18 / 36
18話
しおりを挟む白亜を空気の部屋に入れたマーメはニコニコしながら鼻歌交じりに白亜の足をマッサージする様になでていた。
「お兄さんに立場を奪われそうって聞いたけど…… 大丈夫?」
白亜は聞こうかどうか迷った口を開く。
自分とは逆だが、同じような目にあったばかりで白亜の気も重たくなる。
出来れば忘れてしまいたい。もう全て忘れてただのハクとして生きて行きたい。
王とは孤独なものだった。
戻りたいとも思っていない。
家臣も民も、すべてが自分を崇め、大事にしてくれたが、白亜は神ではなく、人なのだ。それが孤独で寂しかった。
だから唯一血のつながった弟を可愛がって心の拠り所にしてたのかもしれない。
だからきっと疎まれてしまったのだ。
裏柳とて同じ事である。乳兄弟であった裏柳は自分を王子としてではなく、ただ一人の人間として見てくれていた気がする。
それであれ程までに欲しがってしまったのだろう。
結局、僕は一人ぼっちだ。
今はマーメイにきっと依存してしまっている。
僕は寂しがりで、一人ぼっちは嫌なのに。
きっとマーメイも僕を疎く思って、いつかは立ち去ってしまうのだ。
だから拠り所にしてはいけない。
白亜はそう思っていた。
「え? 兄さんが? 蛸が言った? 何か勘違いしてるね」
クスっと苦笑し見せるマーメイ。
「私の事、心配してくれて有難う。でも大丈夫。だからそんな顔しないで、笑って」
マーメイは、ハクの顔が曇っているのは自分を心配しているのだろうと思い、頭を撫でる。
「兄さんは私を心配してくれているんだよ。兄さんは元々αで、私が産まれたせいでΩに変わってしまったんだけど、政略の為に他所の種族のαに嫁いでしまって、嫌な思いもしてるだろうね。だから私は兄さんを取り戻したい。多分、蛸もそう思っているんだ。蛸は兄さんが好きだったみたいだから。兄さんはどうか知らないけどね」
困った様に微笑むマーメイ。
白亜はそれでもマーメイが心配だ。
自分も弟に騙され船から突き落とされるあの瞬間まで、弟にあそこまで恨まれ邪魔に思われていると思わなかった。
そこまで王位が欲しかったのなら譲ってあげたのに……
僕だって気づいていなかったのだから、きっとマーメイもお兄さんに恨まれているのを気づいて無いのかも知れない。
「こんな話はもうやめて、楽しい話しをしよ。一人暮らしはどうだった?」
フフフっと笑うマーメイは話題を変えて、白亜の話を聞きたがる。
「料理が楽しい事に気づいた。マーメイは普通の人間が食べる料理は食べられるの?」
「私は生の魚貝しか食べられないんだよ」
「そうなんだ……」
いつも出してくれていた料理はどうやら白亜の為に作ってくれていたらしい。
折角作れるようになったのに、食べて貰えないのか……
白亜は少し残念だ。
「ハクが可愛い洋服を着ている姿を見るの楽しみにしてたんだけど、明日見せてね」
マーメイは漆黒が可愛い洋服を揃えたと手紙を貰ってから、どんな服なんだろう、きっと可愛い服はハクに似合うだろうなと、思っていたのだ。
拾った時も綺麗な洋服を着ていた。
昆布を身に着けているのも露出が多くてセクシーではあるが、何方かと言えば露出してない方が逆にセクシーなんではないかと考えるマーメイ。
あー、駄目駄目。
私、急にどうしたんだろう。
繁殖期なのかな?
最近、そんな事ばかり考えてしまう。
ハクは人間だし、Ωでも無いと言うのに、私はハクに発情し、ハクと子づくりしたいと思ってしまう。
どうかしているのだ。
「僕よりマーメイに似合いそうな服だよ」
クスクス笑うハク。
ハクには私がどう映っているのか、少し気になるマーメイだった。
0
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説


そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。


楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。


例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…
東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で……
だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?!
ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に?
攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる