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9話
しおりを挟む陸に上がり白亜には海藻で作ったベールをかぶせる。
海藻はすごく重宝する。今、白亜が着ている服の様なものも海藻である。
「私はここで日向ぼっこをしているよ」
そう言うマーメイはこれ以上陸に上がれない。
浅瀬での日光浴は気持ちいいが、これ以上がると鰭が傷付いてしまう。
付いていけないのが少し寂しい。
白亜も少し不安そうな表情を見せたが、マーメイの手を離れ、島に踏み入った。
白い砂浜から少し入った所に家が見えた。
ここだろうか。
湧き水が出ている。綺麗な場所だ。
「ああ、お前が長の女か?」
そう、声を掛けられ。振り向く白亜。
何だか知らないが無性に腹が立った。
女と言われた事では無く、本当に解らないが腹が立つのだ。
顔は般若の様に恐ろしい。化け物だった。
だが怖いとかではなくて、ぶん殴りたい気分だ。
「悪い、長が美人で可愛いん子だと惚気を書いてくるから本当に女だと思ったんだが…… 男か? しかもαじゃねぇか」
「αの癖に男に飼われるなんて恥知らずだと?」
思わず棘のある言い方をしてしまう白亜。
内心では態々家まで建ててくれたのだからお礼ぐらい言わなければとは、思うが、『有難う』なんて死んでも言いたくな気持ちだ。
僕は本当にどうしたのだろうか。
白亜自身も困惑していた。
「……失言だったな。そう警戒しないでくれ。俺は漆黒。メイに頼まれてな。家を建てただけなんだ。中を説明したら直ぐに撤退してやるよ」
漆黒と名乗る男は申し訳無さそうに頭を下げつつ、家の扉を開けて中に入るようにと促してた。
「メイ?」
そんな事より、名前の呼び方が気になってしまう白亜。
「長の事だ」
当然の様に言う漆黒。
本当にイチイチ癇に障る男だと思った。
マーメイの事を愛称で呼んでいるのか、そんなに仲が良いのか。
どう言う仲なんだ。
そう、勘ぐってしまう白亜だ。
漆黒もえらく険悪な様子のハクと言う子に困惑してしまっていた。
出会った瞬間に毛を逆撫でてシャーと牙を剥いている猫の様なのだ。
顔が怖いからとか、そういう理由では無さそうである。
嫌われている様だ。
それに、何だか此方としてもあまりいい感じを受けない。
顔も見えないが、あまり近づきなく無い。本能的に嫌だった。
生理的に受け付けないと言うやつだろう。
だが相手は他でも無いメイの大事な人、漆黒とて無下には出来ない。
兎に角、さっさと室内を説明し、不備が有るなら直すが、兎に角さっさと帰りたかった。
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