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幸人のベッドでは、夏奈が何度も寝返りを打っていた。
やっぱり眠れないわ……
姉の様に畳でなければ駄目と言う事では無いのだが、夏奈はベッドが苦手である。
フカフカで良いベッドだとは思うし、何だかいい匂いで心地よいとは思うのであるが、寝るとなると話しは別らしい。
どうやって寝たら良いのかと、色々向きを変えて試行錯誤してみたが、眠れないものは眠れない。
もういっそ諦めようかしら。
寝よう寝ようと思っても余計眠れなくなる。
夏奈はベッドサイドの灯をつけた。
あまり部屋をマジマジと見るのも申し訳ないが、本当にここは客人用の部屋だろうか。
それにしては、何処となく温もりがある気がする。
本棚にも、多くは無いが本が並んでいた。
何気なしに一冊手に取ってみる。
英字であまり読めないが、挿絵を見るのに童話だろう。
お客さんが寝るために読む本かな?
ところどころしか読めないが、挿絵が綺麗でめくっているだけでも楽しめた。
朝方、幸人は寝室のドアを叩いた。
「夏奈さん、起きていますか?」
そう、声をかけるが、返事はない。
まだ寝ているのだろうか。
そっとドアを開けて様子を見る。
ん?
「夏奈さん!?」
夏奈は何故かシーツを被って床に転がっている。
ベッドから転げ落ちたのだろうか。
打ちどころが悪かったら大変だ。
何処か怪我をしているかも知れない。
「夏奈さん、大丈夫ですか!? 夏奈さん!」
夏奈を抱き上げ、声をかける幸人。
救急車!! 救急車を呼んだほうが良いのか!?
「ん….… あ、おはようございます」
目を開けた夏奈は幸人を見て笑顔を見せる。
「ベッドから落ちたんですか? 何処か痛い所は? 病院に行きますか!?」
幸人は夏奈が心配で声を荒らげていた。
血の気が引けてしまう。
顔は真っ青だ。
「え? ああ、落ちたんじゃ無いですよ~」
エヘヘと、苦笑する夏奈。
夏奈の呑気な表情に、幸人は拍子が抜けた。
「でも、床に居ましたよ」
怪我は無さそうだが、まだ心配な幸人。
本当に大丈夫なのか、まじまじと見てしまう。
「ベッドで寝れなかったので床に転がって絵本を見てたんですよ。そしたらそのまま寝ちゃったみたいです」
夏奈はそう言うと、本を手に取って幸人に見せる。
「……ビックリさせないでくださいよ~」
たしかに、それは幸人が子供の頃から良く読んでていた童話だ。
「英字で読めなかったんですが、挿絵が綺麗で素敵な絵本ですね」
「ええ、昔から寝れない時によく読んでいたんですよ。なので、今でも寝れない時に読むんですが、夏奈さんにも効いたみたいで良かったです」
幸人は絵本を本棚に戻す。
「え? 寝れない時に読む本を自分の寝室ではなく、客人用の寝室に置いているんですか?」
不思議そうに首を傾げる夏奈だ。
「え、ええ、気に入っているので。こっちは予備なんですよ」
「その割には何度も読み込んだ様子が有りますけどね」
本は結構、色褪せたり角が擦り切れていたりしていた。
「ここ、やっぱり幸人さんの寝室ですよね?」
「……君は名探偵かな?」
ズバリ当てられてしまった幸人は、隠しても仕方ないと白状した。
どうも自分は彼女の前では口が軽くなってしまうみたいだ。
余計な事までペラペラと言ってしまった。
「幸人さんは何処で寝たんですか?」
「リビングのソファー」
「ごめんない、私のせいで……」
夏奈は申し訳なくなる。
「いえ、リビングのソファーは寝心地良いんですよ。僕もよくあのソファーで寝落ちするので、と、言うか、僕にとってあのソファーは殆どベッドです」
慌ててフォローする幸人。
嘘は言っていない。
本当に寝心地が良くて、よく寝落ちさせられるソファーなのだ。
だから側にブランケットを置いているし、何ら問題は無かったのである。
ちょっと狭いし、足がでるけど、ちょっと足上げた方が血流も良くなって良い気がするし。
頭を置く場所まで有って枕いらずで便利!
「お詫びに朝ごはんは私が作ります!」
グッと、拳を握ってやる気を見せる夏奈。
「ごめん、朝ごはんもう作ってしまったんです。僕が作った物で良かったら食べて下さい」
「幸人さんて本当にスマートな人ですね!」
もう! 何でも先にやっちゃうじゃない!
出来る男は違うわね!
と、殆どやっかみみたいな気持ちで顔を反らす夏奈。
幸人はそれが褒め言葉なのか嫌味なのか解らず、首を傾げてしまう。
やっぱり一回りも離れていると話が噛み合わないかも知れないな。
僕は嫌じゃないけど、夏奈さんは嫌だよなぁ。
申し訳なくなる。
「あ、夏奈さんスマホ光ってますよ」
「本当だ」
人の家なのでサイレントモードにしていた夏奈。
「わぁ! お姉ちゃんから沢山メッセージと電話が!!」
全然気づかなかった。
「えっ、早く折り返してください」
「はい」
幸人も夏奈も慌てる。
ピンポーン
夏奈が真菜に電話すると同時に、幸人の部屋のインターホンも鳴った。
幸人は急いで玄関に向かい、相手を確認する。
亘?
やっぱり眠れないわ……
姉の様に畳でなければ駄目と言う事では無いのだが、夏奈はベッドが苦手である。
フカフカで良いベッドだとは思うし、何だかいい匂いで心地よいとは思うのであるが、寝るとなると話しは別らしい。
どうやって寝たら良いのかと、色々向きを変えて試行錯誤してみたが、眠れないものは眠れない。
もういっそ諦めようかしら。
寝よう寝ようと思っても余計眠れなくなる。
夏奈はベッドサイドの灯をつけた。
あまり部屋をマジマジと見るのも申し訳ないが、本当にここは客人用の部屋だろうか。
それにしては、何処となく温もりがある気がする。
本棚にも、多くは無いが本が並んでいた。
何気なしに一冊手に取ってみる。
英字であまり読めないが、挿絵を見るのに童話だろう。
お客さんが寝るために読む本かな?
ところどころしか読めないが、挿絵が綺麗でめくっているだけでも楽しめた。
朝方、幸人は寝室のドアを叩いた。
「夏奈さん、起きていますか?」
そう、声をかけるが、返事はない。
まだ寝ているのだろうか。
そっとドアを開けて様子を見る。
ん?
「夏奈さん!?」
夏奈は何故かシーツを被って床に転がっている。
ベッドから転げ落ちたのだろうか。
打ちどころが悪かったら大変だ。
何処か怪我をしているかも知れない。
「夏奈さん、大丈夫ですか!? 夏奈さん!」
夏奈を抱き上げ、声をかける幸人。
救急車!! 救急車を呼んだほうが良いのか!?
「ん….… あ、おはようございます」
目を開けた夏奈は幸人を見て笑顔を見せる。
「ベッドから落ちたんですか? 何処か痛い所は? 病院に行きますか!?」
幸人は夏奈が心配で声を荒らげていた。
血の気が引けてしまう。
顔は真っ青だ。
「え? ああ、落ちたんじゃ無いですよ~」
エヘヘと、苦笑する夏奈。
夏奈の呑気な表情に、幸人は拍子が抜けた。
「でも、床に居ましたよ」
怪我は無さそうだが、まだ心配な幸人。
本当に大丈夫なのか、まじまじと見てしまう。
「ベッドで寝れなかったので床に転がって絵本を見てたんですよ。そしたらそのまま寝ちゃったみたいです」
夏奈はそう言うと、本を手に取って幸人に見せる。
「……ビックリさせないでくださいよ~」
たしかに、それは幸人が子供の頃から良く読んでていた童話だ。
「英字で読めなかったんですが、挿絵が綺麗で素敵な絵本ですね」
「ええ、昔から寝れない時によく読んでいたんですよ。なので、今でも寝れない時に読むんですが、夏奈さんにも効いたみたいで良かったです」
幸人は絵本を本棚に戻す。
「え? 寝れない時に読む本を自分の寝室ではなく、客人用の寝室に置いているんですか?」
不思議そうに首を傾げる夏奈だ。
「え、ええ、気に入っているので。こっちは予備なんですよ」
「その割には何度も読み込んだ様子が有りますけどね」
本は結構、色褪せたり角が擦り切れていたりしていた。
「ここ、やっぱり幸人さんの寝室ですよね?」
「……君は名探偵かな?」
ズバリ当てられてしまった幸人は、隠しても仕方ないと白状した。
どうも自分は彼女の前では口が軽くなってしまうみたいだ。
余計な事までペラペラと言ってしまった。
「幸人さんは何処で寝たんですか?」
「リビングのソファー」
「ごめんない、私のせいで……」
夏奈は申し訳なくなる。
「いえ、リビングのソファーは寝心地良いんですよ。僕もよくあのソファーで寝落ちするので、と、言うか、僕にとってあのソファーは殆どベッドです」
慌ててフォローする幸人。
嘘は言っていない。
本当に寝心地が良くて、よく寝落ちさせられるソファーなのだ。
だから側にブランケットを置いているし、何ら問題は無かったのである。
ちょっと狭いし、足がでるけど、ちょっと足上げた方が血流も良くなって良い気がするし。
頭を置く場所まで有って枕いらずで便利!
「お詫びに朝ごはんは私が作ります!」
グッと、拳を握ってやる気を見せる夏奈。
「ごめん、朝ごはんもう作ってしまったんです。僕が作った物で良かったら食べて下さい」
「幸人さんて本当にスマートな人ですね!」
もう! 何でも先にやっちゃうじゃない!
出来る男は違うわね!
と、殆どやっかみみたいな気持ちで顔を反らす夏奈。
幸人はそれが褒め言葉なのか嫌味なのか解らず、首を傾げてしまう。
やっぱり一回りも離れていると話が噛み合わないかも知れないな。
僕は嫌じゃないけど、夏奈さんは嫌だよなぁ。
申し訳なくなる。
「あ、夏奈さんスマホ光ってますよ」
「本当だ」
人の家なのでサイレントモードにしていた夏奈。
「わぁ! お姉ちゃんから沢山メッセージと電話が!!」
全然気づかなかった。
「えっ、早く折り返してください」
「はい」
幸人も夏奈も慌てる。
ピンポーン
夏奈が真菜に電話すると同時に、幸人の部屋のインターホンも鳴った。
幸人は急いで玄関に向かい、相手を確認する。
亘?
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