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新しい布団で目覚めた真菜は眼鏡をかけてカーテンを開ける。
やっぱり景色が凄いなぁ~。
朝から雲の気分が味わえる。
私、昨日から翔さんと同棲を始めたのよね。
そう実感しつつ、クローゼットを開けて服を着替える。
今日から仕事だ。
昨日はあの後、翔に近くの公園やスーパー、デパート等を案内されたり、必要な物を買い揃え、帰ってきたら二人で鍋を用意して食べた。
そして普通に疲れたので、寝た。
同棲初日であるし、翔は手が早いイメージだったので、何かしらしてくると思っていた真菜。
おやすみの軽いキスだけで終わらされてしまい、ちょっと物足りなさを感じた。
いや、物足りないって何よ。
今日は仕事なんだもの、仕事に響くような事出来る訳ないわ。
別に何かしたかった訳でもないのに。
コンコン
「はい!」
ドアをノックされて、思わず大声で返事してしまう真菜だ。
「あ、起きてるか? 朝食出来てるから食べてくれ」
「すみません!」
真菜も着替えを終えたので、ドアを開ける。
朝食を作らせてしまったわ。
「謝らなくて良い。今朝も可愛いな」
翔は真菜の頭を撫でて、チュっとキスする。
「歯磨まだなのに……」
翔からはミントの爽やかな匂いがした。
こういう所を見ると、手慣れてるなぁと思う真菜だ。
今まで付き合ってきた女性にも同じ事をしていたんだろう。
翔は素敵な男性だと思う、家事もしてくれるし、可愛い可愛いと事あるごとにキスしてくれるし、抱きしめてくれる。
「顔を洗ってきます」
真菜は先に洗面台に向かい、歯磨きと顔洗を済ませる。
リビングに向かうと、翔はもう朝食を済ませたらしく、優雅に珈琲を啜りながら新聞を読んでいた。
しかも何紙か有り、今読んでいるのは英字だ。
真菜はビックリしてしまう。
「えっと、頂きます」
英字の新聞には触れずに、真菜は朝食を取る事にした。
「真菜も珈琲飲む?」
「いえ、私は朝から珈琲はちょっと……」
真菜は翔が用意してくれたハムエッグと、サラダ、わかめスープで十分である。
「昨夜はよく眠れた?」
「はい、フカフカの布団で葦草の匂いも爽やかでぐっすりでした」
「なら良かった」
翔は、また別の新聞を読んでいる。
この人、朝から何紙読むのだろう。
「俺の車行くよな?」
「え? 私は徒歩で行きます」
「そうか、解った徒歩でな」
「え?」
「ん?」
まさか翔も徒歩で行く気なのかと、真菜は変な表情をしてしまう。
それは翔も同じであった。
「一緒に出るよな?」
「いえ、私は徒歩で行くので、翔さんは車でどうぞ」
「同じ職場に行くのに別々に出る意味有るか?」
「人に見られて噂されたく有りません」
「君も頑なだな」
溜め息を吐く翔。
真菜は昨日からその一点張りだ。
そもそも翔は隠す気などサラサラ無い。
直ぐにバレれば良いと思っている。
だが、意外と頑固な所も真菜の可愛い所でもあるし、言い出したら曲げない所が有るのは知っている。
真菜は何がなんでも俺と付き合っていると周りに知られたくないらしい。
一ヶ月後に結婚する予定なんだけどなぁ俺は。
「解った。別々に出よう」
ここは仕方なく翔が折れた。
「有難うございました。ご馳走さまでした」
「お粗末様。俺が洗っておくから」
「でも……」
「女性は朝、忙しいだろ? 俺に任せとけよ」
翔は真菜の食べ終わった皿を片付ける。
「それじゃあお言葉に甘えて」
真菜は翔に任せて一旦部屋に戻った。
ドレッサーの前に座る。
と、言っても、多分、翔が今まで付き合って来た女性達と違ってさほど時間がかかる事も無いと思う。
化粧水と乳液は顔を洗った時に済ませたし、真菜は日焼け止めも下地もファンデーションもBBクリーム一本でで済ませる。
後は、眉毛を書いてリップを塗るだけだ。
5分もかけずに終わってしまう。
あとは、髪をちゃんと結い直すだけ。
うん、相変わらずの芋だ。
昨日、美容師さんに教えてもらった化粧にでも挑戦してみようかなと思ったが、翔は似合わないと言っていたし、朝から冒険して失敗した顔で仕事には行きたくない。
うん、いつもの無難な顔で良い。
朝の支度は終了した。
部屋から出る真菜は再びリビングを訪れる。
翔はちょうど食器洗を終えた所だった。
「おお! スッピンも可愛いけど、仕事用の化粧した真菜もやっぱり美人だ」
「病院に行ったほうが良いですよ」
手を拭きながら真菜に歩み寄る翔はべた褒めしてくる。
真菜はもう心配になってきた。
どこかおかしいんじゃないかしらこの人
「何でだよ。美人に美人って言ってるだけだろ」
ハッキリいえば、眼鏡が似合ってないだけなのだ真菜は。
コンタクトにしたら良いのだろうが、他の奴に真菜が美女だとバレるのは嫌なので、黙っておく。
そもそも顔が綺麗とか以前に、翔は真菜の性格が好きなのである。
顔も綺麗だが、性格も綺麗だと思う。
「美人って言うのは翔さんの様な人に言うんですよ」
フフッと笑う真菜。
「えー俺は男だから、美人と言うよりはカッコイイと言われたいんだがなぁ」
ちょっと照れてしまう翔。
真菜、俺のこと美人だと思っているのか。
「カッコイイとも思いますよ」
「え? なんて?」
「カッコイイと思いますよ」
「よく、聞こえなかった」
「聞こえてますよね」
真菜が俺をカッコイイと言ってくれた!
翔はメチャクチャ嬉しくなり、真菜に何度も言わせたくなる。
「もう出ないと、翔さんは後から車で来てくださいね。あと、職場では名前呼びはNGですよ。わかりましたか志田さん」
気づけばいつの間にかお互い名前呼びになっていたし、翔に至っては呼び捨てになっている。
真菜は改めて注意する。
職場で『真菜』なんて呼ばれたら大事件である。
自分も『翔さん』なんて気安く呼ばないように気をつかなければ。
「急に冷たい。カッコイイ志田さんって言ってくれたら解る」
翔は急に甘えた様に言うと、玄関に向かう真菜を抱きしめる。
「カッコイイ志田さん。お願いしますよ」
「解った、俺の可愛い田辺。今日は定時で上がって一緒に指輪を見に行こうな」
「もう離してくださいよ~」
抱きしめられたまま玄関まで向かった真菜だが、このままでは靴が穿けない。
初めての道だから早く出たいのだけど。
「行ってきますのキスは?」
「職場で直ぐに会うじゃないですか」
「行ってきますのキスは真菜からしてほしいなー」
いつも俺からだから、たまには真菜からして欲しい。
そう真菜にせがむ翔。
「はいはい、行ってきますよ」
真菜はチュっと、翔の唇に軽くキスする。
流れでしてしまったが、やっぱり恥ずかしい。
直ぐに顔を反らした。
「いってらっしゃい」
「ちょっと……」
んーっと、翔からも熱いキスをお見舞いされた。
朝からちょっと勘弁して欲しい真菜である。
軽く突き飛ばして玄関を出る羽目になった。
もう! 遅刻したら翔さんのせいだわ!
やっぱり景色が凄いなぁ~。
朝から雲の気分が味わえる。
私、昨日から翔さんと同棲を始めたのよね。
そう実感しつつ、クローゼットを開けて服を着替える。
今日から仕事だ。
昨日はあの後、翔に近くの公園やスーパー、デパート等を案内されたり、必要な物を買い揃え、帰ってきたら二人で鍋を用意して食べた。
そして普通に疲れたので、寝た。
同棲初日であるし、翔は手が早いイメージだったので、何かしらしてくると思っていた真菜。
おやすみの軽いキスだけで終わらされてしまい、ちょっと物足りなさを感じた。
いや、物足りないって何よ。
今日は仕事なんだもの、仕事に響くような事出来る訳ないわ。
別に何かしたかった訳でもないのに。
コンコン
「はい!」
ドアをノックされて、思わず大声で返事してしまう真菜だ。
「あ、起きてるか? 朝食出来てるから食べてくれ」
「すみません!」
真菜も着替えを終えたので、ドアを開ける。
朝食を作らせてしまったわ。
「謝らなくて良い。今朝も可愛いな」
翔は真菜の頭を撫でて、チュっとキスする。
「歯磨まだなのに……」
翔からはミントの爽やかな匂いがした。
こういう所を見ると、手慣れてるなぁと思う真菜だ。
今まで付き合ってきた女性にも同じ事をしていたんだろう。
翔は素敵な男性だと思う、家事もしてくれるし、可愛い可愛いと事あるごとにキスしてくれるし、抱きしめてくれる。
「顔を洗ってきます」
真菜は先に洗面台に向かい、歯磨きと顔洗を済ませる。
リビングに向かうと、翔はもう朝食を済ませたらしく、優雅に珈琲を啜りながら新聞を読んでいた。
しかも何紙か有り、今読んでいるのは英字だ。
真菜はビックリしてしまう。
「えっと、頂きます」
英字の新聞には触れずに、真菜は朝食を取る事にした。
「真菜も珈琲飲む?」
「いえ、私は朝から珈琲はちょっと……」
真菜は翔が用意してくれたハムエッグと、サラダ、わかめスープで十分である。
「昨夜はよく眠れた?」
「はい、フカフカの布団で葦草の匂いも爽やかでぐっすりでした」
「なら良かった」
翔は、また別の新聞を読んでいる。
この人、朝から何紙読むのだろう。
「俺の車行くよな?」
「え? 私は徒歩で行きます」
「そうか、解った徒歩でな」
「え?」
「ん?」
まさか翔も徒歩で行く気なのかと、真菜は変な表情をしてしまう。
それは翔も同じであった。
「一緒に出るよな?」
「いえ、私は徒歩で行くので、翔さんは車でどうぞ」
「同じ職場に行くのに別々に出る意味有るか?」
「人に見られて噂されたく有りません」
「君も頑なだな」
溜め息を吐く翔。
真菜は昨日からその一点張りだ。
そもそも翔は隠す気などサラサラ無い。
直ぐにバレれば良いと思っている。
だが、意外と頑固な所も真菜の可愛い所でもあるし、言い出したら曲げない所が有るのは知っている。
真菜は何がなんでも俺と付き合っていると周りに知られたくないらしい。
一ヶ月後に結婚する予定なんだけどなぁ俺は。
「解った。別々に出よう」
ここは仕方なく翔が折れた。
「有難うございました。ご馳走さまでした」
「お粗末様。俺が洗っておくから」
「でも……」
「女性は朝、忙しいだろ? 俺に任せとけよ」
翔は真菜の食べ終わった皿を片付ける。
「それじゃあお言葉に甘えて」
真菜は翔に任せて一旦部屋に戻った。
ドレッサーの前に座る。
と、言っても、多分、翔が今まで付き合って来た女性達と違ってさほど時間がかかる事も無いと思う。
化粧水と乳液は顔を洗った時に済ませたし、真菜は日焼け止めも下地もファンデーションもBBクリーム一本でで済ませる。
後は、眉毛を書いてリップを塗るだけだ。
5分もかけずに終わってしまう。
あとは、髪をちゃんと結い直すだけ。
うん、相変わらずの芋だ。
昨日、美容師さんに教えてもらった化粧にでも挑戦してみようかなと思ったが、翔は似合わないと言っていたし、朝から冒険して失敗した顔で仕事には行きたくない。
うん、いつもの無難な顔で良い。
朝の支度は終了した。
部屋から出る真菜は再びリビングを訪れる。
翔はちょうど食器洗を終えた所だった。
「おお! スッピンも可愛いけど、仕事用の化粧した真菜もやっぱり美人だ」
「病院に行ったほうが良いですよ」
手を拭きながら真菜に歩み寄る翔はべた褒めしてくる。
真菜はもう心配になってきた。
どこかおかしいんじゃないかしらこの人
「何でだよ。美人に美人って言ってるだけだろ」
ハッキリいえば、眼鏡が似合ってないだけなのだ真菜は。
コンタクトにしたら良いのだろうが、他の奴に真菜が美女だとバレるのは嫌なので、黙っておく。
そもそも顔が綺麗とか以前に、翔は真菜の性格が好きなのである。
顔も綺麗だが、性格も綺麗だと思う。
「美人って言うのは翔さんの様な人に言うんですよ」
フフッと笑う真菜。
「えー俺は男だから、美人と言うよりはカッコイイと言われたいんだがなぁ」
ちょっと照れてしまう翔。
真菜、俺のこと美人だと思っているのか。
「カッコイイとも思いますよ」
「え? なんて?」
「カッコイイと思いますよ」
「よく、聞こえなかった」
「聞こえてますよね」
真菜が俺をカッコイイと言ってくれた!
翔はメチャクチャ嬉しくなり、真菜に何度も言わせたくなる。
「もう出ないと、翔さんは後から車で来てくださいね。あと、職場では名前呼びはNGですよ。わかりましたか志田さん」
気づけばいつの間にかお互い名前呼びになっていたし、翔に至っては呼び捨てになっている。
真菜は改めて注意する。
職場で『真菜』なんて呼ばれたら大事件である。
自分も『翔さん』なんて気安く呼ばないように気をつかなければ。
「急に冷たい。カッコイイ志田さんって言ってくれたら解る」
翔は急に甘えた様に言うと、玄関に向かう真菜を抱きしめる。
「カッコイイ志田さん。お願いしますよ」
「解った、俺の可愛い田辺。今日は定時で上がって一緒に指輪を見に行こうな」
「もう離してくださいよ~」
抱きしめられたまま玄関まで向かった真菜だが、このままでは靴が穿けない。
初めての道だから早く出たいのだけど。
「行ってきますのキスは?」
「職場で直ぐに会うじゃないですか」
「行ってきますのキスは真菜からしてほしいなー」
いつも俺からだから、たまには真菜からして欲しい。
そう真菜にせがむ翔。
「はいはい、行ってきますよ」
真菜はチュっと、翔の唇に軽くキスする。
流れでしてしまったが、やっぱり恥ずかしい。
直ぐに顔を反らした。
「いってらっしゃい」
「ちょっと……」
んーっと、翔からも熱いキスをお見舞いされた。
朝からちょっと勘弁して欲しい真菜である。
軽く突き飛ばして玄関を出る羽目になった。
もう! 遅刻したら翔さんのせいだわ!
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