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47話
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笑美は感情を落ち着けると、ジュノの眼鏡を直してやり、服を着替えさせてから朝食を取らせた。
「ジュノさんと笑美さんは昔からの知り合いなんですか?」
先程から笑美はジュノの事をジュリーと呼んでいる。
その事に翠は気づいていた。
「ええ、昔、魔王様の眷属をしていました」
ジュノが答える。
そう、ジュノは元々笑美の眷属をしていたのだ。
それを思い出せなかった笑美は自分の頭を抱える。
「では、以前はジュノさんが笑美さんに精液をあげたり、セックスしたりしてたんですか?」
「私、本当にセックスはしなくて良いタイプの夢魔なんですけど……」
何でも無い事の様にストレートに聞く翠に、また頭を抱える笑美だ。
「精液もあげてませんよ。魔王様は人間から栄養を吸収するので私では役立たずでしたね。お腹が空けばご自分で街に向われてました」
「ジュリーもそんな話ししないでください」
あの頃は彼が寝た事を確認してソッと城を抜け出ていたが、気づかれていたとは……
もう恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
何故そんな何百年以上前の出来事を今話しているのだろうか。
黒歴史を掘り返されている様で居た堪れない。
「私は魔王様の眷属でしたが、お手伝いするだけで寧ろ面倒を見てくださっていたと言うか、孤児だったので拾って下さって……」
「俺と同じだ」
笑美さんは孤児を放っておけない誰でも拾って来ちゃう人だったんだなぁ。
なんて考える翠。
やっぱり俺は笑美さんの特別でも何でも無いんだ。
そんなの分かり切っているのに……
「まぁ、魔物は野生の動物の様に歩いて自分で獲物が取れるようになったら独り立ちみたいな所が有るので孤児と言うのもおかしいな話なんですけど、私、弱々しくて……」
「それで笑美さんが面倒を見てたんですね」
「はい、なので別に忘れてしまっていても仕方ないのですが…… ちょっと寂しかったです」
ショボーンとして見えせジュノ。
翠もそんなジュノに同情してちょっと笑美を睨んでしまった。
「それは、すみませんでした。でも、ジュリーも意地が悪いです。名乗ってくれたら解ったんですよ」
本当に、貴方の眷属をしていたジュリアーノですと言ってくれたら解った。
笑美はジュリーと愛称で呼んでいたが、ハワードがジュノと愛称を付けてしまったから悪いんだ。
ジュリーと言ってくれたら解ったのに!
知らなくて『血生臭い』だなんて言ってしまったじゃないか。
可愛いジュリーに私は何て事を言ってしまったんだ。
全部ハワードのせいだ。
「冗談です。魔王様が私を対等に扱ってくれて嬉しかったんです。子供扱いされるって解ってたから言いたく無かったんですよ」
でも、もうバレちゃいましたね。
なんて、苦笑して見せるジュノ。
魔族は人間とは成長スピードが違う。
十歳ぐらいまで一年で成長し、直ぐ親離れする。
それから五年で二十歳ぐらいまで成長ししたらそのまま死ぬまで容姿はキープされる。
流石に百歳未満の若造や、三千歳超えの長者になれば雰囲気で解ったりするが、それ以外は感覚的には何も変わらないので同い歳の感覚になる。
だから五百歳の時に十歳ぐらいまで成長したジュノを眷属にし、側に置いて百歳の時に手放した。
そして今、八百歳ぐらいの自分と、三百歳ぐらいのジュノには何ら違いは無く、本当に同い歳の感覚なのだ。
それは子供扱いされるのは嫌だろう。
それは解る。
だが相手が私の可愛いジュリーとなったら話は別だ。
「それで、ジュリー何故眼鏡を壊したのですか? ハワードに乱暴それたのですか? もしかして無理やり……」
「陛下に乱暴等されません。無理やり血を飲ませてくれただけです」
「あぁ、そうなんですね……」
確かに顔色は良くなっている。
魔力も申し分ない程に回復していた。
ジュノは今、すこぶる元気そうだ。
「あ、もうこんな時間ですよ!」
ジュノは時計を見て慌てる。
のんびり話している時間なんて無かった。
直ぐ喫茶店に行かないと。
お客さんが待っている。
「おい! 遅刻だぞお前たち!!」
突然現れて怒鳴るのはハワードである。
どうやら待ちくたびれて呼びに来たらしい。
「陛下、ちゃんとお一人でお支度なされたんですね」
「お前も元の姿に戻れたんだな」
直ぐにハワードはジュノの手を握る。
紫の髪に赤い瞳のジュノも可愛かったが、やはり茶色い髪に茶色い瞳の眼鏡をかけているジュノがしっくりくる。
でも服装はいつもと違うな。
なんかフリフリしてて可愛い服を着させられている。
思うにこれは魔王の趣味だ。
俺のジュノに勝手に変な趣味の服を着せるなと思わず笑美を睨むハワード。
笑美もハワードを負けじと睨み返していた。
それでも時間が無いので笑美も翠の手を握って喫茶店にワープするのだった。
「ジュノさんと笑美さんは昔からの知り合いなんですか?」
先程から笑美はジュノの事をジュリーと呼んでいる。
その事に翠は気づいていた。
「ええ、昔、魔王様の眷属をしていました」
ジュノが答える。
そう、ジュノは元々笑美の眷属をしていたのだ。
それを思い出せなかった笑美は自分の頭を抱える。
「では、以前はジュノさんが笑美さんに精液をあげたり、セックスしたりしてたんですか?」
「私、本当にセックスはしなくて良いタイプの夢魔なんですけど……」
何でも無い事の様にストレートに聞く翠に、また頭を抱える笑美だ。
「精液もあげてませんよ。魔王様は人間から栄養を吸収するので私では役立たずでしたね。お腹が空けばご自分で街に向われてました」
「ジュリーもそんな話ししないでください」
あの頃は彼が寝た事を確認してソッと城を抜け出ていたが、気づかれていたとは……
もう恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
何故そんな何百年以上前の出来事を今話しているのだろうか。
黒歴史を掘り返されている様で居た堪れない。
「私は魔王様の眷属でしたが、お手伝いするだけで寧ろ面倒を見てくださっていたと言うか、孤児だったので拾って下さって……」
「俺と同じだ」
笑美さんは孤児を放っておけない誰でも拾って来ちゃう人だったんだなぁ。
なんて考える翠。
やっぱり俺は笑美さんの特別でも何でも無いんだ。
そんなの分かり切っているのに……
「まぁ、魔物は野生の動物の様に歩いて自分で獲物が取れるようになったら独り立ちみたいな所が有るので孤児と言うのもおかしいな話なんですけど、私、弱々しくて……」
「それで笑美さんが面倒を見てたんですね」
「はい、なので別に忘れてしまっていても仕方ないのですが…… ちょっと寂しかったです」
ショボーンとして見えせジュノ。
翠もそんなジュノに同情してちょっと笑美を睨んでしまった。
「それは、すみませんでした。でも、ジュリーも意地が悪いです。名乗ってくれたら解ったんですよ」
本当に、貴方の眷属をしていたジュリアーノですと言ってくれたら解った。
笑美はジュリーと愛称で呼んでいたが、ハワードがジュノと愛称を付けてしまったから悪いんだ。
ジュリーと言ってくれたら解ったのに!
知らなくて『血生臭い』だなんて言ってしまったじゃないか。
可愛いジュリーに私は何て事を言ってしまったんだ。
全部ハワードのせいだ。
「冗談です。魔王様が私を対等に扱ってくれて嬉しかったんです。子供扱いされるって解ってたから言いたく無かったんですよ」
でも、もうバレちゃいましたね。
なんて、苦笑して見せるジュノ。
魔族は人間とは成長スピードが違う。
十歳ぐらいまで一年で成長し、直ぐ親離れする。
それから五年で二十歳ぐらいまで成長ししたらそのまま死ぬまで容姿はキープされる。
流石に百歳未満の若造や、三千歳超えの長者になれば雰囲気で解ったりするが、それ以外は感覚的には何も変わらないので同い歳の感覚になる。
だから五百歳の時に十歳ぐらいまで成長したジュノを眷属にし、側に置いて百歳の時に手放した。
そして今、八百歳ぐらいの自分と、三百歳ぐらいのジュノには何ら違いは無く、本当に同い歳の感覚なのだ。
それは子供扱いされるのは嫌だろう。
それは解る。
だが相手が私の可愛いジュリーとなったら話は別だ。
「それで、ジュリー何故眼鏡を壊したのですか? ハワードに乱暴それたのですか? もしかして無理やり……」
「陛下に乱暴等されません。無理やり血を飲ませてくれただけです」
「あぁ、そうなんですね……」
確かに顔色は良くなっている。
魔力も申し分ない程に回復していた。
ジュノは今、すこぶる元気そうだ。
「あ、もうこんな時間ですよ!」
ジュノは時計を見て慌てる。
のんびり話している時間なんて無かった。
直ぐ喫茶店に行かないと。
お客さんが待っている。
「おい! 遅刻だぞお前たち!!」
突然現れて怒鳴るのはハワードである。
どうやら待ちくたびれて呼びに来たらしい。
「陛下、ちゃんとお一人でお支度なされたんですね」
「お前も元の姿に戻れたんだな」
直ぐにハワードはジュノの手を握る。
紫の髪に赤い瞳のジュノも可愛かったが、やはり茶色い髪に茶色い瞳の眼鏡をかけているジュノがしっくりくる。
でも服装はいつもと違うな。
なんかフリフリしてて可愛い服を着させられている。
思うにこれは魔王の趣味だ。
俺のジュノに勝手に変な趣味の服を着せるなと思わず笑美を睨むハワード。
笑美もハワードを負けじと睨み返していた。
それでも時間が無いので笑美も翠の手を握って喫茶店にワープするのだった。
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