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無事に母を送り、二人っきりになった車内。
真菜は助手席に移動している。
「えっと、急に押しかけたりして悪かったな。心配になって居ても立っても居られなかったんだよ」
黙っている真菜に、翔は怒っていると感じ謝る。
「いえ、今日のお母さんテンションおかしかったんですけど、いつもはもう少し落ち着いているんですよ?」
情緒不安定な母親だと思われるのは母が可哀想過ぎてフォローしておく真菜。
あんなにテンションがおかしくなった母を真菜も初めて見た。
「やっぱり真菜に似てたな」
「私は父親似です」
「そう? 雰囲気似てるなって思ったけど」
「そうかしら?」
フフッと苦笑ってしまう真菜。
私って結構情緒不安定に見えるのかしら。
「怒ってないのか?」
話しみると機嫌は悪くなさそうだ。
「何故怒っていると思ったんですか?」
「部屋に押しかけちゃったし、指輪も勝手に選んで来てしまったからな。さっきまで君は黙り込んでいたし……」
「私を心配してくれたんですよね? それに指輪だって。指輪が綺麗で見惚れていただけです。こんなに綺麗な指輪、高かったんじゃないですか?」
「俺が君に贈りたいと思ったんだ。気に入ってくれたなら良かったよ」
真菜は指に光るダイヤモンドの小さな輝きをずっと見てしまう。
値段がどうこうとか、ダイヤモンドが嬉しいとかでは無くて、翔が自分の為に選んで求めた物だと思うと嬉しかった。
それに、合わせたデザインの指輪が翔の指にも輝いている事が何だか嬉しいのである。
「お母さんから公認を頂けたようで良かった」
挨拶が成功して、ホッとする翔。
このタイミングで真菜のお母さんが来たとなると、絶対に自分の有ることない事を友里恵が真菜の母親に吹き込んでいると思っていた翔。
家族ぐるみだと言っていたし、こういう事になるとは想定していた。
だから早く婚約指輪をつけて貰って、俺が本気であると両親に知ってほしいと思っていた訳だが、お母さんの方が早く来てしまった。
連絡を受けた翔は直ぐに店に向かった。
真菜と選ぶつもりで、彼女が気に入った物を買う予定では有ったが、以前、翔は兄の婚約指輪を一緒に見に行った経験が有ったのだが、その時目に止まった指輪を覚えていた。
その時にはもう真菜に気があった翔。
その上品なデザインの婚約指輪は田辺のしなやかで綺麗な指先に映えるだろうと思ったのだ。
店に行くと幸いにもその指輪がまだ残っていた。
真菜の指のサイズにも目星をつけていた翔。
そのデザインの指輪の在庫が無ければ今日は諦め、直ぐに真菜の部屋に行こうと考えていた。
たまたま在庫が有ったので、直ぐにそれを持って行けたのはラッキーだった。
急ぎだったので刻印も何も出来なかったが、サイズ直しも刻印も取り敢えず後で出来る。
お母さんの前で婚約指輪を渡せばきっとお母さんも俺が本気だって解ってくれる筈だ。
友里恵の件の資料も持って来たし、お母さんに解って貰える様に必死に説明するつもりだった。
それで翔は真菜の部屋に駆け込んだのだ。
だが、思いの外お母さんは直ぐに受け入れてくれた様子で、翔は拍子抜けだった。
真菜が『上司と部下で元々知り合いでお互い好きあっていてたまたま婚活パーティーで出会ったの』と、運命的は出会いを説明したらしい。
お母さんを安心させる為に言った嘘なのだろうが、『お互い好きあっている』と、真菜が説明した事に、翔は内心悲鳴を上げる程だった。
翔は気が大きくなってしまい、その場で婚約指輪を渡した。
お母さんに理解して貰う為に急いで用意した婚約指輪だったが、殆どお母さんを味方に付ける為の婚約指輪になっていた。
お母さんは俺の味方になってくれた。
すこし姑息な手だとは思ったが、外堀から埋めるのは大事だよな。
フフンと、気分よく鼻歌混じりになってしまう翔だ。
「お母さんったら結婚式は何処でするの? なんて気が早いんだから」
はぁーと溜め息を吐く真菜。
お母さんが乗り気なのは、翔にとっては嬉しい事だ。
「まぁ、でも式場って直ぐ埋まるからな」
「私、結婚式は挙げなくて良いです」
「え? いや、駄目だろ結婚式は挙げようぜ」
えー、真菜のウェディングドレス姿見れないのは嫌だ。
白無垢でも良いけど。
みんなに真菜は俺の嫁だとアピール出来る結婚式を挙げない選択肢などない翔だ。
「じゃあバージンロードはバージンで歩かせてくれるんですか?」
「うーん、それは…… 真菜がバージンで歩きたいなら……」
俺は太腿でしばらく我慢するけど。
結婚式は絶対挙げたいし。
「呼ぶ友達も居ませんし、無駄に金がかかるだけなんで、フォトウェディングにしましょうよ。これならバージン関係ないし」
「フォトウェディングか、良いな」
結婚式は挙げたいが、真菜がフォトウェディングでもやりたいって言ってくれた事が嬉しい翔。
同意した。
やりたくないと否定的な反応より乗り気である事を知れて嬉しい。
フォトウェディングでもやれば、写真をみんなに見せびらかせるしな。
「メモしておきましょう」
真菜はメモ帳に『結婚式はフォトウェディング』と書いておいた。
まだ同棲初めてを二日目なのにな。
気が早いのはお母さんじゃなくて私のようね。
真菜はフフンと苦笑してしまう。
まだ本当に結婚するか解らないのに、楽しみになってしまう。
無事に一ヶ月過ぎて欲しいと真菜は願った。
真菜は助手席に移動している。
「えっと、急に押しかけたりして悪かったな。心配になって居ても立っても居られなかったんだよ」
黙っている真菜に、翔は怒っていると感じ謝る。
「いえ、今日のお母さんテンションおかしかったんですけど、いつもはもう少し落ち着いているんですよ?」
情緒不安定な母親だと思われるのは母が可哀想過ぎてフォローしておく真菜。
あんなにテンションがおかしくなった母を真菜も初めて見た。
「やっぱり真菜に似てたな」
「私は父親似です」
「そう? 雰囲気似てるなって思ったけど」
「そうかしら?」
フフッと苦笑ってしまう真菜。
私って結構情緒不安定に見えるのかしら。
「怒ってないのか?」
話しみると機嫌は悪くなさそうだ。
「何故怒っていると思ったんですか?」
「部屋に押しかけちゃったし、指輪も勝手に選んで来てしまったからな。さっきまで君は黙り込んでいたし……」
「私を心配してくれたんですよね? それに指輪だって。指輪が綺麗で見惚れていただけです。こんなに綺麗な指輪、高かったんじゃないですか?」
「俺が君に贈りたいと思ったんだ。気に入ってくれたなら良かったよ」
真菜は指に光るダイヤモンドの小さな輝きをずっと見てしまう。
値段がどうこうとか、ダイヤモンドが嬉しいとかでは無くて、翔が自分の為に選んで求めた物だと思うと嬉しかった。
それに、合わせたデザインの指輪が翔の指にも輝いている事が何だか嬉しいのである。
「お母さんから公認を頂けたようで良かった」
挨拶が成功して、ホッとする翔。
このタイミングで真菜のお母さんが来たとなると、絶対に自分の有ることない事を友里恵が真菜の母親に吹き込んでいると思っていた翔。
家族ぐるみだと言っていたし、こういう事になるとは想定していた。
だから早く婚約指輪をつけて貰って、俺が本気であると両親に知ってほしいと思っていた訳だが、お母さんの方が早く来てしまった。
連絡を受けた翔は直ぐに店に向かった。
真菜と選ぶつもりで、彼女が気に入った物を買う予定では有ったが、以前、翔は兄の婚約指輪を一緒に見に行った経験が有ったのだが、その時目に止まった指輪を覚えていた。
その時にはもう真菜に気があった翔。
その上品なデザインの婚約指輪は田辺のしなやかで綺麗な指先に映えるだろうと思ったのだ。
店に行くと幸いにもその指輪がまだ残っていた。
真菜の指のサイズにも目星をつけていた翔。
そのデザインの指輪の在庫が無ければ今日は諦め、直ぐに真菜の部屋に行こうと考えていた。
たまたま在庫が有ったので、直ぐにそれを持って行けたのはラッキーだった。
急ぎだったので刻印も何も出来なかったが、サイズ直しも刻印も取り敢えず後で出来る。
お母さんの前で婚約指輪を渡せばきっとお母さんも俺が本気だって解ってくれる筈だ。
友里恵の件の資料も持って来たし、お母さんに解って貰える様に必死に説明するつもりだった。
それで翔は真菜の部屋に駆け込んだのだ。
だが、思いの外お母さんは直ぐに受け入れてくれた様子で、翔は拍子抜けだった。
真菜が『上司と部下で元々知り合いでお互い好きあっていてたまたま婚活パーティーで出会ったの』と、運命的は出会いを説明したらしい。
お母さんを安心させる為に言った嘘なのだろうが、『お互い好きあっている』と、真菜が説明した事に、翔は内心悲鳴を上げる程だった。
翔は気が大きくなってしまい、その場で婚約指輪を渡した。
お母さんに理解して貰う為に急いで用意した婚約指輪だったが、殆どお母さんを味方に付ける為の婚約指輪になっていた。
お母さんは俺の味方になってくれた。
すこし姑息な手だとは思ったが、外堀から埋めるのは大事だよな。
フフンと、気分よく鼻歌混じりになってしまう翔だ。
「お母さんったら結婚式は何処でするの? なんて気が早いんだから」
はぁーと溜め息を吐く真菜。
お母さんが乗り気なのは、翔にとっては嬉しい事だ。
「まぁ、でも式場って直ぐ埋まるからな」
「私、結婚式は挙げなくて良いです」
「え? いや、駄目だろ結婚式は挙げようぜ」
えー、真菜のウェディングドレス姿見れないのは嫌だ。
白無垢でも良いけど。
みんなに真菜は俺の嫁だとアピール出来る結婚式を挙げない選択肢などない翔だ。
「じゃあバージンロードはバージンで歩かせてくれるんですか?」
「うーん、それは…… 真菜がバージンで歩きたいなら……」
俺は太腿でしばらく我慢するけど。
結婚式は絶対挙げたいし。
「呼ぶ友達も居ませんし、無駄に金がかかるだけなんで、フォトウェディングにしましょうよ。これならバージン関係ないし」
「フォトウェディングか、良いな」
結婚式は挙げたいが、真菜がフォトウェディングでもやりたいって言ってくれた事が嬉しい翔。
同意した。
やりたくないと否定的な反応より乗り気である事を知れて嬉しい。
フォトウェディングでもやれば、写真をみんなに見せびらかせるしな。
「メモしておきましょう」
真菜はメモ帳に『結婚式はフォトウェディング』と書いておいた。
まだ同棲初めてを二日目なのにな。
気が早いのはお母さんじゃなくて私のようね。
真菜はフフンと苦笑してしまう。
まだ本当に結婚するか解らないのに、楽しみになってしまう。
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