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36話
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翠はハワードに連れられ、お城に来た。
約束通りに今日から家庭教師を付けてくれたのだ。
心配した笑美も付いて来てしまったので、城内はざわついていた。
「紹介しよう。俺の執事のジュノだ」
そうハワードが一人の男を紹介した。
「陛下がお世話になっております」
そう物腰の柔らかそうな眼鏡の男が頭を下げる。
「コイツが翠の勉強も見てくれるから」
「王様の執事さんなんですよね? 俺の勉強見てる暇有りますか?」
まさか執事を家庭教師としてあてがわれるとは思わず、翠はビックリしてしまう。
「構わない。ずっとべったり着いて来るからウザったいと思っていた所だ」
どうやらハワードは勇者をやってみたり、色々活発に一人で何でもしてしまうタイプらしく、城に戻ってからと言うもの執事があれやこれや言ってくるのがウザったかった様だ。
体良く厄介払いをした様なものである。
「私は陛下を思って言っているんですがね」
ジュノは残念そうである。
「俺は執務が有るからもう行く。ジュノ、しっかり教えてやれ」
ハワードはそう言い残し室内を出て行った。
「ではさっそく学力を調べてみましょう」
ジュノは翠に手作りのテスト用紙出して回答させる。
笑美はその様子を見つめつつ、ジュノの事も確かめていた。
コイツ、何処かで会ったことが有るような気がする。
誰かに似ているのだろうか。
不意に目が合うと、ニコッと笑いかけられ、反射的に笑美もニコッと笑いかける。
「先日はどうもウチの陛下が粗相をしてしまった様で。大広間に下半身を晒している陛下を送り返して頂き有難うございました」
「ああ、大広間に出してしまいましたか。咄嗟に送り返しましたので。町中に出さなかっただけ良かったと思って頂きたい」
「そうですね。メイド達に悲鳴を上げられてましたよ」
フフっと笑うジュノ。
「それはメイドさん達には申し訳ない事をしました」
笑美もフフっと笑いかえす。
どうも感情の読めない男だ。
笑美は警戒してしまう。
「そう警戒なさらないで下さい。魔王様」
「貴方も魔族ですね」
「さて、何の事やら」
「血生臭いんですよ」
「物騒な物言いは止めていただきたい」
コイツ、さては吸血鬼だな。
「出来ました!」
張り詰めた空気をかき消すのは翠だった。
集中して解いていたのだろう。
全く怪しい空気に気づいた様子は無かった。
「お疲れ様でした。採点をしますね」
ジュノも何も無かったかの様に翠から紙を受け取り採点する。
暫くし、採点を終えたジュノ。
「ふむ、小学生レベルは大丈夫そうですね。魔法の常識問題と、薬草等の知識は欠けていますが、では中学生レベルのテストを答えて頂きましょう」
小学生レベルは大丈夫な様子だ。
更に中学生レベルのテストも見てみる。
最終的に翠は普通に頭が良い。
算数や数学の知識は完璧であるし、応用も効く。
語学力も理解力も有る。
何の問題も無い。
ただ、常識的な事にかけている所が見られた。
主に道徳的な事に関しては偏った所が有るようで、所々、非人道的な答えを出している。
「そうですね…… 翠さんの場合、家庭教師を付けるより集団生活をしてみた方が良いかと思います」
欠けている薬草の知識等は、彼なら本を読めば直ぐに覚えそうであるし、魔法の事に関しては、もう彼は魔力が無いのでどうしようもない。
勉強で教える事よりも、集団生活で自然に覚える様な事柄を知った方が良いだろう。
「ジュノさん、質問なんですがセックスはどするものなんですか?」
「セックスですか?」
突拍子も無い事を聞かれて驚くジュノ。
「待ってください! 解りましたよ。そう言う魂胆ですか!」
何故か急に声を荒らげる笑美。
ジュノは更に面を食らった。
急に何が解ったと言うのだろうか。
そもそも魔王様は何が解らなかったんだ?
あ、私の正体ですか?
「やはり、翠さんをハーレムに加える気なんですね!?」
全く的はずれな事を言う笑美に、もつポカーンとなってしまうジュノだ。
約束通りに今日から家庭教師を付けてくれたのだ。
心配した笑美も付いて来てしまったので、城内はざわついていた。
「紹介しよう。俺の執事のジュノだ」
そうハワードが一人の男を紹介した。
「陛下がお世話になっております」
そう物腰の柔らかそうな眼鏡の男が頭を下げる。
「コイツが翠の勉強も見てくれるから」
「王様の執事さんなんですよね? 俺の勉強見てる暇有りますか?」
まさか執事を家庭教師としてあてがわれるとは思わず、翠はビックリしてしまう。
「構わない。ずっとべったり着いて来るからウザったいと思っていた所だ」
どうやらハワードは勇者をやってみたり、色々活発に一人で何でもしてしまうタイプらしく、城に戻ってからと言うもの執事があれやこれや言ってくるのがウザったかった様だ。
体良く厄介払いをした様なものである。
「私は陛下を思って言っているんですがね」
ジュノは残念そうである。
「俺は執務が有るからもう行く。ジュノ、しっかり教えてやれ」
ハワードはそう言い残し室内を出て行った。
「ではさっそく学力を調べてみましょう」
ジュノは翠に手作りのテスト用紙出して回答させる。
笑美はその様子を見つめつつ、ジュノの事も確かめていた。
コイツ、何処かで会ったことが有るような気がする。
誰かに似ているのだろうか。
不意に目が合うと、ニコッと笑いかけられ、反射的に笑美もニコッと笑いかける。
「先日はどうもウチの陛下が粗相をしてしまった様で。大広間に下半身を晒している陛下を送り返して頂き有難うございました」
「ああ、大広間に出してしまいましたか。咄嗟に送り返しましたので。町中に出さなかっただけ良かったと思って頂きたい」
「そうですね。メイド達に悲鳴を上げられてましたよ」
フフっと笑うジュノ。
「それはメイドさん達には申し訳ない事をしました」
笑美もフフっと笑いかえす。
どうも感情の読めない男だ。
笑美は警戒してしまう。
「そう警戒なさらないで下さい。魔王様」
「貴方も魔族ですね」
「さて、何の事やら」
「血生臭いんですよ」
「物騒な物言いは止めていただきたい」
コイツ、さては吸血鬼だな。
「出来ました!」
張り詰めた空気をかき消すのは翠だった。
集中して解いていたのだろう。
全く怪しい空気に気づいた様子は無かった。
「お疲れ様でした。採点をしますね」
ジュノも何も無かったかの様に翠から紙を受け取り採点する。
暫くし、採点を終えたジュノ。
「ふむ、小学生レベルは大丈夫そうですね。魔法の常識問題と、薬草等の知識は欠けていますが、では中学生レベルのテストを答えて頂きましょう」
小学生レベルは大丈夫な様子だ。
更に中学生レベルのテストも見てみる。
最終的に翠は普通に頭が良い。
算数や数学の知識は完璧であるし、応用も効く。
語学力も理解力も有る。
何の問題も無い。
ただ、常識的な事にかけている所が見られた。
主に道徳的な事に関しては偏った所が有るようで、所々、非人道的な答えを出している。
「そうですね…… 翠さんの場合、家庭教師を付けるより集団生活をしてみた方が良いかと思います」
欠けている薬草の知識等は、彼なら本を読めば直ぐに覚えそうであるし、魔法の事に関しては、もう彼は魔力が無いのでどうしようもない。
勉強で教える事よりも、集団生活で自然に覚える様な事柄を知った方が良いだろう。
「ジュノさん、質問なんですがセックスはどするものなんですか?」
「セックスですか?」
突拍子も無い事を聞かれて驚くジュノ。
「待ってください! 解りましたよ。そう言う魂胆ですか!」
何故か急に声を荒らげる笑美。
ジュノは更に面を食らった。
急に何が解ったと言うのだろうか。
そもそも魔王様は何が解らなかったんだ?
あ、私の正体ですか?
「やはり、翠さんをハーレムに加える気なんですね!?」
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