61 / 97
61話
しおりを挟む
恐らくハワードと言う彼は勇者だった。それで魔王様を倒し来たのだ。
そしてこの魔王様は本当に魔族最強であるが、人間が大好きな寂しがやである。
おもてなししたに違いない。
ここまでいくつもの死線を越えて来たであろう勇者には吊り橋効果的な事がおきたに違いない。
それに魔王様はこの美しさだ。
先ず見た者は彼に恋したと勘違いするのは仕方ないだろう。
もう本当に魔性なのだこの美しい魔王は。
それは夢魔の血のせいも有るかもしれないが。
兎に角、無意識に人を誑かす。
ハワードさんは殆ど蜘蛛の巣にかかった蝶の様なもので、しかも蜘蛛的に食べる気もないのでそのままにされた可哀想な蝶々である。
その点、部屋の端で疎外感に不安そうな表情をしている翠さんとやらは食べられそけど。
兎に角、誤解なのだ。
「誤解なものですか! こんな軽薄な男がジュリーを愛してる等、私は認めません! どうせ直ぐにジュリーを捨てるに決まってます!」
笑美は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「俺は本当にジュノが大事で、愛してあるんだ。捨てたりするもんか! ずっと俺の側に縛りつける」
ハワードも自分の愛を否定され、腹がたった。
ジュノもだ。
誰も俺の気持ちを信じてくれない!
「はぁ? ジュリーが好きだと言いながら乱暴に抱いたのでしょう! こんなになってるんですよ。本当に愛していたら初めてからこんなバコバコする訳ないでしょ! 自分が気持ちよくなればそれで良いんだ。ジュリーの事なんて何も考えて無いくせに! このスケコマシ!」
「それは……」
笑美の言葉に苦虫を噛み潰したような顔になるハワード。
言い返せない。
そうだ、ジュノが大事だと言いながら、一方的な思いを押し付けて、ジュノの返事等聞かずに抱いたのだ。
俺はジュノを大事で愛おしいと思いなが、本能に負けて抱き潰してしまった。
ジュノを苦しめてしまった。
「魔王様は黙ってて下さい」
ノエルは笑美を押し退ける。
「ハワードさんはジュリーを愛している。そうですね? 大丈夫です。自信を持ってください。半分は確かにジュリーのフェロモンに充てられた所も有る様ですが、ちゃんと本心でジュリーを愛しています」
ハワードを見つめ、そう言うと微笑む。
「はい、私はジュノを愛してます」
ハワードもノエルには素直に返事が出来た。
初めて信じて貰え、認めて貰えた事にホッとしたのかも知れない。
「解ります。貴方の強い気持ち。心に嘘も無ければ迷いも無い。貴方はジュリーを一途に愛しています」
そう、ノエルはハワードの言葉を信じていた。
気持ちも真っすぐで、疑いようは無いと確信している。
「……ジュノはどうしたら目を覚ましてくれますか? 私が愛してしまったのがいけなかったのですか? ジュノを魔王に返せば良いのでしょうか?」
優しく話しかけられ、ハワードは堰を切ったようにポロボロ涙を流した。
自分のが気持ちを伝えなければ良かったのだろうか。
夜伽等命じて無理矢理欲しがったりしなければ、ずっと側に居てくれたのだろうか。
こんな風にならなかったのか。
俺は、ジュノが俺の側で笑ってくれているならそれで良かったのに、何故こんな事をしてしまったんだ。
そう後悔していた。
「ジュリーが目覚める為に何でもしてくれますか?」
「勿論です、何でもします」
「そうですか……」
ハワードはノエルを縋るように見つめた。
本当に何でもする。
ジュノが目覚めてくれるならば、俺の側に居てくれなくても我慢する!
本当は側に置いておきたい無理矢理にも監禁してでも。
だれど寝ているジュノを側に置いても虚しいだけ。
それならいっそ……
「では、ジュリーをいかに愛しているかを耳元で語って、口づけしてください」
「……え?」
笑顔で言うノエルに聞き間違いかと思うハワード。
「ジュリーは不安なんですよ。目覚めた時に貴方に何と言われるか。気持ち悪がられるかも知れない思っているのでしょう。貴方に拒絶されると思っている。怖くて目覚められないでいます。なので安心させてあげてください」
ノエルはそう言ってハワードの肩を叩くと、不満げに今にも何かを叫び散らしそうな笑美と戸口でオロオロしている翠の腕を掴んで部屋の外にでるのだった。
そういうのは二人っきりにさせてあげるものだ。
そしてこの魔王様は本当に魔族最強であるが、人間が大好きな寂しがやである。
おもてなししたに違いない。
ここまでいくつもの死線を越えて来たであろう勇者には吊り橋効果的な事がおきたに違いない。
それに魔王様はこの美しさだ。
先ず見た者は彼に恋したと勘違いするのは仕方ないだろう。
もう本当に魔性なのだこの美しい魔王は。
それは夢魔の血のせいも有るかもしれないが。
兎に角、無意識に人を誑かす。
ハワードさんは殆ど蜘蛛の巣にかかった蝶の様なもので、しかも蜘蛛的に食べる気もないのでそのままにされた可哀想な蝶々である。
その点、部屋の端で疎外感に不安そうな表情をしている翠さんとやらは食べられそけど。
兎に角、誤解なのだ。
「誤解なものですか! こんな軽薄な男がジュリーを愛してる等、私は認めません! どうせ直ぐにジュリーを捨てるに決まってます!」
笑美は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「俺は本当にジュノが大事で、愛してあるんだ。捨てたりするもんか! ずっと俺の側に縛りつける」
ハワードも自分の愛を否定され、腹がたった。
ジュノもだ。
誰も俺の気持ちを信じてくれない!
「はぁ? ジュリーが好きだと言いながら乱暴に抱いたのでしょう! こんなになってるんですよ。本当に愛していたら初めてからこんなバコバコする訳ないでしょ! 自分が気持ちよくなればそれで良いんだ。ジュリーの事なんて何も考えて無いくせに! このスケコマシ!」
「それは……」
笑美の言葉に苦虫を噛み潰したような顔になるハワード。
言い返せない。
そうだ、ジュノが大事だと言いながら、一方的な思いを押し付けて、ジュノの返事等聞かずに抱いたのだ。
俺はジュノを大事で愛おしいと思いなが、本能に負けて抱き潰してしまった。
ジュノを苦しめてしまった。
「魔王様は黙ってて下さい」
ノエルは笑美を押し退ける。
「ハワードさんはジュリーを愛している。そうですね? 大丈夫です。自信を持ってください。半分は確かにジュリーのフェロモンに充てられた所も有る様ですが、ちゃんと本心でジュリーを愛しています」
ハワードを見つめ、そう言うと微笑む。
「はい、私はジュノを愛してます」
ハワードもノエルには素直に返事が出来た。
初めて信じて貰え、認めて貰えた事にホッとしたのかも知れない。
「解ります。貴方の強い気持ち。心に嘘も無ければ迷いも無い。貴方はジュリーを一途に愛しています」
そう、ノエルはハワードの言葉を信じていた。
気持ちも真っすぐで、疑いようは無いと確信している。
「……ジュノはどうしたら目を覚ましてくれますか? 私が愛してしまったのがいけなかったのですか? ジュノを魔王に返せば良いのでしょうか?」
優しく話しかけられ、ハワードは堰を切ったようにポロボロ涙を流した。
自分のが気持ちを伝えなければ良かったのだろうか。
夜伽等命じて無理矢理欲しがったりしなければ、ずっと側に居てくれたのだろうか。
こんな風にならなかったのか。
俺は、ジュノが俺の側で笑ってくれているならそれで良かったのに、何故こんな事をしてしまったんだ。
そう後悔していた。
「ジュリーが目覚める為に何でもしてくれますか?」
「勿論です、何でもします」
「そうですか……」
ハワードはノエルを縋るように見つめた。
本当に何でもする。
ジュノが目覚めてくれるならば、俺の側に居てくれなくても我慢する!
本当は側に置いておきたい無理矢理にも監禁してでも。
だれど寝ているジュノを側に置いても虚しいだけ。
それならいっそ……
「では、ジュリーをいかに愛しているかを耳元で語って、口づけしてください」
「……え?」
笑顔で言うノエルに聞き間違いかと思うハワード。
「ジュリーは不安なんですよ。目覚めた時に貴方に何と言われるか。気持ち悪がられるかも知れない思っているのでしょう。貴方に拒絶されると思っている。怖くて目覚められないでいます。なので安心させてあげてください」
ノエルはそう言ってハワードの肩を叩くと、不満げに今にも何かを叫び散らしそうな笑美と戸口でオロオロしている翠の腕を掴んで部屋の外にでるのだった。
そういうのは二人っきりにさせてあげるものだ。
0
お気に入りに追加
172
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く
小葉石
BL
今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。
10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。
妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…
アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。
※亡国の皇子は華と剣を愛でる、
のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。
際どいシーンは*をつけてます。

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる