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11話
しおりを挟む「……まぁ、そういう事だ。今んとこ不備はねぇんだろ? じゃあ、俺はそろそろ帰るぜ?」
「あ、ああ……」
家を出る漆黒、白亜も着いて一緒に出る。
浜辺に出ると、直ぐ側をマーメイは陽気に歌いなが泳いでいる。
「あ、ハク~ 漆黒~」
此方に気づき、手を振ていた。
「メイ、じゃ俺は帰るよ」
「お嫁さんと息子さんにも宜しく伝えて下さい」
歌う様に笑うマーメイに手を上げ、漆黒は一瞬で姿を消す。
なんだ、嫁と息子が居るのか。
少し安心するが、何だか胸がモヤモヤする。なんだろうこの不快感は。
「ハク? 浮かない顔だね。家、気に入らなかったの?」
白亜の様子にマーメイは心配し、尋ねる。
何だか元気が無い。少し苛立っている様にも見えた。
「まぁまぁだった」
凄く良い家だったけど、言いたくない。
「要望が有ったら伝えてね。漆黒、直してくれると思う」
「あの漆黒って人、マーメイは信頼してるんだね」
「うん、漆黒は優しくて、良い人。顔は怖いかも知れないけど、お面なんだよ。本当は凄い男前なんだ。陸の国を護る魔王は恐ろしく怖い独裁的な男だと聞いてたから会う時はビクビクしたけど、一目見て解ったよ。情に厚い人なんだ」
「へー」
漆黒の事を話すマーメイはいつになく饒舌で、白亜は面白く無かった。
「今日はここに泊まる? 一度海に帰る?」
「ここに住んで見る」
「解った! じゃあ、僕は帰るね。何か有ったら呼んで。直ぐ来るから」
マーメイは、白亜に手を振ると、スーッと海に向かい泳ぎ、直ぐに見えなくなってしまった。
簡単に置いていくんだ……
白亜はなんだが寂しい。
マーメイが好きなのは僕だけなのかも。
ふーんだ!
別に僕だってマーメイの事好きだけど、大好きって訳じゃないし!
僕が心から愛するのはやっぱり裏柳だけだもん!
白亜は少し不貞腐れつつ、漆黒が建てくれた家に入る。
寝室に向かうとベッドに入る。
悔しい程フカフカで寝心地の良いベッドである。
城の自室のベッドより良い気がする。
これ、何で出来てるの?
白亜は知らないが、極上鳥の長の羽毛布団である。
漆黒が海の長のお気に入りらしい人間の家を作ると聞かされた鳥の長がそれならばと献上した一品である。
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