人魚と捨てられた王様

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17話 ※蛸責め(未遂)

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 目覚めると、そこは何か檻のような場所であった。
 水の中なのに息が出来る……
 マーメイの作ってくれた空気の部屋の様に魔法を使っているのだろうか。
「ごぼごぼ……」
 何か喋ろうと思っても、水の中では喋れない様だ。
 だからマーメイは空気の部屋を作ってくれたのかな。
「へー、お前がメイのお気に入りの子か」
 大きな蛸は上半身が人間の様な魔物であった。
 半蛸人とでも呼べば良いのだろうか。
「俺は赤の海の覇者。メイとは幼馴染みたいなもんだ。最近、アイツは弱くなった。このままじゃ、兄に立場を奪わそうだ。アイツの兄はΩだが、元はαだった。人魚は一つの群れにα一人と決まっているらしくてな、αが二人になれば、弱い方がΩになる。このままでは立場が逆転し、メイがΩになるかも知れない」
「ごぼ……」
「まぁ人魚は一夫多妻制だから、皆父親は一緒だし、兄弟とかそういう感覚はねぇが、アイツの兄はメイを溺愛しててな、Ωに落として自分の番にしたがってんだよ」
「ごぼ! ごぼごぼ」
「何を言っているか解かんねぇが、俺はΩ落ちして兄に手篭めにされるメイなんて見たくねぇんだ。テメェには消えてもらうぜ!」
「ごぼごぼ!?」
 マーメイが弱くなっているのは心配であるし、兄に狙われているなんて大変である。どうにかしたいと思う白亜だが、何故今自分が狙われているのかは良く解らない。
 何故自分は半蛸人に消されそうになっているんだ!?
「流石にメイが気に入っただけあって別嬪じゃねぇか。ただ殺すだけじゃつまんねえよな。コイツとでも遊んでろ」
 白亜が閉じ込められている部屋の中には蛸が投げ込まれる。
 蛸は白亜に纏わり付き、どういう訳か服を溶かしてしまう。
 何だこれ!? 怖い。
「ごぼ、こぼごぼ!! ごぼ!!」
(嫌だ、怖い!! 助けて!!)
 白亜に纏わり付く蛸は、沢山の足を白亜の体に這わせて手首や足に纏わり付く。
 後ろ手に拘束され、足首に纏わり付いた触手によって白亜の足は大きく開かされた。
 吸盤が体を這う、そして胸の飾りに吸い付いた。
「ん……」
(なんでこんな……) 
 訳か解らない白亜、だが体が甘く痺れる。
 蛸が出すヌルヌルとしたものに何かの作用があるのかもしれない。
「絶景だねぇ、メイにも見せてやりてぇな」
 アハハと、笑う半蛸人。
「そうだねぇ、凄い絶景だよ。私の為に有難う。消えてくれる?」
 半蛸人は耳元で声がし、ハッとしたが、既に腕を拘束され、首元に刃物を突き付けられていた。
「メイ……」
「早くあの蛸をハクから離して、そして私の眼の前から消えて」
 ニコニコと笑っている様に見えて、全然笑っていないマーメイ、こんなに怒っている彼は珍かった。
 これ以上怒らせると、もしかしたら赤の海は地図上から消える事になるかも知れない。
 半蛸人は青ざめ、直ぐ蛸に白亜から離れる様に指示を出す。
 蛸は名残惜しそうにユルユルと、白亜から離れた。
「ごぼ、ごぼ、ごぼ……」
 ハァハァハァと、荒い息を出したいがそれが全て気泡になっている白亜は顔真っ赤にし、倒れ込む。
 目には生理的な涙を浮かべており、目が霞んで何も解らない様子だ。
「ハク!」
 マーメイは白亜の閉じ込められていた檻を破壊し、近づくと優しく抱きしめた。
「苦しかったね。もう大丈夫」
 白亜を優しく撫でるマーメイだが、白亜は敏感になっており、それでも感じる様で震えている。
 声が出せなければ苦しいだろうと、マーメイは白亜に空気のヘルメットを被せて半蛸人から掛けられている魔法を解いた。
「あっ、やっ…… 蛸がぁ……」
「蛸じゃない。私は人魚」
「ふぇ?」
 涙目で前が良く見えないが、声がマーメイだと気づく。
「マーメイ?」
「うん、そう。思い出してくれた? 私、人魚のマーメイ」
「マーメイこそ僕をほったらかしにして! このあんぽんたん!」
「あんぽんたん?」
「おたんこなす!」
「??」
 白亜は知る限りの罵詈雑言を飛ばしている様だが、マーメイにはよく解らないし、何か可愛い事を言っている様にしか聞こえない。
「えっと、ごめんね? 私に会いたく無かった? 蛸に襲われるのが気持ちよかったの? 邪魔しちゃったかな? でも、あんな蛸より私の方が気持ちよくしてあげられると思う!」
「マーメイの馬鹿ぁ早く会い来てよ~」
 うわーんと、泣き出しマーメイの胸板をポカポカ殴る白亜だが、マーメイの胸板は意外と胸筋が硬くて、白亜の手のほうが痛かった。
「ごめんね。僕も早く会いに行きたかったんだけど、突然色々忙しくてね」
 白亜の機嫌を良くしようと、背中を撫でたり頭を撫でたり色々してみるマーメイ。
「忙しいって何? 僕の事なんてもうどうでも良いんだ。厄介払出来たって清々したんでしょ」
 フンと、顔反らす白亜はプンスカしている。
 マーメイは困ってしまった。
 そんな訳ないのだ本当に、信じられない程、急に忙しかったのだ。マーメイも何かの陰謀じゃないかと思う。
 私とハクを引き離そうと誰か企んでいるじゃないかと……
 いや、そう言えば居た。
「蛸、まだ居たの?」
 半蛸人が居たんだった。
「幼馴染相手に酷いんじゃないか? 俺の名前わすれたのかよ」
「覚えてやる必要ある? 幼馴染に喧嘩売ったのそっちでしょ」
 蛸がずっと居てイライラするマーメイ。何勝手に私の縄張りに入り込んで居座っているんだ。しかもハクに酷い事をして。
「俺はお前を心配して……」
「余計なお世話、目障りだから消えてって言ってるの」
 キッと、全力で威嚇するマーメイ。
 流石にマーメイの全力の威嚇に肝が冷える半蛸人は渋々その場を離れる。
 半蛸人が見えなくなり、やっとホッとするマーメイは白亜を見る。
 白亜が青ざめプルプル震えている事に気づいた。
「どうしたの?」
「マーメイ怖い」
 どうやら蛸を威嚇したらハクにまでとばっちりが行ってしまった様だ。
 蛸め!!
 蛸のせいでハクに怖がられてしまった。マーメイは若干落ち込みつつ、白亜を連れて自分の城に帰る事にする。
「今日は私の部屋にお泊りしてね」
 マーメイは怖くないよ~とニコニコしなながら白亜を運ぶのだった。
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