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20話

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 あれこれ世話を妬いて「お風呂に入りますか?」なんて聞いて来るこの人は何なんだ。
 魔王の手下か?
 それにしたってユルユル過ぎじゃないだろうか。
 めちゃくちゃ良い人だ。
 まさか魔王の城と勘違いして天使の城にでも迷いんこんでしまっただろうか。
 とか、思ってしまうハワードだった。

「魔王を退治に来た。魔王は何処だ」
「私が魔王です」
「は?」
「勇者さんですよね。所で何故私は嫌われているのでしょうか? 身に覚えが無くて困っています」

 シュンと落ち込んでしまう魔王。
 え? コイツが魔王!?

 ハワードは物凄く驚いた。
 イメージしていた魔王と違った。

 まさか、俺を誑かして食べる気とか!?

「貴様、とぼけるな。お前が街に魔物を放ち、我々の住処を侵略しようとしている事は解っているんだ!」
「誤解です。私はただ……」
「問答無用!!」
「や、止めて下さい。暴れないで」

 咄嗟にテーブルをひっくり返し、剣を振りかざすした。
 対抗してバリアで応戦する魔王。
 魔王は全く此方を攻撃する様子は無く、自分の身を庇う事だけに専念していた。
 攻撃を仕掛けて来ないあたり、此方に危害を加える気は無かった。
 その時に気づいて対話に持ち込めば良かったのだ。
 だが、あの時はそんな事を考える余裕も無かった。
 
「止めて下さい、私の話を聞いて下さい」

 魔王は必死にそう言っていた。
 だが、興奮し、目の前が真っ赤になってしまった俺は魔王を攻撃し続け、彼の部屋はボロボロになってしまい、穴が開いた所から雪が舞い込む程だった。

「貴様のせいで! お前なんて消えてしまえ!!」

 気付けばそう叫んでいた。

 ハワードには5つ下の妹が居た。
 妹は魔物に襲われて命を落としたのだ。

 それもそれも全部この魔王のせい!

 そう、思い込んでいた。

「解りました。消えます。消えれば良いんですね! もうどうなったって知りません!!」

 投げやりに言った魔王は壁に手を付くと穴を開けた。
 そこに入って行く。

「おい! 逃げるな卑怯者!!」

 直ぐに後を追いかけようとしたが、直ぐに穴は閉じてしまった。
 魔王が異世界に逃げた事は解る。
 腰抜けめ。
 まぁ、良い。
 この世界から消えてくれたのなら、もう魔物が襲ってくる事も無いだろう。
 そうホッとした。
 俺は何も知らなかった。

 魔王が消え、半年もせずに異変が起きた。
 神官達の張ったバリアを越えて来る魔物がより増えてしまったのだ。
 街を襲って、女性を掻っ攫い、人間を食べる凶悪な魔物が増えた。
 勿論、応戦はするが、抑えきれる量じゃない。
 そして、捕まえた魔物が言ったのだ。

「人間は馬鹿だ。魔王様が折角お情けをかけてやっていたのに。魔王様を追いやってバリアを解いてしまうとはな」

 そう言って高笑いしたのだ。
 
 俺は血の気が引いた。
 
 俺が魔王を追い詰めて異世界に逃がしてしまった。 
 そのせいでこんな事になってしまったなんて。
 直ぐ魔王を連れ戻そう。 
 土下座して謝っても許して貰えるか解らないが、このままでは直ぐに国は滅びてしまう。
 毎日魔物が襲って来る。
 国民達の悲鳴が聞こえない日は無かった。 
 自分のせいだ。
 俺があの時魔王の話を聞いていれば。
 そう自分を責めた。
 直ぐ魔王の気配を辿って異世界へと飛んだ。 
 魔王の気配が掴めたなら彼の居る場所に行ける。
 だが、謝る前に魔王も察知して直ぐ別の異次元へ逃げてしまう。
 異世界に居る彼を探すのは蜘蛛の糸を掴む様に慎重にしなければならず、一度拠点
を変えられると探すのが大変なのだ。 
 そんな事を繰り返している内に、俺もイライラしてきた。
 そもそも魔王が予め伝えてくれていたらこんな誤解はしなかった。 
 知らなかったのだ。 
 それを説明もせずに逃げるとかどうなんだ?
 と、自分の事は棚に上げて全部魔王が悪い気がして来てしまい。
 アイツの我儘に振り回されてこっちもいい迷惑だとムカムカして来てしまった。
 そしてやっと見つけたと思ったら、可愛い眷属なんて見つけてニコニコして幸せそうで、本当に腹が立ってしまったのだ。
 こっちは謝ってやろうと探し回っていたのに!
 と、本当に逆ギレも良いところなのだし、彼を振り回したのは何方かと言えば此方なのに。
 本当に何だか腹立たしくて仕方なく、乱暴な態度を取ってしまった。
 もっとちゃんと謝らないといけないのに、まだちゃんと謝れていない。
 勘違いで酷い事をした上に振り回して、またこんな状態に追い込んでしまった。 

 ごめんなさい。

 ソファーでぐったりしている魔王を見つめる。
 
 本当に綺麗。
 綺麗な唇。
 あの唇で俺のを……

 うん、これはお詫びだ。
 だってあの眷属が居ないんだもん。
 どうしようも無いよな。
 
 これはお腹を空かせて倒れている人に食事を恵んでやるような行為だ。
 うん。
 そうだ。
 今、ご飯をあげるかならな!

 ハーワドは、ベルトを外すとズボンのチャックを下ろすのだった。
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