【完結】ホットココアと笑顔と……異世界転移？

3話

　あまりに眩しい光に目を瞑った翠だが、光が落ち着き、目を開ける。
　
「ここは？」

　綺羅びやかな宮殿の広間。
　そんな感じの場所だ。

　どうなってるんだ？？

「本条さん申し訳ない。巻き込んでしまった」

　チッと、舌打ちする店主さん。
　店主さん、こんな怖い顔もするのか。
　キッと、何かを睨みつけている店主さんの視線の先を追いかける。
　さっきのコスプレ男が立っていた。

「全く、魔王は魔王らしく魔王の仕事をしてもらわなければ困るんだよ」

　そう、店主さんの顎を掴むコスプレ男。
　

「っ……　解った。元の城に戻り国を護ってやる事を誓う。その変わり彼を元の世界へ戻してくれ！」
「残念だが無理だな。お前が居たからあの世界に行けたが、お前が居ない今、同じあの世界に辿り作く事は不可能。知ってんだろこんな事」
「クソ野郎……」

　ハハっとゲスの笑みを浮かべるコスプレ野郎に、苦々しい顔ををする店主さん。
　どういう事なのかさっぱりわからない俺。
　床を見ると、何やら魔法陣の様な物が書かれていた。

「お前の城に送ってやる。ちゃんと仕事しろよ？　お前のせいで国は滅茶苦茶なんだからな」

　コスプレ男がそう言うと。
　また目の前は光に包まれた。

　気づくとまた別の場所だ。
　今度は暗い場所だった。
　顔に何か付く。多分蜘蛛の巣だ。
　

「動かないで下さい。直ぐ灯りを付けます」

　店主に言われ、動かずにいた。
　パチンと、指を鳴らす音が聞こえた。　
　火が灯り、辺は明るくなる。
　
「これは……」

　酷い。
　足の踏み場も無い荒れた部屋だった。
　蜘蛛の巣は張り放題。壁は壊れ、床は今にも抜けそうだ。

「危ないのでまだ動かないで下さいね」

　店主はそう言うと、もう一度指を鳴らす。
　蜘蛛の巣が消え、壊れた場所は修繕された。
　落ちていたシャンデリアが点くと、一気に明るくなった。
　ここもまた先程の場所とは違う趣きの豪邸になった。

「俺、夢見てんのかな？」

　なんか変な夢を見てる。

　もしかかして抗争に巻き込まれた末に、とうとう死んじゃったのかも知れない。