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5日目、金曜日の朝。
真菜は着ていく服に迷っていた。
今日は終業後に仲嶋さんと美術館に行く予定である。
そのまま待ち合わせ場所に行く予定だ。
何故服に迷っているかと言えば、出会った時がアレだったので、普段の格好で行って気付いて貰えるか怪しい。
と、いっても真菜はコテも持っていなければ、可愛らしい服も持っていない。
まさか婚活パーティーの時に着ていたワンピースで職場に行く訳にもいかない。
何となく、三つ編みをして寝てみたので、解けばウェーブかかってくれていると思うが、上手く出来ているかは怪しい所である。
まぁ、後ろで縛るので多少誤魔化せるだろう。
「真菜ー、お寝坊さんか?」
コンコンと、翔がドアをノックした。
なかなか真菜が部屋から出てこないので心配したのだろう。
お弁当ならいつもどおり先に作ってテーブルに上げておいたので翔は本当に真菜が寝坊しているとは思っていないだろうが。
もしかしたらすごく眠くて二度寝してしまったかもしれないとは、思っているかもしれない。
「翔さん。おはようございます」
「どうしたんだその髪!?」
「変でしたか?」
部屋のドアを開けて顔を出す真菜。
無いものは仕方ないので、いつもの代わり映えしないスーツ姿であるが、髪型はゆるふわパートで可愛いくしてみた。
口紅もしっかり塗っている。
真菜はいつも色付きリップや薬用リップを愛用していた。
目元もよく見たら、マスカラしているし、アイシャドウもしっかり塗っている。
薄く見えるが、ちゃんとメイクしている真菜だ。
「今日は帰りに中嶋さんと美術館に行くので」
「それで何でそんなオシャレしてんだ」
中嶋と美術館に行く話は聞いていたが、今夜だったとは。
俺とのデートだってまだなのに!
しかもそんなオシャレして。
俺の前ではそんなオシャレ自発的にした事なんてないのに。
翔はムカムカしてきてしまう。
真菜は無意識に中嶋に良く見られたいと思っているのかもしれない。
真菜はそういう感情に疎そうだからな。
内心、中嶋に気があるのではと疑う翔。
「婚活パーティーの時に会っただけなので、普段の格好では解って貰えないかと思ったんです」
待ち合わせは駅であるし、人が多いと解らないのは困ると思い、真菜なりに気を使っただけだ。
なんか変な事をしてしまっているのだろうか。
真菜は何故か翔が不機嫌なので困惑してしまう。
「別に分からなかったら分からなかったで良いだろう。真っ直ぐ帰ってこいよ」
「そういう訳には……」
「朝食を食べよう」
「先に食べてくれても良かっんですよ」
朝食は交互に作る事にした。
因みに夕食は先に帰った方である。
今日は翔が朝食を作ってくれる日だ。
「ほら、ここ」
翔は二人の約束事を書いた張り紙を指差す。
『朝食や夕食は出来るだけ二人で食べる』
と、書かれていた。
「あら、また書き足したんですね」
ふーんと、眺める真菜。
なかなか二人での決め事が直ぐに浮かばなかったので、その都度気づいた時に紙に書き出す事にした。
勝手に書き足し、本当に無理な内容なら話し合う事にしている。
今回の書き足しは無理な内容でも無かったので、真菜は隣に丸をつけておく。
同意できたら丸を書く事にしてある。
「今夜、何時に帰ってくる? 夕食は俺が作っておくからな」
「有難うございます。何時に帰ってこれるか解らないので先に食べていて下さいね」
「待ってる」
「待たないで下さいよ」
「出来るだけ、早く帰ってきてくれ」
「……解ったわ」
懇願するように手を握られてしまい、真菜は頷く。
翔さんは結構、寂しがり屋さんみたいね。
真菜の返事に安心した様子の翔。
二人で「いただきます」と手を合わせて朝食を取るのだった。
「田辺さん、今日は婚約者の方とデートなんですか?」
朝、ディスクに座ってメール確認をしていると、不意に話し掛けられ、顔を上げる。
川崎と目が合った。
「いえ、友達と遊びに行くだけです」
「えー、でも婚約者さんは居るんですよね? 指輪、綺麗ですね」
「あ、はい。一応……」
真菜は薬指に光るダイヤにドギマギしてしまう。
やっぱり、追求されると恥ずかしいわ。
翔には絶対にどんな時でも外さないでくれと言われているので真菜はそれを守っている。
ただデザインが同じなので、自分がそれを守るかわりに翔は見えないように身に着けて欲しいとお願いしていた。
翔はネックレスにして首元に隠しているので、同僚にバレる心配はない。
それでも何だか指輪を見られると緊張してしまう真菜。
川崎は勘が鋭そうだし、警戒してしまう。
「結婚したら会社は辞めてしまうんですか?」
「え? いえ、私は辞める気は無いんですけど……」
川崎の質問に、真菜は戸惑う。
そういえばちゃんと話て無かったわ。
こういう話もちゃんとしなきゃいけないわね。
真菜的には辞める気は無いが、翔は辞めて欲しいかも知れない。
辞めてくれと言われても、辞める気は無いんだけど。
「私も田辺さんには辞めて欲しく無いわ」
フフっと微笑んでくれる川崎。
最近、川崎さんとはちょくちょくお話しする様になった。
指輪の事は触れられなかったが、気になって見ていたのかも知れない。
川崎と会話している内に始業時刻になり、翔が仕事を回してくれる。
さーて、今日も頑張って片付けるわ!
真菜は今日も定時で終わらせる様に仕事に集中するのだった。
真菜は着ていく服に迷っていた。
今日は終業後に仲嶋さんと美術館に行く予定である。
そのまま待ち合わせ場所に行く予定だ。
何故服に迷っているかと言えば、出会った時がアレだったので、普段の格好で行って気付いて貰えるか怪しい。
と、いっても真菜はコテも持っていなければ、可愛らしい服も持っていない。
まさか婚活パーティーの時に着ていたワンピースで職場に行く訳にもいかない。
何となく、三つ編みをして寝てみたので、解けばウェーブかかってくれていると思うが、上手く出来ているかは怪しい所である。
まぁ、後ろで縛るので多少誤魔化せるだろう。
「真菜ー、お寝坊さんか?」
コンコンと、翔がドアをノックした。
なかなか真菜が部屋から出てこないので心配したのだろう。
お弁当ならいつもどおり先に作ってテーブルに上げておいたので翔は本当に真菜が寝坊しているとは思っていないだろうが。
もしかしたらすごく眠くて二度寝してしまったかもしれないとは、思っているかもしれない。
「翔さん。おはようございます」
「どうしたんだその髪!?」
「変でしたか?」
部屋のドアを開けて顔を出す真菜。
無いものは仕方ないので、いつもの代わり映えしないスーツ姿であるが、髪型はゆるふわパートで可愛いくしてみた。
口紅もしっかり塗っている。
真菜はいつも色付きリップや薬用リップを愛用していた。
目元もよく見たら、マスカラしているし、アイシャドウもしっかり塗っている。
薄く見えるが、ちゃんとメイクしている真菜だ。
「今日は帰りに中嶋さんと美術館に行くので」
「それで何でそんなオシャレしてんだ」
中嶋と美術館に行く話は聞いていたが、今夜だったとは。
俺とのデートだってまだなのに!
しかもそんなオシャレして。
俺の前ではそんなオシャレ自発的にした事なんてないのに。
翔はムカムカしてきてしまう。
真菜は無意識に中嶋に良く見られたいと思っているのかもしれない。
真菜はそういう感情に疎そうだからな。
内心、中嶋に気があるのではと疑う翔。
「婚活パーティーの時に会っただけなので、普段の格好では解って貰えないかと思ったんです」
待ち合わせは駅であるし、人が多いと解らないのは困ると思い、真菜なりに気を使っただけだ。
なんか変な事をしてしまっているのだろうか。
真菜は何故か翔が不機嫌なので困惑してしまう。
「別に分からなかったら分からなかったで良いだろう。真っ直ぐ帰ってこいよ」
「そういう訳には……」
「朝食を食べよう」
「先に食べてくれても良かっんですよ」
朝食は交互に作る事にした。
因みに夕食は先に帰った方である。
今日は翔が朝食を作ってくれる日だ。
「ほら、ここ」
翔は二人の約束事を書いた張り紙を指差す。
『朝食や夕食は出来るだけ二人で食べる』
と、書かれていた。
「あら、また書き足したんですね」
ふーんと、眺める真菜。
なかなか二人での決め事が直ぐに浮かばなかったので、その都度気づいた時に紙に書き出す事にした。
勝手に書き足し、本当に無理な内容なら話し合う事にしている。
今回の書き足しは無理な内容でも無かったので、真菜は隣に丸をつけておく。
同意できたら丸を書く事にしてある。
「今夜、何時に帰ってくる? 夕食は俺が作っておくからな」
「有難うございます。何時に帰ってこれるか解らないので先に食べていて下さいね」
「待ってる」
「待たないで下さいよ」
「出来るだけ、早く帰ってきてくれ」
「……解ったわ」
懇願するように手を握られてしまい、真菜は頷く。
翔さんは結構、寂しがり屋さんみたいね。
真菜の返事に安心した様子の翔。
二人で「いただきます」と手を合わせて朝食を取るのだった。
「田辺さん、今日は婚約者の方とデートなんですか?」
朝、ディスクに座ってメール確認をしていると、不意に話し掛けられ、顔を上げる。
川崎と目が合った。
「いえ、友達と遊びに行くだけです」
「えー、でも婚約者さんは居るんですよね? 指輪、綺麗ですね」
「あ、はい。一応……」
真菜は薬指に光るダイヤにドギマギしてしまう。
やっぱり、追求されると恥ずかしいわ。
翔には絶対にどんな時でも外さないでくれと言われているので真菜はそれを守っている。
ただデザインが同じなので、自分がそれを守るかわりに翔は見えないように身に着けて欲しいとお願いしていた。
翔はネックレスにして首元に隠しているので、同僚にバレる心配はない。
それでも何だか指輪を見られると緊張してしまう真菜。
川崎は勘が鋭そうだし、警戒してしまう。
「結婚したら会社は辞めてしまうんですか?」
「え? いえ、私は辞める気は無いんですけど……」
川崎の質問に、真菜は戸惑う。
そういえばちゃんと話て無かったわ。
こういう話もちゃんとしなきゃいけないわね。
真菜的には辞める気は無いが、翔は辞めて欲しいかも知れない。
辞めてくれと言われても、辞める気は無いんだけど。
「私も田辺さんには辞めて欲しく無いわ」
フフっと微笑んでくれる川崎。
最近、川崎さんとはちょくちょくお話しする様になった。
指輪の事は触れられなかったが、気になって見ていたのかも知れない。
川崎と会話している内に始業時刻になり、翔が仕事を回してくれる。
さーて、今日も頑張って片付けるわ!
真菜は今日も定時で終わらせる様に仕事に集中するのだった。
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