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25話
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ジェレーノは神官に相談し、指針を仰いで動いた。
好きでも無い女を口説いたり、好きになった振りしなければいけなかったし、途中思いの外アンリーヌに憎悪が向いた時は気が気では無かった。
常にアンリーヌの側には隠密を潜ませ、逐一報告させて守っていたが、彼女が心細い思いをしているのに側に行けないのは胸が張り裂ける思いであった。
せめてもの救いはアンリーヌの親友であるシンシアだ。
彼女には自分が思っているよりも強く巫女の力が宿っている様で、彼女はキャメリアの魔法を跳ね除けていた。
最後までアンリーヌの側に居てくれたのだ。
そして今日、卒業式の後、卒業パーティーにてアンリーヌに婚約破棄を言い渡し、森への追放を言い渡せばストーリーは終わり、キャメリアからの魔法から開放される。
シンシアには横槍を入れられる訳にも、危険に晒す訳にも行かず、離れている様に自前にお願いしていた。
彼女にはこれまで何も話したりはしなかった。
自分が魔法にかかっておらず、キャメリアを罠にかける予定だと言う事を知られる訳には行かず、作戦はジェレーノと神官のみで行われていた。
シンシアは既にジェレーノに不信感を抱いて居たため、怪訝な表情を見せた。
「安心して僕を信じて欲しい」
そう伝えたが、彼女が僕の命令に従うかは半信半疑であった。
本番は信じてくれた様で、彼女は後ろへ下がって様子を伺ってくれていた。
流石にアンリーヌが森に捨てられると知った時にはカッカとさた表情で飛び出して来ようとしたが、側に僕の息のかかった生徒を配置していた。
シンシアが動きを見せたら止めておいて欲しいと頼んでおいたのだ。
彼らに動きを防がれ、シンシアはアンリーヌの元に駆け寄る事は出来なかった。
アンリーヌを連れて行く様に命じた兵士達にも自前に馬車に連れて行って匿ってくれと命じたので、森に捨てられる事は無いのであるが、演技と言えど愛しいアンリーヌに向かって冷血だの暴言を吐きつけ、有りもしない魔女の作ったストーリーを浴びせなければならないのは苦痛であった。
アンリーヌが泣きそうで、ジェレーノは直ぐにでも抱きしめたかった。
アンリーヌに婚約破棄を言い渡した時も、本当はジェレーノが泣きそうだった。
なんとかストーリーを終わらせる事は出来たが、言われもない憎悪を集めていたアンリーヌは生徒から投げつけられた水や食べ物で酷い有様だ。
キャメリアには「衣装を着替えてくるよ。君にも用意してある。着替えて来て」と言って会場を抜け出して来た。
ダンスパーティーの衣装は婚約者であるアンリーヌと揃えた物だったので、キャメリアと合わせた衣装に変えるのはおかしい事では無く、怪しまれる事は無かった筈だ。
だけど……
彼女の狙いが解らない。
アンリーヌを森に捨てさせてどうしようと言うのだろう。
こんな大掛かりな事をしているのだ。
国の転覆でも計っいそうなのだが……
その意図がイマイチ解らないのである。
「でしたら私をこのまま森に捨てて下さい」
「え……」
事の顛末をアンリーヌに説明した所、思いもよらない返事が返って来た。
ジェレーノは面を食らう。
「魔女の意図が読めないままでは不安です。私を森に捨て、獣や魔物に襲われた事にして様子を伺うのはどうですか?」
「そんな危険な真似出来ないよ。それにもう魔女は……」
着替えに連れて行くと嘘をついて捕まえる様に言っておいたのだが……
「王子! 申し訳ありません。魔女に逃げられました!!」
馬車に兵士が駆け込んで来た。
「何だと!!」
ちゃんと魔法使いをあてがったと言うのに逃げられるとは。
「相手の魔力が桁違いだそうで……」
最悪だ。
好きでも無い女を口説いたり、好きになった振りしなければいけなかったし、途中思いの外アンリーヌに憎悪が向いた時は気が気では無かった。
常にアンリーヌの側には隠密を潜ませ、逐一報告させて守っていたが、彼女が心細い思いをしているのに側に行けないのは胸が張り裂ける思いであった。
せめてもの救いはアンリーヌの親友であるシンシアだ。
彼女には自分が思っているよりも強く巫女の力が宿っている様で、彼女はキャメリアの魔法を跳ね除けていた。
最後までアンリーヌの側に居てくれたのだ。
そして今日、卒業式の後、卒業パーティーにてアンリーヌに婚約破棄を言い渡し、森への追放を言い渡せばストーリーは終わり、キャメリアからの魔法から開放される。
シンシアには横槍を入れられる訳にも、危険に晒す訳にも行かず、離れている様に自前にお願いしていた。
彼女にはこれまで何も話したりはしなかった。
自分が魔法にかかっておらず、キャメリアを罠にかける予定だと言う事を知られる訳には行かず、作戦はジェレーノと神官のみで行われていた。
シンシアは既にジェレーノに不信感を抱いて居たため、怪訝な表情を見せた。
「安心して僕を信じて欲しい」
そう伝えたが、彼女が僕の命令に従うかは半信半疑であった。
本番は信じてくれた様で、彼女は後ろへ下がって様子を伺ってくれていた。
流石にアンリーヌが森に捨てられると知った時にはカッカとさた表情で飛び出して来ようとしたが、側に僕の息のかかった生徒を配置していた。
シンシアが動きを見せたら止めておいて欲しいと頼んでおいたのだ。
彼らに動きを防がれ、シンシアはアンリーヌの元に駆け寄る事は出来なかった。
アンリーヌを連れて行く様に命じた兵士達にも自前に馬車に連れて行って匿ってくれと命じたので、森に捨てられる事は無いのであるが、演技と言えど愛しいアンリーヌに向かって冷血だの暴言を吐きつけ、有りもしない魔女の作ったストーリーを浴びせなければならないのは苦痛であった。
アンリーヌが泣きそうで、ジェレーノは直ぐにでも抱きしめたかった。
アンリーヌに婚約破棄を言い渡した時も、本当はジェレーノが泣きそうだった。
なんとかストーリーを終わらせる事は出来たが、言われもない憎悪を集めていたアンリーヌは生徒から投げつけられた水や食べ物で酷い有様だ。
キャメリアには「衣装を着替えてくるよ。君にも用意してある。着替えて来て」と言って会場を抜け出して来た。
ダンスパーティーの衣装は婚約者であるアンリーヌと揃えた物だったので、キャメリアと合わせた衣装に変えるのはおかしい事では無く、怪しまれる事は無かった筈だ。
だけど……
彼女の狙いが解らない。
アンリーヌを森に捨てさせてどうしようと言うのだろう。
こんな大掛かりな事をしているのだ。
国の転覆でも計っいそうなのだが……
その意図がイマイチ解らないのである。
「でしたら私をこのまま森に捨てて下さい」
「え……」
事の顛末をアンリーヌに説明した所、思いもよらない返事が返って来た。
ジェレーノは面を食らう。
「魔女の意図が読めないままでは不安です。私を森に捨て、獣や魔物に襲われた事にして様子を伺うのはどうですか?」
「そんな危険な真似出来ないよ。それにもう魔女は……」
着替えに連れて行くと嘘をついて捕まえる様に言っておいたのだが……
「王子! 申し訳ありません。魔女に逃げられました!!」
馬車に兵士が駆け込んで来た。
「何だと!!」
ちゃんと魔法使いをあてがったと言うのに逃げられるとは。
「相手の魔力が桁違いだそうで……」
最悪だ。
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