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11話
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「まだ何か用が有るんですか。人の家に勝手に上がって来ないでください」
咄嗟に立ち上り、翠を庇うように前に出る笑美
「笑美さんさがって下さい」
翠もワンテンポ遅れて立ち上がると笑美を庇う様に前に出た。
自分は我流で有が、喧嘩はそこそこ強い。
「何だお前、エミって言うのか。随分可愛な名前だねぇ。エミールとかか?」
ハッと、小馬鹿にしたように笑う男。
「貴方に呼ばせたく有りません。ちゃんとバリアは張りました。もう放っておいて下さい」
「そう言う訳には行かねぇだろう。テメェがサボっていた間のつけを払え」
「はぁ?」
勝手に魔王だと討伐しに来た挙げ句、今度はサボっていた間のつけを払え?
いい加減にして欲しい。
笑美は男を睨みつける。
「テメェのせいで我が国の人口は半分以下にまで減ったんだぞ。今だ魔物がうろついて暴れている。それを放っておくて言うのかよ」
「本当に知りませんよ。何故私がそこまで面倒見なければいけないのですか。そもそも此処を動けばバリアが割れます。私は動けません」
「水晶玉にでも溜めて変わりをさせれば良いだろう」
「私に命を削れと?」
「何千年生きてんだよ。もう十分だろ?」
「はぁ……」
何故自分がここまで追い詰められなければいけないのか。
ボランティアでゴミを一生懸命集めていたのに、邪魔だとコテンパンにされ、ゴミ集めを止めたら今度はお前のせいでゴミだらけだ、片付けろお前の仕事だろうと言われている様な理不尽さである。
さっきまで人間好きだと思っていたが、やっぱり嫌いになりそうだ。
「ほら行くぞ!」
「解りました。今、水晶玉に力を溜めます」
あまりに強引なので仕方なく笑美は大広間に向かった。
部屋の中央にある大きな水晶玉に力を宿せば数時間はもつだろう。
「笑美さん、本当に行くですか? あのストーカー野郎の言ってる事は滅茶苦茶ですよ? 俺がぶん殴って追い返します」
心配そうに笑美に着いて歩く翠。
「仕方ないです。確かに天命を受けているとするならば仕事をサボったのは私ですし、私が放棄してしまったせいで罪の無い人間達が亡くなってしまったと言うのは申し訳ありません。今からでも助けられる命は助けたいです」
ただ、人にものを頼む態度では無いのが腹立たしいが。
もっと殊勝に謝って手を貸して欲しいとお願いされるならば此方も申し訳無かった手伝わせてくれとお願いするものを。
「俺も着いて行きます! 俺も喧嘩は強いですよ!」
グッと拳を握る翠。
笑美も解っている。
翠の居た世界では中の上ぐらいでは有っただろう。
しかし、この世界の彼の力は下の下。
魔法が使えない彼はひ弱すぎる存在である。
「翠さん、夜には戻って来ます。一人でお留守番していて下さい。部屋で良い子に待っていて下さいね。城の中は案内した所以外行かないで下さい。広くて迷子になります」
「……解りました」
翠は不服そうだ。
だが、水晶玉に力を溜め終えた笑美はそんな翠にお風呂の場所を教える。
お風呂の場所はまだ教えて無かった。
「ここがお風呂ですから、ゆくっくり浸かって体を温めてください。あとトイレに行く以外はお部屋で過ごして下さいね」
「解りました」
笑美の説明に頷く翠だが、心配そうに見つめていた。
「もう良いか、急いでいるんだ。ほら行くぞ!」
「はいはい、勝手に先に行ってて下さって良いのですけど?」
「さっさとしろよ!」
イライラした様子の男は笑美の手を掴む。
笑美は笑顔で翠に手を振った。
次の瞬間はもう居なくなっている。
一人残されてしまった翠は少し寂しい。
ストーカー男に連れて行かれてしまったのも心配だ。
自分は確かに喧嘩はそれなりだが、魔法とか使えないもんな。
魔法が使えれば笑美さんの役に立てるのだろうか。
何も出来なかった自分が歯がゆい翠だった。
取り敢えずお風呂に入ろう。
折角、案内してもらったのだ。
お風呂は凄く広い温泉の様な立派なものだった。
ライオンの口からお湯が出ていた。
翠は暫くお風呂に浸かり、ぼーっとそのライオンから出るお湯を眺めるのだった。
咄嗟に立ち上り、翠を庇うように前に出る笑美
「笑美さんさがって下さい」
翠もワンテンポ遅れて立ち上がると笑美を庇う様に前に出た。
自分は我流で有が、喧嘩はそこそこ強い。
「何だお前、エミって言うのか。随分可愛な名前だねぇ。エミールとかか?」
ハッと、小馬鹿にしたように笑う男。
「貴方に呼ばせたく有りません。ちゃんとバリアは張りました。もう放っておいて下さい」
「そう言う訳には行かねぇだろう。テメェがサボっていた間のつけを払え」
「はぁ?」
勝手に魔王だと討伐しに来た挙げ句、今度はサボっていた間のつけを払え?
いい加減にして欲しい。
笑美は男を睨みつける。
「テメェのせいで我が国の人口は半分以下にまで減ったんだぞ。今だ魔物がうろついて暴れている。それを放っておくて言うのかよ」
「本当に知りませんよ。何故私がそこまで面倒見なければいけないのですか。そもそも此処を動けばバリアが割れます。私は動けません」
「水晶玉にでも溜めて変わりをさせれば良いだろう」
「私に命を削れと?」
「何千年生きてんだよ。もう十分だろ?」
「はぁ……」
何故自分がここまで追い詰められなければいけないのか。
ボランティアでゴミを一生懸命集めていたのに、邪魔だとコテンパンにされ、ゴミ集めを止めたら今度はお前のせいでゴミだらけだ、片付けろお前の仕事だろうと言われている様な理不尽さである。
さっきまで人間好きだと思っていたが、やっぱり嫌いになりそうだ。
「ほら行くぞ!」
「解りました。今、水晶玉に力を溜めます」
あまりに強引なので仕方なく笑美は大広間に向かった。
部屋の中央にある大きな水晶玉に力を宿せば数時間はもつだろう。
「笑美さん、本当に行くですか? あのストーカー野郎の言ってる事は滅茶苦茶ですよ? 俺がぶん殴って追い返します」
心配そうに笑美に着いて歩く翠。
「仕方ないです。確かに天命を受けているとするならば仕事をサボったのは私ですし、私が放棄してしまったせいで罪の無い人間達が亡くなってしまったと言うのは申し訳ありません。今からでも助けられる命は助けたいです」
ただ、人にものを頼む態度では無いのが腹立たしいが。
もっと殊勝に謝って手を貸して欲しいとお願いされるならば此方も申し訳無かった手伝わせてくれとお願いするものを。
「俺も着いて行きます! 俺も喧嘩は強いですよ!」
グッと拳を握る翠。
笑美も解っている。
翠の居た世界では中の上ぐらいでは有っただろう。
しかし、この世界の彼の力は下の下。
魔法が使えない彼はひ弱すぎる存在である。
「翠さん、夜には戻って来ます。一人でお留守番していて下さい。部屋で良い子に待っていて下さいね。城の中は案内した所以外行かないで下さい。広くて迷子になります」
「……解りました」
翠は不服そうだ。
だが、水晶玉に力を溜め終えた笑美はそんな翠にお風呂の場所を教える。
お風呂の場所はまだ教えて無かった。
「ここがお風呂ですから、ゆくっくり浸かって体を温めてください。あとトイレに行く以外はお部屋で過ごして下さいね」
「解りました」
笑美の説明に頷く翠だが、心配そうに見つめていた。
「もう良いか、急いでいるんだ。ほら行くぞ!」
「はいはい、勝手に先に行ってて下さって良いのですけど?」
「さっさとしろよ!」
イライラした様子の男は笑美の手を掴む。
笑美は笑顔で翠に手を振った。
次の瞬間はもう居なくなっている。
一人残されてしまった翠は少し寂しい。
ストーカー男に連れて行かれてしまったのも心配だ。
自分は確かに喧嘩はそれなりだが、魔法とか使えないもんな。
魔法が使えれば笑美さんの役に立てるのだろうか。
何も出来なかった自分が歯がゆい翠だった。
取り敢えずお風呂に入ろう。
折角、案内してもらったのだ。
お風呂は凄く広い温泉の様な立派なものだった。
ライオンの口からお湯が出ていた。
翠は暫くお風呂に浸かり、ぼーっとそのライオンから出るお湯を眺めるのだった。
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