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63話
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「出会いはあんまり良い思い出でも無かったな。まぁ、懐かしいけどな」
自分でも何でこんな軽薄そうな男を拾ってしまったのかと思ったが、あの頃から割と捨て犬とか拾っちゃうタイプだった。
だからジュノの事も野良犬に見えて可哀想で拾ってしまっただけだと思う。
メイドのヒーラーも、何処かのパーティからお役御免されたのを見つけて拾ってあげたんだっけ。
俺の周りの執事とかメイドは大体そんなのばっかだ。
それでも変な奴は居ないな。
皆真面目に仕事してくれるイイヤツばっかりだ。
このジュノだって第一印象こそ最悪だったが、連れて帰って見れば知識は豊富だし、割と体術等もしっかり出来て魔力も申し分ない。
本当に良い拾いものだと思ったし、何故あんな場所で埋もれていたのかも解らなかった。
ジュノ程の能力が有れば標準以上の暮らしも出来るだろうに。
ジュノの事はよく解らなかっだが、テストさせた結果的には飛び抜けており、直ぐ俺専属の執事にする事にした。
教えなくもマナーもしっかりしていて、ジゴロなんかをしてたのが幻だったんじゃないかと思う程に直ぐに俺の執事と言う立場に馴染んだ。
仕事の手伝いだって何だってしてくれる。
我儘だって聞いてくれる。
レベルの高い会話にも着いて来れる。
そう言う関係になれる人が今まで居なくて、俺は嬉しかったのかもしれない。
政治の相談から開拓や戦略やら、何でも話せて、満足な討論が出来るのはジュノぐらいであった。
ジュノと過ごす内に、きっと自然と惹かれていた。
あまりに自然に動いた心に気付けなかった。
何処が好きかと言えば、今ならいくらでも言えると思う。
「例えば強い癖に相手の事を考えて手を出さないで袋叩きになる優しさとか、綺麗に笑う顔とか、淹れてくれる紅茶が絶品だとか……」
いくらでも出てくるが、口に出すと上手く出てこないのは何なんだろうな。
「ごめん。俺、口下手だな」
ハハッと苦笑する。
「ジュノが上手く相槌を打ってくれないと、俺、話もまともに出来無いんだな」
ジュノと話がしたい。
「お願いだから目を開けてくれ」
多くは望まない。
俺が愛するだけお前も愛してくれなんて我儘も言わない。
「ただ、側にいて欲しい。それだけで良いから……」
目を覚ましてくれ。
ハワードは願う様に、ジュノの唇に優しく己の唇を乗せた。
チュと、軽く音をたててキスをした。
目を覚ましてくれなかったらどうしようと、不安に思いながらも唇をゆっくり離す。
「陛下……」
まるでスローモーションだった。
ジュノは目を覚まして、俺を呼んでくれた。
「ジュノ……」
思わずポロポロ泣いてしまうハワードだった。
ジュノを抱きしめる。
本当に良かった。
自分でも何でこんな軽薄そうな男を拾ってしまったのかと思ったが、あの頃から割と捨て犬とか拾っちゃうタイプだった。
だからジュノの事も野良犬に見えて可哀想で拾ってしまっただけだと思う。
メイドのヒーラーも、何処かのパーティからお役御免されたのを見つけて拾ってあげたんだっけ。
俺の周りの執事とかメイドは大体そんなのばっかだ。
それでも変な奴は居ないな。
皆真面目に仕事してくれるイイヤツばっかりだ。
このジュノだって第一印象こそ最悪だったが、連れて帰って見れば知識は豊富だし、割と体術等もしっかり出来て魔力も申し分ない。
本当に良い拾いものだと思ったし、何故あんな場所で埋もれていたのかも解らなかった。
ジュノ程の能力が有れば標準以上の暮らしも出来るだろうに。
ジュノの事はよく解らなかっだが、テストさせた結果的には飛び抜けており、直ぐ俺専属の執事にする事にした。
教えなくもマナーもしっかりしていて、ジゴロなんかをしてたのが幻だったんじゃないかと思う程に直ぐに俺の執事と言う立場に馴染んだ。
仕事の手伝いだって何だってしてくれる。
我儘だって聞いてくれる。
レベルの高い会話にも着いて来れる。
そう言う関係になれる人が今まで居なくて、俺は嬉しかったのかもしれない。
政治の相談から開拓や戦略やら、何でも話せて、満足な討論が出来るのはジュノぐらいであった。
ジュノと過ごす内に、きっと自然と惹かれていた。
あまりに自然に動いた心に気付けなかった。
何処が好きかと言えば、今ならいくらでも言えると思う。
「例えば強い癖に相手の事を考えて手を出さないで袋叩きになる優しさとか、綺麗に笑う顔とか、淹れてくれる紅茶が絶品だとか……」
いくらでも出てくるが、口に出すと上手く出てこないのは何なんだろうな。
「ごめん。俺、口下手だな」
ハハッと苦笑する。
「ジュノが上手く相槌を打ってくれないと、俺、話もまともに出来無いんだな」
ジュノと話がしたい。
「お願いだから目を開けてくれ」
多くは望まない。
俺が愛するだけお前も愛してくれなんて我儘も言わない。
「ただ、側にいて欲しい。それだけで良いから……」
目を覚ましてくれ。
ハワードは願う様に、ジュノの唇に優しく己の唇を乗せた。
チュと、軽く音をたててキスをした。
目を覚ましてくれなかったらどうしようと、不安に思いながらも唇をゆっくり離す。
「陛下……」
まるでスローモーションだった。
ジュノは目を覚まして、俺を呼んでくれた。
「ジュノ……」
思わずポロポロ泣いてしまうハワードだった。
ジュノを抱きしめる。
本当に良かった。
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