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45話
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意識が浮上したハワードは目を開ける。
「陛下、おはようございます」
「ああ、おはよう……」
いつもの朝だ。
おはようと声をかけてくれたジュノが笑顔でも無ければ別人だけど……
いや、本当に誰だ?
声はジュノなんだけどな。
ジュノはハワードが起きるまで付き添っていたが、結局朝になっていた。
いつもの様にカーテンを開ければ、ハワードは眩しいと言う顔で目を覚ました。
顔色も悪く無いし、元気そうでホッとする。
「陛下、私の眼鏡はご存知有りませんか?」
「ああ、お前の眼鏡ね。多分廊下」
「廊下?」
「粉々になってる」
「粉々になってる!?」
ジュノは慌ててドアを開けて廊下を確認した。
「ああ、私の眼鏡がぁ!!」
何でこんな事に!?
凄い本当粉々になっていた。
「焦って無意識に放り投げて、おまけに踏んづけたみたいだな」
寝起きのハワードはぶっきら棒に言う。
寝起きはいつも不機嫌なのだ。
寝起きじゃなくても不機嫌な事が多いけど。
「どうしてくれるんですか! 私の眼鏡。これが無いと困るんですよ」
「直ぐ再生する」
「そういう問題じゃないんです!」
「朝から何怒ってるんだよ」
のっそりとベッドから起きて欠伸をしながら歩み寄るハワード。
夢じゃなければ自分は彼の命の恩人の筈である。
それを起きるなり眼鏡眼鏡と眼鏡の事ばかり言いやがって。
何なんだ。
「再生したってかけられていた魔法まで元に戻りません」
「魔法って? 姿を変える魔法か? 別に良いじゃないか? その姿でも可愛いよ」
瞳の色を変えて、髪を染めるぐらいのイメチェンは最近は普通である。
「かわっ…… それだけじゃ無かったんです」
「ああ、太陽に当たる灰になっちゃうとか?」
「だったらもうなってますよ。直射日光は苦手ですが、べつに灰になったりしません」
「言われてみれば良く日傘さしてんな」
あまり天気が良い日は外に出たからないなぁとは思っていたけど。
もともとアクティブなタイプじゃないし、インドアなだけかと思っていた。
「陛下、私、貴方の執事辞めたいと思います」
「え!?」
眼鏡割っただけでそこまで臍を曲げるのか?
「引き継ぎはちゃんとしますので、新しい側付きを決めて下さい」
「断る」
真面目な奴だ。
俺が代替えを準備しなければ、引き継ぎも出来ないし、辞める事も出来ないだろう。
ほら、困った顔してる。
「私、吸血鬼の血が混ざってるんですよ」
「ああ、そうだな。それについてはちゃんと後で説教だぞ」
俺に黙っていた事は本当に許さないからな。
「私、もう此処に居られません」
困った表情のジュノ。
「俺がお前を解雇しないんだから居なければいないな」
朝から何故こんな話をしなければならないのか、ハワードはうんざりしてきた。
ジュノは不思議そう首を傾げている。
「何だよ辞めたいのか?」
眼鏡を割ったことがそんなに許せないのか?
ジュノが辞めたがる事に他に思い当たる節がない。
そんなにお気に入りだったのだろうか。
魔法ならある程度、俺だって掛けなおせるけど……
「だって、私、吸血鬼です」
「それで今まで問題なかっただろ。じゃあ別に良いじゃないか」
ジュノは何に固執しているのだろう。
ハワードには解らなかった。
「陛下の血を吸ってしまいました」
「俺が吸わせたからな」
「私が気持ち悪くはないのですか?」
「何で俺がジュノを気持ち悪いと思うんだ?」
「だって誰かから血を分けてもらわないと生きていけないんですよ」
「だから?」
「だから気持ち悪いでしょ?」
「気持ち悪くないと言っているんだが?」
なんだか変な押し問答が続く。
俺が良いと言っているのに、何故ジュノは解ってくれないのか。
「陛下は変です。おかしいと思います」
しまいには変人を見るような目を向けて来た。
「お前は俺を怒らせたいのか?」
喧嘩を売ってるのか?
「いいか、この話は後だ朝の支度をしてくれ。魔王の喫茶店に遅れる。今日も予約でいっぱいなんだからな」
このままだと遅刻だ。
「支度は一人でなさって下さい、私、魔王様の所へ行って眼鏡直して貰って来ます」
ジュノから予想外の返答が返ってきた。
「魔王? 何で魔王の所なんだ?」
意味が解らない。
何故唐突に魔王が出てきたのだろう。
いや、魔王の喫茶店に出社しようという話からの繋がったのか??
いや、繋がらないだろう?
「なんでって、この眼鏡は魔王様から頂いた物なので」
「は?」
ちょっと待てどういう事だ!?
慌てて確かめようとしたが、間に合わなかった。
ジュノは魔法で魔王の所へ行ってしまった様だ。
え?
本当はどういう事だ??
頭が追いつかないハワード。
まて、そもそもアイツ、寝間着も着替えないでそのまま出ていったぞ。
「陛下、おはようございます」
「ああ、おはよう……」
いつもの朝だ。
おはようと声をかけてくれたジュノが笑顔でも無ければ別人だけど……
いや、本当に誰だ?
声はジュノなんだけどな。
ジュノはハワードが起きるまで付き添っていたが、結局朝になっていた。
いつもの様にカーテンを開ければ、ハワードは眩しいと言う顔で目を覚ました。
顔色も悪く無いし、元気そうでホッとする。
「陛下、私の眼鏡はご存知有りませんか?」
「ああ、お前の眼鏡ね。多分廊下」
「廊下?」
「粉々になってる」
「粉々になってる!?」
ジュノは慌ててドアを開けて廊下を確認した。
「ああ、私の眼鏡がぁ!!」
何でこんな事に!?
凄い本当粉々になっていた。
「焦って無意識に放り投げて、おまけに踏んづけたみたいだな」
寝起きのハワードはぶっきら棒に言う。
寝起きはいつも不機嫌なのだ。
寝起きじゃなくても不機嫌な事が多いけど。
「どうしてくれるんですか! 私の眼鏡。これが無いと困るんですよ」
「直ぐ再生する」
「そういう問題じゃないんです!」
「朝から何怒ってるんだよ」
のっそりとベッドから起きて欠伸をしながら歩み寄るハワード。
夢じゃなければ自分は彼の命の恩人の筈である。
それを起きるなり眼鏡眼鏡と眼鏡の事ばかり言いやがって。
何なんだ。
「再生したってかけられていた魔法まで元に戻りません」
「魔法って? 姿を変える魔法か? 別に良いじゃないか? その姿でも可愛いよ」
瞳の色を変えて、髪を染めるぐらいのイメチェンは最近は普通である。
「かわっ…… それだけじゃ無かったんです」
「ああ、太陽に当たる灰になっちゃうとか?」
「だったらもうなってますよ。直射日光は苦手ですが、べつに灰になったりしません」
「言われてみれば良く日傘さしてんな」
あまり天気が良い日は外に出たからないなぁとは思っていたけど。
もともとアクティブなタイプじゃないし、インドアなだけかと思っていた。
「陛下、私、貴方の執事辞めたいと思います」
「え!?」
眼鏡割っただけでそこまで臍を曲げるのか?
「引き継ぎはちゃんとしますので、新しい側付きを決めて下さい」
「断る」
真面目な奴だ。
俺が代替えを準備しなければ、引き継ぎも出来ないし、辞める事も出来ないだろう。
ほら、困った顔してる。
「私、吸血鬼の血が混ざってるんですよ」
「ああ、そうだな。それについてはちゃんと後で説教だぞ」
俺に黙っていた事は本当に許さないからな。
「私、もう此処に居られません」
困った表情のジュノ。
「俺がお前を解雇しないんだから居なければいないな」
朝から何故こんな話をしなければならないのか、ハワードはうんざりしてきた。
ジュノは不思議そう首を傾げている。
「何だよ辞めたいのか?」
眼鏡を割ったことがそんなに許せないのか?
ジュノが辞めたがる事に他に思い当たる節がない。
そんなにお気に入りだったのだろうか。
魔法ならある程度、俺だって掛けなおせるけど……
「だって、私、吸血鬼です」
「それで今まで問題なかっただろ。じゃあ別に良いじゃないか」
ジュノは何に固執しているのだろう。
ハワードには解らなかった。
「陛下の血を吸ってしまいました」
「俺が吸わせたからな」
「私が気持ち悪くはないのですか?」
「何で俺がジュノを気持ち悪いと思うんだ?」
「だって誰かから血を分けてもらわないと生きていけないんですよ」
「だから?」
「だから気持ち悪いでしょ?」
「気持ち悪くないと言っているんだが?」
なんだか変な押し問答が続く。
俺が良いと言っているのに、何故ジュノは解ってくれないのか。
「陛下は変です。おかしいと思います」
しまいには変人を見るような目を向けて来た。
「お前は俺を怒らせたいのか?」
喧嘩を売ってるのか?
「いいか、この話は後だ朝の支度をしてくれ。魔王の喫茶店に遅れる。今日も予約でいっぱいなんだからな」
このままだと遅刻だ。
「支度は一人でなさって下さい、私、魔王様の所へ行って眼鏡直して貰って来ます」
ジュノから予想外の返答が返ってきた。
「魔王? 何で魔王の所なんだ?」
意味が解らない。
何故唐突に魔王が出てきたのだろう。
いや、魔王の喫茶店に出社しようという話からの繋がったのか??
いや、繋がらないだろう?
「なんでって、この眼鏡は魔王様から頂いた物なので」
「は?」
ちょっと待てどういう事だ!?
慌てて確かめようとしたが、間に合わなかった。
ジュノは魔法で魔王の所へ行ってしまった様だ。
え?
本当はどういう事だ??
頭が追いつかないハワード。
まて、そもそもアイツ、寝間着も着替えないでそのまま出ていったぞ。
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