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15話
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用事を終えた漆黒はやっと裏柳と黒柳が住む隠れ家へとやってきた。
ワニが作ってくれたケーキを喜んでくれるだろうか。羊はお勉強セットを、虎は剣を、鳥の長は安眠枕を持たせてくれた。
剣やお勉強セットは嫌がられそうだな。
漆黒は苦笑しつつ、家のドアをノックした。
「お父さん、ちょうど良かった。お母さんを止めてよ!」
慌てた様子でドアを開けたのは黒柳だった。何やら焦った様子で漆黒を家に引っ張り込む。
最近はもうパパと呼んでくれなくなった。
少し寂しい。
「どうしたんだ?」
それにしても裏柳を止めろとは……
「裏柳? 何処か行くのか?」
何か、討ち入りにでも行くかのような熱気を感じる。
裏柳は伸びていた髪をハサミでバッサリ何も考えずに切ったのだろう。酷い有様である。
以外に不器用なんだから慣れない事はしないで欲しい。
それに何故か白の国の正装をしている。結婚式か葬式かお祝い事ぐらいにしか着ないやつだ。
「白亜の敵討ちをしてくる!」
「白亜? アイツどうかしたのか?」
裏柳は何かブチギレた様子である。
漆黒でさえちょっと怖い。
「弟君に荒れ狂う海に突き落とされたんだ。アイツ、ただでさえ金槌なのに! 許せん!! 遺体も上がらないって言うんだ! 俺が探し行ってやらないと。ちゃんと供養して、それから、それから……」
うう~と、涙ぐむ裏柳は涙を拭う。
「俺のせいだ。俺のせいで白亜が、だからあまり弟を可愛がりすぎるなって言ったんだ~」
漆黒に抱きつくと、ポロポロ泣き出す。
「ああ……」
白亜は確か弟を溺愛してたな。似てない兄弟で、白亜は白の国の王子らしく華やかで天真爛漫、まぁ、中身は腹黒であったが、頭の回転も早く、敵と味方の区別も直ぐつけられる奴だった。
だが弟の方は捻くれてた暗い男だった。性もαでも無ければΩでもないただのβ。白の国においてはΩよりもβのΩ方がカーストは低くなる。
見た目もパッとしない、暗い男、しかもβともなれば影も薄い。
白亜は可愛がっていたが、正直他からは疎まれていた。
しかも自分がパッとしないのは兄である白亜のせいだと思い込み、白亜を煙たがっていたぐらいだ。
何の努力もせず、全てを人のせいにするような奴だ。あれはどうしようも無かったな。
裏柳もそう思っていたのだろう。極力弟とは会わさない様にしていた風に思う。
「白亜~、白亜~」
裏柳は白亜の名前を呼びながら泣く。
漆黒も裏柳が白亜を大事に思っていた事は知っていた。それは恋や愛では無く、家族に向けるような親愛である。
その気持ちは漆黒にも解かる。
漆黒にとっても白亜は幼馴染であった。確かに憎らしくもあったが、良きライバルでもあった。
裏柳の事が無ければ友達にもなれていただろう。
白亜は頭が良く、たまに話しが会う事もあった。
鷹狩の数を競ったのも、どちらが先に数式が解けるか対決したのも、今思えば良い思い出である。
裏柳も何だか目頭が熱くなる。
白亜は決して悪い奴では無かった、裏柳の事になると盲目的になってしまうが、それは自分も同じである。
同じ王としては尊敬出来る所もあった。
白亜は国民の事を考え、政治もしっかりしていた。国民から愛され、白亜は立派な王であった。
それに、白の国では魔法は使えないが祈りは捧げる。
白亜に力があったのかどうか解らないが、白亜が王になり、祈り捧げてから、白の国は平和そのもので、事件があったと言えば漆黒が引き起こした神隠し騒動だけである。
事実がどうあれ、平和なのは白亜が祈りを捧げているからだと国民は思っていた。
それが弟君に謀反をおこされ、崩御させられた上に、次の王はただのβ。Ωならまだ良かったが、βがαを産む可能性は限りなくゼロである。それにアレは政治などまともに出来る奴では無かった。
内戦になるかもしれない。そうでなくても白の国の王が尊敬できない様な者なら誰も従わず、他国から攻め入られる事も有る。そうなると白の国はひとたまりもないだろう。
いよいよ大変な事態だ。
だが、今はそんな事よりも、白亜の事である。
漆黒とて白亜の事は恨んでいない。せめて亡骸たけでも見つけて弔ってやらなければ。
「俺は、白亜の側近として城に戻り、白亜の捜索の指示と……」
「落ち着け裏柳、今お前が行っても危険な事に巻き込まれるだけだ。大人しくしていろ。白亜の事は俺がメイに頼んで……」
今にも家を飛び出しそうな裏柳、腰に黒柳がまとわりついて引き止めていた。
漆黒も引き止める。
海の事ならば人魚の長であるメイに頼むのが一番だ。彼なら直ぐに見つけててくれる筈である。
「メイ? 人魚の長の?」
「ああ…… でも、ちょっと待ってくれ」
何か引っかかる。
マーメイは良く溺れた人間は助けていたはずだ。
荒れた海を遠くまで出るとは思えない。
白亜を海に沈めたのは白の国の海域だろう。
そうなると、あの辺りはメイの敷地みたいなものだ。
メイが見逃すと思えない。
助けた筈だが、白の国の浜辺に帰していないと言うことだ。
何故だ?
白亜が目覚めるまで様子を見て、弟に殺害されかけたと知って別な場所に逃した?
いやいや、ちょっと待て。
今日合ったメイの女。『ハク』まさか……
言われてみれば背格好も声が似ていた。
「どうしたんだ?」
何かを考える様子の漆黒に首を傾げる裏柳。
「いや、白亜の捜索をメイに頼むよ。だから裏柳は大人しくここで報告を待ってくれ。それに今日は黒柳の誕生日だろ? 誕生日会をする約束じゃないか」
「うん…… 解った。料理を作るから、黒柳と遊んでて」
裏柳は落ち着いた様で、漆黒から離れるとキッチンに向かうのだった。
あの男が白亜だったのか、まだ確証がない。
確認してから裏柳に伝えた方が良いだろう。無事に生きていると思わせて、違ったら余計に裏柳が傷付いてをしまう。
もしかしたらメイは白亜を浜辺に返したが、そこで見つかり暗殺されているかもしれない。
「お父さん、羊と虎とワニの話を聞かせて」
漆黒は来る度にが家臣達の話をするので、黒柳は会ったことも無い羊と虎とワニが大好きになっている。
「ああ、そうだな。誕生日プレゼントを預かったんだ」
「どうせ勉強セットとか剣でしょ」
アハハと笑う黒柳だ。
ワニが作ってくれたケーキを喜んでくれるだろうか。羊はお勉強セットを、虎は剣を、鳥の長は安眠枕を持たせてくれた。
剣やお勉強セットは嫌がられそうだな。
漆黒は苦笑しつつ、家のドアをノックした。
「お父さん、ちょうど良かった。お母さんを止めてよ!」
慌てた様子でドアを開けたのは黒柳だった。何やら焦った様子で漆黒を家に引っ張り込む。
最近はもうパパと呼んでくれなくなった。
少し寂しい。
「どうしたんだ?」
それにしても裏柳を止めろとは……
「裏柳? 何処か行くのか?」
何か、討ち入りにでも行くかのような熱気を感じる。
裏柳は伸びていた髪をハサミでバッサリ何も考えずに切ったのだろう。酷い有様である。
以外に不器用なんだから慣れない事はしないで欲しい。
それに何故か白の国の正装をしている。結婚式か葬式かお祝い事ぐらいにしか着ないやつだ。
「白亜の敵討ちをしてくる!」
「白亜? アイツどうかしたのか?」
裏柳は何かブチギレた様子である。
漆黒でさえちょっと怖い。
「弟君に荒れ狂う海に突き落とされたんだ。アイツ、ただでさえ金槌なのに! 許せん!! 遺体も上がらないって言うんだ! 俺が探し行ってやらないと。ちゃんと供養して、それから、それから……」
うう~と、涙ぐむ裏柳は涙を拭う。
「俺のせいだ。俺のせいで白亜が、だからあまり弟を可愛がりすぎるなって言ったんだ~」
漆黒に抱きつくと、ポロポロ泣き出す。
「ああ……」
白亜は確か弟を溺愛してたな。似てない兄弟で、白亜は白の国の王子らしく華やかで天真爛漫、まぁ、中身は腹黒であったが、頭の回転も早く、敵と味方の区別も直ぐつけられる奴だった。
だが弟の方は捻くれてた暗い男だった。性もαでも無ければΩでもないただのβ。白の国においてはΩよりもβのΩ方がカーストは低くなる。
見た目もパッとしない、暗い男、しかもβともなれば影も薄い。
白亜は可愛がっていたが、正直他からは疎まれていた。
しかも自分がパッとしないのは兄である白亜のせいだと思い込み、白亜を煙たがっていたぐらいだ。
何の努力もせず、全てを人のせいにするような奴だ。あれはどうしようも無かったな。
裏柳もそう思っていたのだろう。極力弟とは会わさない様にしていた風に思う。
「白亜~、白亜~」
裏柳は白亜の名前を呼びながら泣く。
漆黒も裏柳が白亜を大事に思っていた事は知っていた。それは恋や愛では無く、家族に向けるような親愛である。
その気持ちは漆黒にも解かる。
漆黒にとっても白亜は幼馴染であった。確かに憎らしくもあったが、良きライバルでもあった。
裏柳の事が無ければ友達にもなれていただろう。
白亜は頭が良く、たまに話しが会う事もあった。
鷹狩の数を競ったのも、どちらが先に数式が解けるか対決したのも、今思えば良い思い出である。
裏柳も何だか目頭が熱くなる。
白亜は決して悪い奴では無かった、裏柳の事になると盲目的になってしまうが、それは自分も同じである。
同じ王としては尊敬出来る所もあった。
白亜は国民の事を考え、政治もしっかりしていた。国民から愛され、白亜は立派な王であった。
それに、白の国では魔法は使えないが祈りは捧げる。
白亜に力があったのかどうか解らないが、白亜が王になり、祈り捧げてから、白の国は平和そのもので、事件があったと言えば漆黒が引き起こした神隠し騒動だけである。
事実がどうあれ、平和なのは白亜が祈りを捧げているからだと国民は思っていた。
それが弟君に謀反をおこされ、崩御させられた上に、次の王はただのβ。Ωならまだ良かったが、βがαを産む可能性は限りなくゼロである。それにアレは政治などまともに出来る奴では無かった。
内戦になるかもしれない。そうでなくても白の国の王が尊敬できない様な者なら誰も従わず、他国から攻め入られる事も有る。そうなると白の国はひとたまりもないだろう。
いよいよ大変な事態だ。
だが、今はそんな事よりも、白亜の事である。
漆黒とて白亜の事は恨んでいない。せめて亡骸たけでも見つけて弔ってやらなければ。
「俺は、白亜の側近として城に戻り、白亜の捜索の指示と……」
「落ち着け裏柳、今お前が行っても危険な事に巻き込まれるだけだ。大人しくしていろ。白亜の事は俺がメイに頼んで……」
今にも家を飛び出しそうな裏柳、腰に黒柳がまとわりついて引き止めていた。
漆黒も引き止める。
海の事ならば人魚の長であるメイに頼むのが一番だ。彼なら直ぐに見つけててくれる筈である。
「メイ? 人魚の長の?」
「ああ…… でも、ちょっと待ってくれ」
何か引っかかる。
マーメイは良く溺れた人間は助けていたはずだ。
荒れた海を遠くまで出るとは思えない。
白亜を海に沈めたのは白の国の海域だろう。
そうなると、あの辺りはメイの敷地みたいなものだ。
メイが見逃すと思えない。
助けた筈だが、白の国の浜辺に帰していないと言うことだ。
何故だ?
白亜が目覚めるまで様子を見て、弟に殺害されかけたと知って別な場所に逃した?
いやいや、ちょっと待て。
今日合ったメイの女。『ハク』まさか……
言われてみれば背格好も声が似ていた。
「どうしたんだ?」
何かを考える様子の漆黒に首を傾げる裏柳。
「いや、白亜の捜索をメイに頼むよ。だから裏柳は大人しくここで報告を待ってくれ。それに今日は黒柳の誕生日だろ? 誕生日会をする約束じゃないか」
「うん…… 解った。料理を作るから、黒柳と遊んでて」
裏柳は落ち着いた様で、漆黒から離れるとキッチンに向かうのだった。
あの男が白亜だったのか、まだ確証がない。
確認してから裏柳に伝えた方が良いだろう。無事に生きていると思わせて、違ったら余計に裏柳が傷付いてをしまう。
もしかしたらメイは白亜を浜辺に返したが、そこで見つかり暗殺されているかもしれない。
「お父さん、羊と虎とワニの話を聞かせて」
漆黒は来る度にが家臣達の話をするので、黒柳は会ったことも無い羊と虎とワニが大好きになっている。
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