人魚と捨てられた王様

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 白の王国の王、白亜には忘れられない人が居る。
 自分の幼馴染であり、従者をしていた恋人である。
 やっと婚約し、結婚まで漕ぎ着けた彼は、神隠しに合ってしまった。
 一度目は帰ってきてくれた。二度目も。だから三度目も帰って来てくれる筈。
 白亜は裏柳の帰りを待ち続けていた。
 最後に姿を消した時、置き手紙に『愛した人が居ます。ごめんなさい。白亜を愛す事は出来ません』と、裏柳は書き置きを残して行ったが、白亜はその手紙を悪者に脅されて書いたに違いないと思い込んでいた。
 裏柳を探し続ける白亜に家臣たちも不安感を懐き始めていた。 
 いつまで経っても一人に心を砕く白亜に婚期を逃してしまうのでは無いかと焦る声が出始める。
 白亜はそれでも政治や国の事を疎かにはせず目配りもちゃんとしているので、そこは評価されていた。
 だが、裏柳を心配するあまり城を離れて探しに出かける事が増え、その間に弟である第ニ王子が暗躍し、気づけば白亜の立場は危なくなっていた。
 しまった嵌められた!
 と思った時にはもう遅く、荒れ狂う海に投げ出されていたのだ。

 白亜の弟は強かであった。兄の白亜は実力も有り、優秀で容貌も華やか。国民から愛されるていた。幼い頃から兄の白亜ばかりが褒め称えられ、自分は空気の様に扱われていると。勝手に兄への憎悪を膨らませていたのだ。
 何事でも冷静に的確な判断をくだす白亜であったが、恋には異常な程に盲目的であった。
 裏柳が姿を消してしまってからはそれがより顕著だ。
 兄の家臣たちにも兄の様子に不安感を抱く者も出てる。弟はそこを的確に狙ったのだ。
 
「まさか僕を騙したの?」
 困惑した様子の兄。白亜は弟の歪んだ思いに気付いていなかった。白亜は弟を愛し、可愛がり、出来る限りの支援をしていた。自分たちは仲良し兄弟だと疑わなかった。
「兄さんごめんね。綺麗で誰から愛される兄さん。僕はアンタが死ぬほど憎かった」
「どうして? 僕たち血を分けた兄弟なのに…… お願い、話し合おう」
「話す事なんて無いよ。さよなら兄さん」
「うわああぁぁぁぁーー」
 白亜は弟の手の者によって逃げ場を無くし、船の縁まで追い詰められ。
 揺れる船に体制を崩し、荒れ狂う海に落ちる。

 最後に聞いたのは弟の笑い声であった。
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