恋をしてしまう。好きな人の前ではデレデレのワンコになり、好き好きオーラを放ってしまうアズリール。果たして、アズリールはツンデレオメガになれるのだろうか。そして王太子との恋の行方は——?【注記】インテリマッチョなアルファ王太子×ワンコ系オメガ。R18シーンには*をつけます。ムーンライトノベルズとアルファポリスに掲載中です。

パーティー全員転生者!? 元オタクは黒い剣士の薬草になる

むらくも
BL
楽しみにしてたゲームを入手した! のに、事故に遭った俺はそのゲームの世界へ転生したみたいだった。 仕方がないから異世界でサバイバル……って職業僧侶!? 攻撃手段は杖で殴るだけ!? 職業ガチャ大外れの俺が出会ったのは、無茶苦茶な戦い方の剣士だった。 回復してやったら「私の薬草になれ」って……人をアイテム扱いしてんじゃねぇーーッッ! 元オタクの組んだパーティは元悪役令息、元悪役令嬢、元腐女子……おい待て変なの入ってない!? 何故か転生者が集まった、奇妙なパーティの珍道中ファンタジーBL。 ※戦闘描写に少々流血表現が入ります。 ※BL要素はほんのりです。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います

たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか? そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。 ほのぼのまったり進行です。 他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

処理中です...