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真菜の部屋は外階段を上がった二階の角部屋だ。
鍵を開けて中に入る真菜。
「お邪魔します」
翔も後に付いて中に入る。
おもったよりも綺麗な作りだ。
しかし、玄関を入って障子戸を開けたらリビング、居間と言うのだろうか。
そんな作りの部屋に入ったのは初めてで、翔は戸惑う。
「ここに座ってて下さい」
真菜は卓袱台の側に座布団を置くと、翔に座るよう促してから襖を開けて隣の部屋へ向かった。
向こうがキッチンらしい。
翔は大人しく言われた通りに腰を下ろす。
畳の部屋って馴れない。
何だかソワソワしてしまう。
座り方はこれで良いのだろうか。
不躾だと思いつつ、部屋を見渡してしまう翔。
真菜の部屋は荷物が少なく、狭い部屋には卓袱台とタンス、小さな本棚しかない。
真菜が開けた襖からキッチの様子が伺えた。
向こうのドアはトイレかお風呂かな。
エプロンを着た真菜は、冷蔵庫を開けている。
小分けにしたカレーを取り出すと温め直していた。
「あ、お茶を出し忘れた。志田さーん、何飲みます? お茶? 珈琲? ココアも有りますよ~」
不意に振り向いて、声をかけられ、翔は驚いて顔を反らす。
「えっと、じゃあお茶で……」
何でも良い。
びっくりして心臓が飛び出すかと思った。
「はーい」
真菜は緑茶の粉を入れてポットのお湯を注ぎ、翔に持っていく。
「志田さんアレルギーとか有りません?」
「とくに無い」
「良かったです」
真菜はお茶を置いてアレルギーを確かめ、キッチンに戻っていく。
何か凄いドキドキしてしまった。
仕事場で見せる表情より柔らかくて、優しい声だった。
翔は真菜が入れてくれたお茶を飲みつつ、またチラチラと向こうの部屋の様子を伺う。
忙しなく動く真菜に見惚れた。
仕事も出来る上に帰ってきてからも動き回っているんだなぁ。
しばらくし、料理を終えたらしい様子だ。
料理を器によそってお盆に乗せている。
運ぶぐらいは手伝って良いだろうか。
「持つよ」
立ち上がってそう声をかけた。
「お気づかいなく」
真菜は結構ですと、自分で持ってキッチンから出てくる。
それぐらいは頼ってくれても良いのにな。
真菜は人に頼る事が苦手な様に感じる翔。
それとも、頼れる程、俺を信頼してくれてはいないのかもしれないな。
そう思うと少し寂しく感じたが、断られた事を無理強いしても仕方ないので、大人しく腰を下ろす翔だ。
「カレーだけのつもりだったが、随分豪華な夕食だな」
卓袱台一杯に並べられる手料理の数に驚く。
「豪華だなんて、温めたカレーと味噌汁、から揚げだって昨日のをチンしただけですよ。金平ごぼうとひじきは作り置きしてた物だし、今用意したのはサラダぐらいです」
大袈裟ねと真菜は笑う。
「いや、凄いよ。俺なんていつも冷凍食品とか、コンビニ弁当だ。料理なんて偶にしかしないな」
「恋人に作って貰わないんですか?」
「あまり他人に部屋を教えたくなくてね」
アハハっと苦笑する翔。
前に付き合った女と別れたらストーカーになった事が有ってとは、言えない。
「何か見られて困るものでも有るんですか?」
「いや、無いけど……」
勝手に手料理を作って、食べてとか手紙を残されたり、開けてーと、ドアを叩きながら怒鳴られたりするのは困った。
翔の話に真菜は大して興味も無かったらしく、『頂きます』と、夕食を食べ始める。
翔も「頂きます」と、手を合わせてから食事に手をつけた。
口の中に広がる味は濃すぎず薄すぎず、家庭的で翔は口に合うと感じる。
「とても美味しい。君、料理の才能まで有るんだな」
つい、大袈裟に褒めてしまう。
良い嫁さんになるだろう。
出来れば俺の嫁になって欲しい。
毎日、君の手料理を食べたい。
「そうですか? お口に合ったのなら良かったです」
フフンと笑って真菜は食事を続ける。
翔もモクモク食べてくれる。
なんか、ちょっと子犬みたいに見えて来たわ。
真菜が和んでいると、直ぐ側に置いておいた携帯が鳴った。
送信相手は友里恵だ。
日曜の連絡だろう。
「スマホ、確認しなくて良いのか?」
翔は耳が良いらしい。
気になったのか、スマホに視線が行く。
「メールです」
「そうか、お母さん心配しるんじゃないか? 帰ってきたって電話しなくていいのか?」
翔はさっきの電話の内容を気にしていた。
真菜が発した言葉が途切れ途切れにか聞こえなっかったが、多分、夜遅くまで仕事している娘を心配した電話だろうと思う。
「いえ、さっきのは結婚を心配した電話だったので、しなくても良いです」
「ああ、そうなのか」
なるほど~と、頷きながら翔は『ん?』と、なる。
さっきの電話で田辺は『行かないから』とか言っていなかったか?
結婚の話題で行かないからって、もしかて、お見合い話でも進められたのか?
俺の邪推かもしれないが、気になる。
でも、何て聞けば良いんだ?
「じゃあ、俺と結婚するのはどうだ?」
「えっ?」
アレコレ考えている内に勝手に口をついて出てしまった言葉に、焦ったのは翔である。
田辺も何いってんだコイツって顔をしている。
「いや、ほら、だって、俺も独身だし、相手居ないから、どうかなって?」
何言ってるんだ俺は!!
焦ってとんでも無い事を言ってしまっている。
田辺もドン引きしている。
「結婚って、そんな簡単に決めちゃうものなんですか?」
真菜は徐に立ち上がると、翔の側に寄る。
えっ? えっ?
と、混乱する翔。
これはもしかして、オッケーのサインでは。
そうだよな。
こんなに近くに寄る意味が他に思いつかなかった。
「田辺…… 真菜!」
好きな女に寄り添われて何もしない程、枯れていない。
肩を抱き寄せて唇を寄せる。
「あっ、ちょ……」
何かを言おうとした様子の真菜の唇は翔によって塞がれる。
真菜の唇は柔らかく、熱く、官能的で、翔は興奮した。
軽いキスで止められるわけがない。
舌を入れたい。
彼女の口内を堪能したい。
そう思うもの真菜は緊張しているのか、固く唇を閉じてしまっていた。
「真菜、口を開けて」
そう耳元で囁いてお願いしてみる。
「あの…… ルーを足そうとしたんです。ごめんなさい……」
真菜は変な誤解をされたと気づいて、視線を下げる。
どうしよう。
真菜の胸は張り裂けそうな程、ドキドキしていた。
翔も真菜の視線に合わせて下げる。
どうやら翔のカレーの食べ方のせいで、ルーばかり減ってしまい、ご飯が残っていた事に気づいて真菜はルーを足そうとしてくれたらしい。
そして足そうとした所に思いっきり抱きついてキスなんてしたものだから、翔のワイシャツにはカレーのルーが盛大にかかってズボンにまで垂れてしまっていた。
やべーー!! やらかした!!
「ご、ごめん。俺こそ! わぁ!! 本当にごめん!!」
サーッと血の気が引く翔。
勘違いしてキスしちゃうとか、どうかしている。
最悪だ。
完璧に嫌われた。
そう思うものの、初めて照れた表情の真菜を見て、更に興奮してしまう翔だ。
男の性と言うやつである。
でも、真菜も今、俺の事意識してくれてるよな。
やっぱり真菜が好きだ!
照れた顔も可愛。
もっと見たい。
キスしたい!!
鍵を開けて中に入る真菜。
「お邪魔します」
翔も後に付いて中に入る。
おもったよりも綺麗な作りだ。
しかし、玄関を入って障子戸を開けたらリビング、居間と言うのだろうか。
そんな作りの部屋に入ったのは初めてで、翔は戸惑う。
「ここに座ってて下さい」
真菜は卓袱台の側に座布団を置くと、翔に座るよう促してから襖を開けて隣の部屋へ向かった。
向こうがキッチンらしい。
翔は大人しく言われた通りに腰を下ろす。
畳の部屋って馴れない。
何だかソワソワしてしまう。
座り方はこれで良いのだろうか。
不躾だと思いつつ、部屋を見渡してしまう翔。
真菜の部屋は荷物が少なく、狭い部屋には卓袱台とタンス、小さな本棚しかない。
真菜が開けた襖からキッチの様子が伺えた。
向こうのドアはトイレかお風呂かな。
エプロンを着た真菜は、冷蔵庫を開けている。
小分けにしたカレーを取り出すと温め直していた。
「あ、お茶を出し忘れた。志田さーん、何飲みます? お茶? 珈琲? ココアも有りますよ~」
不意に振り向いて、声をかけられ、翔は驚いて顔を反らす。
「えっと、じゃあお茶で……」
何でも良い。
びっくりして心臓が飛び出すかと思った。
「はーい」
真菜は緑茶の粉を入れてポットのお湯を注ぎ、翔に持っていく。
「志田さんアレルギーとか有りません?」
「とくに無い」
「良かったです」
真菜はお茶を置いてアレルギーを確かめ、キッチンに戻っていく。
何か凄いドキドキしてしまった。
仕事場で見せる表情より柔らかくて、優しい声だった。
翔は真菜が入れてくれたお茶を飲みつつ、またチラチラと向こうの部屋の様子を伺う。
忙しなく動く真菜に見惚れた。
仕事も出来る上に帰ってきてからも動き回っているんだなぁ。
しばらくし、料理を終えたらしい様子だ。
料理を器によそってお盆に乗せている。
運ぶぐらいは手伝って良いだろうか。
「持つよ」
立ち上がってそう声をかけた。
「お気づかいなく」
真菜は結構ですと、自分で持ってキッチンから出てくる。
それぐらいは頼ってくれても良いのにな。
真菜は人に頼る事が苦手な様に感じる翔。
それとも、頼れる程、俺を信頼してくれてはいないのかもしれないな。
そう思うと少し寂しく感じたが、断られた事を無理強いしても仕方ないので、大人しく腰を下ろす翔だ。
「カレーだけのつもりだったが、随分豪華な夕食だな」
卓袱台一杯に並べられる手料理の数に驚く。
「豪華だなんて、温めたカレーと味噌汁、から揚げだって昨日のをチンしただけですよ。金平ごぼうとひじきは作り置きしてた物だし、今用意したのはサラダぐらいです」
大袈裟ねと真菜は笑う。
「いや、凄いよ。俺なんていつも冷凍食品とか、コンビニ弁当だ。料理なんて偶にしかしないな」
「恋人に作って貰わないんですか?」
「あまり他人に部屋を教えたくなくてね」
アハハっと苦笑する翔。
前に付き合った女と別れたらストーカーになった事が有ってとは、言えない。
「何か見られて困るものでも有るんですか?」
「いや、無いけど……」
勝手に手料理を作って、食べてとか手紙を残されたり、開けてーと、ドアを叩きながら怒鳴られたりするのは困った。
翔の話に真菜は大して興味も無かったらしく、『頂きます』と、夕食を食べ始める。
翔も「頂きます」と、手を合わせてから食事に手をつけた。
口の中に広がる味は濃すぎず薄すぎず、家庭的で翔は口に合うと感じる。
「とても美味しい。君、料理の才能まで有るんだな」
つい、大袈裟に褒めてしまう。
良い嫁さんになるだろう。
出来れば俺の嫁になって欲しい。
毎日、君の手料理を食べたい。
「そうですか? お口に合ったのなら良かったです」
フフンと笑って真菜は食事を続ける。
翔もモクモク食べてくれる。
なんか、ちょっと子犬みたいに見えて来たわ。
真菜が和んでいると、直ぐ側に置いておいた携帯が鳴った。
送信相手は友里恵だ。
日曜の連絡だろう。
「スマホ、確認しなくて良いのか?」
翔は耳が良いらしい。
気になったのか、スマホに視線が行く。
「メールです」
「そうか、お母さん心配しるんじゃないか? 帰ってきたって電話しなくていいのか?」
翔はさっきの電話の内容を気にしていた。
真菜が発した言葉が途切れ途切れにか聞こえなっかったが、多分、夜遅くまで仕事している娘を心配した電話だろうと思う。
「いえ、さっきのは結婚を心配した電話だったので、しなくても良いです」
「ああ、そうなのか」
なるほど~と、頷きながら翔は『ん?』と、なる。
さっきの電話で田辺は『行かないから』とか言っていなかったか?
結婚の話題で行かないからって、もしかて、お見合い話でも進められたのか?
俺の邪推かもしれないが、気になる。
でも、何て聞けば良いんだ?
「じゃあ、俺と結婚するのはどうだ?」
「えっ?」
アレコレ考えている内に勝手に口をついて出てしまった言葉に、焦ったのは翔である。
田辺も何いってんだコイツって顔をしている。
「いや、ほら、だって、俺も独身だし、相手居ないから、どうかなって?」
何言ってるんだ俺は!!
焦ってとんでも無い事を言ってしまっている。
田辺もドン引きしている。
「結婚って、そんな簡単に決めちゃうものなんですか?」
真菜は徐に立ち上がると、翔の側に寄る。
えっ? えっ?
と、混乱する翔。
これはもしかして、オッケーのサインでは。
そうだよな。
こんなに近くに寄る意味が他に思いつかなかった。
「田辺…… 真菜!」
好きな女に寄り添われて何もしない程、枯れていない。
肩を抱き寄せて唇を寄せる。
「あっ、ちょ……」
何かを言おうとした様子の真菜の唇は翔によって塞がれる。
真菜の唇は柔らかく、熱く、官能的で、翔は興奮した。
軽いキスで止められるわけがない。
舌を入れたい。
彼女の口内を堪能したい。
そう思うもの真菜は緊張しているのか、固く唇を閉じてしまっていた。
「真菜、口を開けて」
そう耳元で囁いてお願いしてみる。
「あの…… ルーを足そうとしたんです。ごめんなさい……」
真菜は変な誤解をされたと気づいて、視線を下げる。
どうしよう。
真菜の胸は張り裂けそうな程、ドキドキしていた。
翔も真菜の視線に合わせて下げる。
どうやら翔のカレーの食べ方のせいで、ルーばかり減ってしまい、ご飯が残っていた事に気づいて真菜はルーを足そうとしてくれたらしい。
そして足そうとした所に思いっきり抱きついてキスなんてしたものだから、翔のワイシャツにはカレーのルーが盛大にかかってズボンにまで垂れてしまっていた。
やべーー!! やらかした!!
「ご、ごめん。俺こそ! わぁ!! 本当にごめん!!」
サーッと血の気が引く翔。
勘違いしてキスしちゃうとか、どうかしている。
最悪だ。
完璧に嫌われた。
そう思うものの、初めて照れた表情の真菜を見て、更に興奮してしまう翔だ。
男の性と言うやつである。
でも、真菜も今、俺の事意識してくれてるよな。
やっぱり真菜が好きだ!
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キスしたい!!
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