ハロウィンの吸血鬼

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 ハロウィン当日。

 仕事を定時に終わらせた僕と貴臣さんは先ず、僕の部屋に向かった。
 忍び装束は無事に作り終えている。
 
「すごいな。専門業者が作ったとしか思えん出来栄えだ」
「褒めすぎですよ。着方を教えますね」

 僕は貴臣さんに忍び装束の着方を教え。
 僕も着る。
 網のシャツを中に着ても良かったが、ちょっとセクシー過ぎても困るので黒いティシャツを着てもらった。
 袴が上手く穿けない様子の貴臣さんに後ろを縛ってあげる。
 貴臣さん、ガタイが良いのに腰がくびれていてセクシーだ。
 そして足が長い。
 スタイルが良すぎる。

「すまんな。袷がわからん」
「間違えると死人になるので気をつけるて下さいね。こうですよ」
「こうか」
「いいですね」

 無事に着ることが出来た。
 頭巾は着いてからで良いだろう。
 無駄に凝ってホーム店で足袋まで買ってきてしまった。
 貴臣さんの分もだ。

「薫くんにいくら払えば良いのか解らんのだが…… お礼は血でも良いだろうか」
「むしろこれが血のお礼ですよ」

 永遠に続くやりとりになりそうでお互い顔を合わせて笑うのだった。
 でも、僕はこのお礼のやりとりが永遠に続いて欲しいなんて思ってしまうのだ。




「貴臣さんは紫雨さんの家で開かれるハロウィンパーティーには参加された事あるんですか?」

 貴臣さんが運転する車に乗せて貰い、着く間にそんな話を切り出した。
 どんなパーティーかよく解らないので雰囲気を知りたいと言う気持ちもある。
 そもそもパーティーに出るなんて初めてではないだろうか。
 会社の飲み会さえ出ない僕がイキナリデビューするには敷居が高すぎる気がする。
 急に不安になってきた。

「いや、ハロウィンパーティーには出た事は無いな」
「『には』って事は、他のパーティーには参加した事が有るんですね?」
「あ、いや、まぁ……」

 何故か貴臣さんの歯切れが悪い。
 聞かない方が良いのだろうか。
 何か言いたく無さそうである。

「それにしても道路の規制が多いですね。遠回りになっちゃいますね」
「ああ、ハロウィンの仮装行列をしているんだな」

 僕はそれとなく話を変える。
 ハロウィンで遠回りをしなければいけないが、貴臣さんと二人でドライブしている気分を味わえる僕は楽しい。
 お互い忍び装束という意味の解らない格好ではあるが。
 頭巾はまだしてないので問題は無い。
 
「紫雨の家でするパーティーなんだが、俺にはちょっと抵抗が有ってな。ハロウィンパーティーは普通の催しである事を願うよ」

 貴臣さんは苦笑してみせる。
 何か紫雨さんの家のパーティーにトラウマが有るのかもしれない。
 普通じゃない催しって何だろう。
 気になりすぎる。

「何故、僕の誘いを受けてくれたんですか?」

 トラウマが有るなら出たく無いのでは?

「俺が断ったら薫くんはコウモリを誘ったかも知れん。そう思うと嫌でね。それに……」
「それに?」

 コウモリさんの連絡先を知らないので誘えないが、それより言いかけた先が気になる。

「薫くんに誘って貰えて嬉しかったんだ。薫くんとなら一緒に行きたいと思った。それだけだよ」
「貴臣さん」
 
 何でもない事の様に言ってくれたが、僕は何だか感動してしまった。
 そんなに信頼してくれているだなんて!
 僕には割と下心も有るのが申し訳なくなる。
 貴臣さんをエッチな目で見てしまう時が有ります!
 ごめんなさい!!

「さぁ、着いた。怖いので手を握っていてくれ」

 そうこうしている内に紫雨さんの邸宅に着いていた。
 ドライブが終わって残念なのと、手を繋がせてくれるのかという興奮で頭がパーンしそうである。
 貴臣さんってイチイチ色っぽ過ぎないだろうか。
 これは僕じゃなくてもエッチな目で見るだろう。
 殆ど誘惑されているようなもんである。
 これを無意識にしてるのだろうから罪づくりな人だ。
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