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35話

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「29歳の彼を小学校から通わせるつもりですか? 流石に難しいでしょう。私が教えますよ」

 勉強は得意だ。
 何でも知っている。

「人間の常識と魔物の常識じゃ違うだろうよ。だったら家庭教師とか雇ってやろうか?」

 ハワードはちょっと小馬鹿にした様に笑う。

「私、人間の事だってあらかた勉強してますよ! 知ってます! 何歳だと思ってるんですか? 推定800歳ですよ。馬鹿にしないでください!」
「お、おう、馬鹿にはしてねぇけど?」

 親切で言っているつもりのハワードは何で笑美に激怒されているのかサッパリだ。

「えっと、家庭教師をお願い出来ますか? 俺、ちゃんとこの世界の常識を勉強したいです。ずっと住んで行くなら知らなきゃいけないと思います。あと、セックスの事も知らなきゃいけないと思います」

 口論になってしまっている笑美とハワードにおずおずと言う翠。

「セックスの事はもう良いじゃないですか」

 何でそんなにセックスに興味を持ってしまったのだろう。
 全部ハワードのせいだ。
 笑美は翠が心配である。

「まぁ、じゃあ家庭教師つけてやるよ。俺の城で良いか?」
「何でですか家庭教師って家に来てくれる先生でしょ? 翠さんの家はここであって貴方の城じゃないんですけど!?」

 なんで翠さんを連れて行こうとしてるんだコイツは!
 やっぱり翠さんをハーレムに加える気だな! 
 と、あやしむ笑美だ。

「さっきから何興奮してんだよ。別にアンタのペットを取ろうとしてる訳じゃないぞ。家庭教師が魔王城に行くの怖がんだろう普通」
「翠さんは私のペットでも眷属でも餌でもありません!」
「じゃあ何なんだよ?」
「え?」
「じゃあ何で側に置いてんだよ?」
「それは……」

 急に問い詰められ、言い淀む笑美。
 友人だから? 親友だから?
 こ、恋人だからかな?
 自分でもよく解らないんだもの。
 笑美は困ってしまう。

「さっき貴方が言ったじゃないですか、貴方が巻き込んだからです。私はただの笑美さんのホットココアが好きな常連客だったのに……」

 困った様に言う翠。

「え?」

 笑美は困惑した。
 自分が言い淀んだのだが、そんな風に言われるのは寂しいんだが。
 え?
 翠さんはやっぱり仕方なく私と居るんですか? 
 家に置いて貰う変わりに餌にならなきゃとか、そう言う感じなんですか?

「俺は笑美さんのホットココアも笑顔も本当に大好きなので、一緒に来れて幸せです。だからハワードさんには感謝してます」

 翠はそう付け加え、ニコリとハワードに笑いかける。

「わ、私だって! 翠さんの笑顔が好きで、翠さんの幸福感が美味しくて、精液が大好物で! 大好きです!」

 慌てて言う笑美。
 
 そこでハワードは気づく。

 ははーん、そう言う事ね。
 コイツら両片思いみたいな状態ね。
 なるほど~。
 思わずニヤニヤしてしまった。

「貴方はこれ飲んでさっさと帰って下さい!」

 笑美は入れ直したホットココアをハワードに出す。

 ハワードはそれを飲んで直ぐに仕事に向かった。
 ホットココアは美味しかったけど、失恋の味になってしまったなぁ。
 なんて少し感傷的になった。
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