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37話

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 笑美は思った。
 集団生活の推奨、セックス教えての流れ。
 こんなの間違いない、ハーレムに入れば一石二鳥ですよの流れに違いないと。
 なんて策士なんだ。
 ジュノ、恐ろしい男だ。
 笑美は完全にジュノを危険視し、翠を抱きしめ守る体制だ。

「魔王様が何を勘違いしたか解りませんが、彼を溺愛している事は解りました」

 困った様に笑うジュノ。

「よく解りませんが、城のハーレムを説明しますと、男性はおりませんよ。現王の陛下は通ってはいませんが、兄弟が二十人おりますし、陛下の子供が出来ればそれに越した事はないにしろ、出来なければ出来なかったで継承順位で継承されますので、問題は無いかと」
「ほう、王は通わないハーレムに執事は通っている様子ですけどね」
「お目溢し頂いています」

 フフっと微笑むジュノ。
 もう笑美はジュノが怪しくて仕方ない。

「どうしたんですか笑美さん?」

 何故、笑美がこんなにジュノを警戒しているのか解らない翠は不思議そうな表情をしている。
 翠から見たら普通に優しいそうな執事さんである。
 王族のハーレムに通っているのは素行が悪すぎるとは思うが、王であるハーワドがお目溢ししているのなら問題も無いだろう。

「ああ、セックスの説明でしたね。翠さんは科学についても疎いようですので、そちらは説明させて頂きますよ。ではまず植物の交配から説明しますね」

 ジュノは丁寧に雄しべ雌しべの話からはじめ、先に翠の世界で言う所のメンデルの法則の説明をはじめた。
 結局、今日は植物と昆虫の違いについてまでしか勉強出来なかったが、翠は楽しそうにノートを取っていたし、ジュノの教え方も上手だった。
 だが、科学ならば自分も知っているし、なんならコイツ、魔族じゃないか。
 ハワードの言い分では悪魔と人間では常識が違うからジュノを付けたのでは無かったか?
 結局、ジュノも魔族なんだが。
 笑美は何だか物凄く面白く無かった。


「はい、今日はここまでにしましょう。続きは明日ですよ」

 きりが良いところで止めるジュノ。
 翠は、あれ? セックスは??
 みたいな顔をしているが、やはり物を教えるには順番が大事だと思う。
 
「あとは共同生活ですが…… 魔力が無い時点で学園の寮に入れる事は難しいですよね……」

 うんーんと考えるジュノ。
 まぁ、それが可能だとしても、この魔王様の溺愛ぶりである。 
 どちらにしろ魔王様が手放さないだろうな。

 コンコンと、ドアがノックされ、ハワードが顔を覗かせた。
 
 コイツ、ノックとか出来たのか!?
 と、翠と笑美が驚く。

「どうだ? そろそろジュノの仕事が有るから今日は切り上げてくれ」
「ええ、今切り上げた頃ですよ」
「そうか、じゃあこの資料まとめて」
「全く人使いが荒いですね」

 ハワードから資料を受け取るジュノ。
 人使いではなく、本当は悪魔使いなのだが。
 どうやらハワードには知られて居ない様子だ。
 彼の専属執事をしているいうことは、子供の頃から一緒に居るだろう。
 老けな過ぎておかしいとは思わないのだろうか。
 笑美は不思議に思ってしまう。

「邪魔になりそうですし、帰りましょう」

 そう、翠に話しかけられ、笑美も頷く。

 翠を連れて自分の城にワープした。

 まぁ、魔物が人間のフリをして人間界に紛れ込むのはそう珍しい事では無い。
 知力が高く、人間に化けられる、もしかは容貌が人間側に似いている等する場合、此方側で暮らすより、人間と共に暮らした方が暮らし安い場合がある。
 特に自分に流れる様な夢魔の血筋や、ジュノの様な吸血鬼の血筋は人間の精液や血で栄養を補給する為、人間の側に居る方が都合が良いのだ。  
 それに人間が気づかない内に少し分けて貰う程度で実際に命を奪ったり攻撃したりはしない。
 恐らくジュノ等もハーレムを使って快楽で誤魔化しつつ食事をしているだろう。
 夢魔の場合は夢だと思わせて寝ている内に頂くし、ジュノの様な吸血鬼は吸血の際、夢見心地にさせて誤魔化す。
 その為、笑美も問題視はしていないのでバリアを行き来出来るのだ。
 本当に人間にとって危険な知能の低い野獣の様な魔物や、人間に危害を加える可能性が高い、若しくは命を奪う可能性の高い悪魔は完璧に足止めするバリアである。
 知能が高い上に人間の命を奪うなどした凶悪な魔物や、バリアで足止め出来ない強くて恐ろしい魔物なんかは地下に閉じ込めている。
 だからジュノは安全な魔物と言えるだろう。
 だから翠を任せても大丈夫だろうと思う。
 でも気に入られて吸血されたら困るし、付添は辞めないつもりだ。
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