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7章 魔王と半仙人
第123話 首都ヴィーン
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知り合い口添えしてくれると、楽に入れて良いね!
初めての場所は、だいたい門番に止めらるんだけど、今回は素通りで中へ入れる。
城門を潜ると、生徒達がキョロキョロ見回しながら、街を見ている。
「こんなに栄えているのか」
「あの国とは大違いだ」
マイナール国と比べると、城下町に響く人々の声が騒がしい。
種族関係なく受け入れているのか、人数も多く、時折ぶつかりそうになる。
これだけ人もいると、スリも増えてくるな。
「新人組は盗られないように注意するんだよー」
「「「「「はい」」」」」
多少気配がわかるようになったとしても、なかなかすぐに対処は出来ないだろう。
それとなくフォローしつつ、スリの巾着を奪ってみた。
銅貨3枚かよ……。可哀想だから銀貨1枚いれてあげよう。
「お兄さん巾着落としたよ?」
「え? あれ?」
「はい。気をつけてね」
「あ、ありがとう……」
俺から離れると中身を確認して、何度もこちらを見てくる。
笑顔で返すと、顔を青くして走って行ってしまった。
そんなことを何度かやっていると、遠くから飛んでくる視線がいくつもある。
「実さん。見られてますよね?」
「そうだね。何もしてこないようだけど、海野さんも警戒だけしておいて」
「わかりました」
大通りの中央交差点を北に曲がると、ピースの目的地に到着する。
ここが首都ヴィーンの従魔ギルド。
「母ちゃん帰ったよー!」
ピースが大声を出すと、奥から怒鳴り声で返してきた。
「声がでかいんだよ! そんな大声じゃなくてもわかっとるわ!」
出てきたのは杖を着いた虎人族の女性で、ピースとよく似ている。
鋭い視線を巡らせ、何人かの前で視線が止まる。
「面白い奴らを連れてきたじゃ無いか。それにそこの男」
そんなに見つめられても、というか視線怖いんだけど、止めてくれないかな。
「似ている……が気のせいか。そんで、いつまでも放浪しおって、何しとるんだ?」
「ちゃんと依頼やってたよ! 今回のも依頼だったの」
「それはよか。そげん事より、この者らは何?」
ピースと母の会話は、共通語とグルマン語が混じってしっちゃかめっちゃか。俺が聞いても訛りが強くて所々わからなかったよ。
「大方の話はわかったわ。そこん娘が従魔師な?」
「じゃ、カオルは私と従魔ギルドの説明ね。どうせほとんど聞いてないんでしょ?」
カオルが目配せしてきたので、行って良いと合図する。
「あんたは、また明日来んさい」
「あー、ちょっとめんど」
「きんさい!」
「わかりました」
すごい剣幕だったが、真剣だったので気圧されてしまった。
ギルドを出るとちょうど昼ごろ。
屋台の串焼きを食いつつ、宿屋の確保しに向かう。
「まぁ、この大所帯が入れる場所は無いよね」
「冒険者は依頼完了だろ? お前達だけならあるんじゃないか?」
「それでも足が出そうだよね」
それから1時間程かけて色々話し合った結果。冒険者達とは別れて、女性達が宿屋に泊まり、男性組が他を探すことになった。
理由としては、女性と男性が一緒に泊まれないことと、大人数の女性部屋を探す方が大変だから。
「じゃあ、出発しんこー!」
歩き出した俺達が向かうところは。
「どこに行ってるんですか?」
「そういえば、アオイ達はまだ行ったことなかったっけ?」
いつも通りのスラム地区。
若干の埃っぽさとカオス空間。一般人はあまり近づこうとしないのは、そういう雰囲気をあえて漂わせているからだ。
「さすがは、通い慣れたスラム。初めての場所でも当たったな」
怖気付く青年3人を押して、無理矢理中に入れる。
今までの経験からすると、この一番奥に教会があるんだよね。
「当たり!」
「当たりじゃなくて、後ろからスラムの人来てますよ……」
「まぁまぁ、教会行くだけだから大丈夫だよ」
気にせず、教会の扉を開けると、見慣れた精霊像があった。
「なんで精霊教はこんな奥にあるのかねぇ?」
「そう言ってるということは、ここにあることをご存知のようですね」
扉の影に隠れていたのか、横から出された声の主を見ると、壮年の神父だった。
「神父様は初めてです」
「精霊教では精霊父と言うのですよ。それでお願いします」
「精霊父様ですね。唐突ですが、宿が無いので泊めてください」
目を見開き瞠目《どうもく》していうのが見て取れる。
「ふふふはっはっは! 良いでしょう。わかりやすいのは好きですよ?」
「よし! 寝る場所は確保した! あとは飯だ」
精霊父様に断りを入れて、教会前の広場を耕す。
俺達の行動を見ていた子供や、スラムの住人が次第に参加し始めて、数時間で小さな畑が出来上がった。
「よし! この種を植えていけー! ゴーゴー!」
ニンニクは欠かせないとして、モロコシとキャベツを植えていく。
「ツンツンは奥の方をやって」
新しく入った名前の知らない男の子。頭がツンツンしているので、あだ名で呼んでいる。おいちゃんもう名前覚えきれないよ。
「今日のところはこれで良いか。よし、ちょっと食材買ってくるわ」
みんなを置き去りにして、露店の食材を買ってくる。スラム前に安い露店があったので、そこで物色する。
「大通りと品質同じだと思うんだけどな。なんで安いの?」
「あそこは金払って店だしてるんだよ。その分高くなるし、俺のは直卸しだからな!」
露店の兄さんは自信ありげに笑っている。
なかなか良い店を見つけられたようだな。
「せっかくだから、銀貨1枚でそっちが選んでよ」
「気前の良いやつだな。美味いのを選んでやる」
空いてる木箱にポイポイ放り込んで行くと満杯になってしまった。
「結構な量になったな。あとは肉か魚も食べたいだろうな」
「それなら、3件隣の魚が良いぞ。今日は良いのが入ったと自慢してた」
言われた通り向かうと、大きめのサケが何匹も吊るされている。
1匹銀貨1枚と安かったので衝動買いしたが、残りの銀貨が3枚になってしまった。
「帰ったよ」
「うわ! すごい量だな」
「これならみんなで食べられそうですね」
田中君の驚きよりも、精霊父様の便乗にこちらが驚いてしまった。
元々そのつもりだったから良いさ。
大鍋を3程使って、それぞれ違う味の鍋料理。普通の塩味、トマトベース、最後に海野さん作の醤油。移動の終わり掛けにやっと完成した一品。
「実さん、この匂いは!」
「これってやっぱり」
「間違い無いよ!」
3人共気づいたようだな。
「おかわり自由だけど、みんなにも1口ずつは食べさせてあげるんだよ?」
「「「はい!」」」
食事の合図が出ると、みんなで精霊に祈り、食べ始める。
畑づくりに参加した住人から孤児、生徒も関係なく会話を挟み笑い合う。
新人2人は指輪の効果が切れて、まだカタコトしか話せないのに、楽しそうにしていた。
食事が終わると、貸してもらった藁《わら》の布団で、泥に沈むように眠ってしまった。
みんなお疲れ様。
今日はゆっくり休ませてやろう。
初めての場所は、だいたい門番に止めらるんだけど、今回は素通りで中へ入れる。
城門を潜ると、生徒達がキョロキョロ見回しながら、街を見ている。
「こんなに栄えているのか」
「あの国とは大違いだ」
マイナール国と比べると、城下町に響く人々の声が騒がしい。
種族関係なく受け入れているのか、人数も多く、時折ぶつかりそうになる。
これだけ人もいると、スリも増えてくるな。
「新人組は盗られないように注意するんだよー」
「「「「「はい」」」」」
多少気配がわかるようになったとしても、なかなかすぐに対処は出来ないだろう。
それとなくフォローしつつ、スリの巾着を奪ってみた。
銅貨3枚かよ……。可哀想だから銀貨1枚いれてあげよう。
「お兄さん巾着落としたよ?」
「え? あれ?」
「はい。気をつけてね」
「あ、ありがとう……」
俺から離れると中身を確認して、何度もこちらを見てくる。
笑顔で返すと、顔を青くして走って行ってしまった。
そんなことを何度かやっていると、遠くから飛んでくる視線がいくつもある。
「実さん。見られてますよね?」
「そうだね。何もしてこないようだけど、海野さんも警戒だけしておいて」
「わかりました」
大通りの中央交差点を北に曲がると、ピースの目的地に到着する。
ここが首都ヴィーンの従魔ギルド。
「母ちゃん帰ったよー!」
ピースが大声を出すと、奥から怒鳴り声で返してきた。
「声がでかいんだよ! そんな大声じゃなくてもわかっとるわ!」
出てきたのは杖を着いた虎人族の女性で、ピースとよく似ている。
鋭い視線を巡らせ、何人かの前で視線が止まる。
「面白い奴らを連れてきたじゃ無いか。それにそこの男」
そんなに見つめられても、というか視線怖いんだけど、止めてくれないかな。
「似ている……が気のせいか。そんで、いつまでも放浪しおって、何しとるんだ?」
「ちゃんと依頼やってたよ! 今回のも依頼だったの」
「それはよか。そげん事より、この者らは何?」
ピースと母の会話は、共通語とグルマン語が混じってしっちゃかめっちゃか。俺が聞いても訛りが強くて所々わからなかったよ。
「大方の話はわかったわ。そこん娘が従魔師な?」
「じゃ、カオルは私と従魔ギルドの説明ね。どうせほとんど聞いてないんでしょ?」
カオルが目配せしてきたので、行って良いと合図する。
「あんたは、また明日来んさい」
「あー、ちょっとめんど」
「きんさい!」
「わかりました」
すごい剣幕だったが、真剣だったので気圧されてしまった。
ギルドを出るとちょうど昼ごろ。
屋台の串焼きを食いつつ、宿屋の確保しに向かう。
「まぁ、この大所帯が入れる場所は無いよね」
「冒険者は依頼完了だろ? お前達だけならあるんじゃないか?」
「それでも足が出そうだよね」
それから1時間程かけて色々話し合った結果。冒険者達とは別れて、女性達が宿屋に泊まり、男性組が他を探すことになった。
理由としては、女性と男性が一緒に泊まれないことと、大人数の女性部屋を探す方が大変だから。
「じゃあ、出発しんこー!」
歩き出した俺達が向かうところは。
「どこに行ってるんですか?」
「そういえば、アオイ達はまだ行ったことなかったっけ?」
いつも通りのスラム地区。
若干の埃っぽさとカオス空間。一般人はあまり近づこうとしないのは、そういう雰囲気をあえて漂わせているからだ。
「さすがは、通い慣れたスラム。初めての場所でも当たったな」
怖気付く青年3人を押して、無理矢理中に入れる。
今までの経験からすると、この一番奥に教会があるんだよね。
「当たり!」
「当たりじゃなくて、後ろからスラムの人来てますよ……」
「まぁまぁ、教会行くだけだから大丈夫だよ」
気にせず、教会の扉を開けると、見慣れた精霊像があった。
「なんで精霊教はこんな奥にあるのかねぇ?」
「そう言ってるということは、ここにあることをご存知のようですね」
扉の影に隠れていたのか、横から出された声の主を見ると、壮年の神父だった。
「神父様は初めてです」
「精霊教では精霊父と言うのですよ。それでお願いします」
「精霊父様ですね。唐突ですが、宿が無いので泊めてください」
目を見開き瞠目《どうもく》していうのが見て取れる。
「ふふふはっはっは! 良いでしょう。わかりやすいのは好きですよ?」
「よし! 寝る場所は確保した! あとは飯だ」
精霊父様に断りを入れて、教会前の広場を耕す。
俺達の行動を見ていた子供や、スラムの住人が次第に参加し始めて、数時間で小さな畑が出来上がった。
「よし! この種を植えていけー! ゴーゴー!」
ニンニクは欠かせないとして、モロコシとキャベツを植えていく。
「ツンツンは奥の方をやって」
新しく入った名前の知らない男の子。頭がツンツンしているので、あだ名で呼んでいる。おいちゃんもう名前覚えきれないよ。
「今日のところはこれで良いか。よし、ちょっと食材買ってくるわ」
みんなを置き去りにして、露店の食材を買ってくる。スラム前に安い露店があったので、そこで物色する。
「大通りと品質同じだと思うんだけどな。なんで安いの?」
「あそこは金払って店だしてるんだよ。その分高くなるし、俺のは直卸しだからな!」
露店の兄さんは自信ありげに笑っている。
なかなか良い店を見つけられたようだな。
「せっかくだから、銀貨1枚でそっちが選んでよ」
「気前の良いやつだな。美味いのを選んでやる」
空いてる木箱にポイポイ放り込んで行くと満杯になってしまった。
「結構な量になったな。あとは肉か魚も食べたいだろうな」
「それなら、3件隣の魚が良いぞ。今日は良いのが入ったと自慢してた」
言われた通り向かうと、大きめのサケが何匹も吊るされている。
1匹銀貨1枚と安かったので衝動買いしたが、残りの銀貨が3枚になってしまった。
「帰ったよ」
「うわ! すごい量だな」
「これならみんなで食べられそうですね」
田中君の驚きよりも、精霊父様の便乗にこちらが驚いてしまった。
元々そのつもりだったから良いさ。
大鍋を3程使って、それぞれ違う味の鍋料理。普通の塩味、トマトベース、最後に海野さん作の醤油。移動の終わり掛けにやっと完成した一品。
「実さん、この匂いは!」
「これってやっぱり」
「間違い無いよ!」
3人共気づいたようだな。
「おかわり自由だけど、みんなにも1口ずつは食べさせてあげるんだよ?」
「「「はい!」」」
食事の合図が出ると、みんなで精霊に祈り、食べ始める。
畑づくりに参加した住人から孤児、生徒も関係なく会話を挟み笑い合う。
新人2人は指輪の効果が切れて、まだカタコトしか話せないのに、楽しそうにしていた。
食事が終わると、貸してもらった藁《わら》の布団で、泥に沈むように眠ってしまった。
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